身近な危険、アレルギー

 大豆は高蛋白質食品であるが、あるアミノ酸の含有量が少ない。そこで あるアメリカの企業がそのアミノ酸を多く含んでいるブラジルナッツの遺伝子 の一部を大豆に組みこむことを考えた。この試みは成功し、出来上がった遺伝 子組み換え大豆は高蛋白質のうえアミノ酸も多く含んだ高エネルギー食品になっ たが、ここで一つ問題が起こった。

 ブラジルナッツは、人の体質によってアレルギー症状を引き起こす食品であ る。そして大豆にこのブラジルナッツの遺伝子を組みこんだことにより、アレ ルギー性まで移ってしまったのだ。

 たかがアレルギーと思われる方がいるかもしれないが、時としてショック死 してしまう危険性をはらんでいる。
 そしてこの問題の最も大きな点は、ブラジルナッツのアレルギーを持つ人間 が、知らずにこの遺伝し組み換え大豆を食べてしまうところにある。
 彼らはブラジルナッツが食卓にあがっていても決して口にしようとはしない だろう。しかし大豆、または大豆を原料とした料理に対しては、何の警戒もな く口にしてしまうのである。

 また妊婦が採る食事によって生まれてくる子供がアレルギー体質になってし まうことがある。たとえば妊娠中に卵料理を好んで食べていた場合、生まれて きた子供が卵アレルギーになってしまうことが稀にある。
 このようにアレルギー症状を引き起こしやすい食物は自然界にも存在するが、遺伝し組 み換え食物がアレルギーを引き起こしやすい性質を持っているかどうか、現在の ところ不明である。
 そしてもしアレルギー性を胎児が母親から獲得してしまった場合、組み換え食物 に対して抗体を持って生まれてきた子供は当然組み換え食物を食べることが できないが、現在のように組み換え食物が一般の食物と分別されずに市場に出回 る状況では、彼らがアレルギー症状の出ない食物を探すことは困難を極めるのである。
 まして大豆やナタネなどのように原形を止めず加工されてしまう食物ではさらに 難しい。

 遺伝子組み換え食物がアレルギーを引き起こしやすいかどうかは未知数だが、 先に述べたブラジルナッツの例のように、組み合わせの方法で想像しなかった性質を 持ってしまう危険のあることを考えると、慎重にならざるを得ない。

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