1994年、アメリカで最初の遺伝子組み換え食物が認可された。腐りにくい新種のトマト
を開発し、市場に売り出したのである。名前を「フレーバーセーバー」という。
このトマトは熟することを促す遺伝子を抑制する遺伝子が組みこまれている。
さて、問題点は大きく分けて2つある。
一つ目は、遺伝子を組み換えることによりトマトに含まれる
「アルカロイド」が突然変異で増加するのではないかという懸念である。
アルカロイドとは植物に含まれる独特の成分で、コーヒーや紅茶のカフェインやモルヒネ、
コカイン、ニコチンなどである。その殆どは有害物質であり、動物が摂取すると生理活性作用
を引き起こす。
幸い、フレーバーセーバーではアルカロイドの増加は認められなかった。しかしその危険性
は常にはらんでいる。
もう一つの問題点は、フレーバーセーバーを食べつづけると抗生物質が効かなくなる危険が
あることだ。
実はフレーバーセーバーを始め殆ど全ての遺伝子組み換え食物は遺伝子が組み換えられたか
をチェックするために抗生物質耐性遺伝子が同時に組みこまれている。そのうえで抗生物質を
投与し、この耐性が十分に機能していれば組み換え成功、機能しておらず死んでしまえば
組み換えがうまく行われなかったことを意味する。
こうして組み換えがうまくいったものだけを生かすことが可能になるわけだ。
ところで、こうして作られた食物を人間が食べつづけた場合、人体にまで抗生物質に耐性が
できてしまい、いざ病気にかかったとき、抗生物質を投与しても効かない事態が起こり得ないか
懸念される。
人間は約60兆個の細胞でできていると言われるが、実は人間に住み着いている細菌は100兆個
とも言われている。つまり、人間の細胞よりも多いのだ。代表的なのは大腸菌やビフィズス菌で
ある。
もし抗生物質に耐性を持つ食物を食べつづけた場合、これら微生物にその性質が移らないと
断言することができないのは素人でも察しがつく。
事実、近年抗生物質の効かない結核菌が病院内で発生し、院内感染を引き起こした例も報告
されている。なぜ結核菌が抗生物質に対して耐性をもったかは不明であるが、遺伝子組み換え
食物がその一因である可能性は否定できないのが現状だ。