本日の御題:アメリカの戦略〜コメの狙い撃ち
◆WHOの次期貿易自由化交渉
 バーシェフスキ米通商代表部代表は、下院の農業委員会で次期貿易自由化交渉で議題になっている 農作物の関税を各国が一律に下げる方法の採用に反対する方針を打ち出した。
 そもそもこの方式は前回のウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)で採用されたのだが、これでは日本のコメなど に代表される高関税が課せられている農作物と低関税しかかけられていない農作物の格差を劇的に縮めることが できないためだ。

 同代表はまた「米国は平均10%程度なのに、世界平均は50%もある」と指摘し、突出した関税をまず大幅に引き 下げることがされるべきだと述べた。もちろん、この「突出した関税」の中に、300%近い税率がかけられている 日本のコメが含まれていることは言うまでもない。

◆超大国の怠慢・傲慢
 さて、先進国中最低の食糧自給率でアメリカ産農作物の大口消費者である日本は、このアメリカの方針転換に どうあたるべきか。

 私はまずアメリカの怠慢を責めるべきだと思う。

 現在、GM食物(遺伝子組み換え食物)について世界各国ならびにアメリカ国内からも安全性への疑問が持ち上 がっている。アメリカ政府は、これまでGM農作物と一般の農作物を分別する必要性がない、また分別は事実 上不可能であると繰り返してきた。
 その理由は流通にある。農作物はまず産地にあるカントリーエレベーター(産地倉庫)に収納されるが、ここで GM穀物と一般穀物が混じってしまう。さらにそこから各集散地倉庫に集められ港頭倉庫に集められ船積み されて日本に輸出される。
 つまりアメリカ国中から集められた穀物はごちゃ混ぜに倉庫に保管されるため、GM食 品を区別することも、そして遺伝子組み換え技術を使用しているかどうか食品に表示することもできないというのだ。

 しかし実はアメリカにはアイデンティティ・プリザーブ(略してIP)取り扱いシステム があり、これを利用すれば分別は可能である。
 当然アメリカ政府もその存在を知っているはずであり、先に述べた分別できないという理屈は子供だましの屁理屈に過 ぎない。

 そして農作物を売りさばくためならばこんな苦し紛れの嘘さえ平気でつき、しかも日本政府および消費者が安全な農作物を 求めても、その要求に応じようとしない国に、食糧でこれ以上頼ることなど決して許すわけにはいかないのだ。

 ウルグアイラウンドで取り決められた一律関税引き下げは、日本を含む農作物輸入国の多大な譲歩によってようやく 合意されたものである。それを今になって反故にするというやり方に、EUやアジア諸国の反発は必至だろう。
 おそらくアメリカに同調するのはカナダとオーストラリアぐらいではないだろうか。
 日本は卑屈にならず、胸を張ってウルグアイラウンドの合意を尊重する態度を取ればいい。
 また、GM食物と絡めて交渉するのも面白いかもしれない。つまりアメリカが保障すると言ってはばからない 「食糧の安全」をつつく事で、「GM食品の表示義務」という譲歩をアメリカに求めると 共に、諸外国の支持を獲得するというわけだ。

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