安全宣言の舞台裏

 遺伝子組み換え食物は安全であると、米国などの生産国はもちろん、日本の厚生省でも発表している。 もちろん、安全基準をクリアしているものに限るが。
 しかし、実はこの安全基準がかなり怪しい代物なのである。

 日本での安全性の確認は、1996年に公表された「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」 に基づいて行われているが、そもそもこれはOECD(経済協力開発機構)の「実質的同等性」という概念を基本 としている。
 この概念によれば、従来と異なっている、つまり導入遺伝子自体とそれが作り出す成分が安全であれば、安全 が確認されたことになる。
 しかし、安全性を調べるのに、これでは不十分である。なぜならば、予測できない有害物質が作られてしまった 例が過去にあるからだ。「トリプトファン事件」である。

 トリプトファンとはある会社が作り出した遺伝子組み換え技術を使った健康食品である。トリプトファンの成分 は必須アミノ酸なので本来は無害あり、しかもトリプトファンを作るに当たって導入された細菌が自然の状態で 作り出すトリプトファンも無害であった。
 にも関わらず、同細菌に細工をした遺伝子組み換え細菌が作り出すトリプトファンは有害物質を含んでいたのだ。
 これは何を意味するか? つまり元になる細菌が無害だからといって、遺伝子組み換え細菌が必ずしも無害であ るとは言い切れないのだ。遺伝子組み換えによって新たな性質を獲得してしまうことがあるためだ。
 つまり、本当に安全を確認したいのならば、当然組み換えられた固体またはその生成物そのものを調べなければ いけないのに、各々が合わさる前の段階で個々が安全であれば安全性が確認された、としているのである。
 これでは組み換えによって発生した新たな(そして予測できない)毒物を見つけ出すことは出来ない。

 ならばなぜこのようなことがまかり通っているのか、疑問に思うだろう。
 そこには世界的規模で「農作物生産者」と「政府関連団体」との癒着を見ることができる。

 遺伝子組み換え食物が初めて世に誕生したとき、「これは今までの食物とは基本的に異なる」と学会では発表されたが、異質である ことをあまり強調すると、実際に同食品を商品として販売するとき安全性を疑われてしまう。一つ一つ厳密に安全性を確認す るという途方もない作業を行っていては、せっかく開発した新種の食物をなかなか世に出せなくなる。
 そこで考え出された概念が「実質的同等性」である。「基本的に同質であるから厳密な検査を必要としない」という空論 で遺伝子組み換え食物が認可されているのが実状で、その結果、幾つかの事件を引き起こしている。

 まさに我々は「経済の観点から考え出された安全」を拠り所に、半ば人体実験を強制されていると言えるだろう。  どんな予測し得ない毒性が生まれるか分からないまま、食品は流通しているのだから。問題が起こって初めて入念なチェック がされるのである。
 そして遺伝子組み換え食物は、実は合成添加物などよりも基準が甘く、しかも動物実験さえされることなく販売することができる。 これらについては次項に譲るとしよう。

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