本日の御題:中国に宇宙技術で先を越された日本
◆ソユーズの技術移転
 去る7月16日、中国がほぼ開発を完了したとされる有人宇宙飛行船が、ロシアの宇宙船ソユーズの技術移転で あることが判明した。元宇宙飛行士でロシアの宇宙開発政策に携わるセバスチャノフ下院議員が明らかにしたものだ。
 これによって中国はロシア、アメリカに次いで世界で三番目の有人飛行を実現することになった。予定では、10月前後に 打ち上げるという。

 中国政府はこれまで米国の核やロケット技術を不正に入手していると米国より非難されてきたが、その一方でロシアと 極秘に技術移転問題について交渉していたことになる。米国一辺倒の日本に比べて、実に強かで現実的な政策ではないか。
 今日、日本人の多くはまだまだ中国に技術で負けることはないと思っているだろう。しかし少なくとも宇宙技術 に関しては、もはや日本は中国の後塵を拝しているのだ。
 中国は他国の経済情勢の悪化を利用して、数十年遅れていたこの手の技術で一気に先進国の仲間入りを果たしたのである。
 中国版ソユーズの技術のうち90%はロシアからの技術移転だという。

◆日本政府の頭は未だに戦後
 一方の日本はどうだろうか? 相変わらずの米国信仰を続けている。かつて日米両国共同で開発が計画された戦闘機FSXで、 米国は世代的には一世代古くなったF-16戦闘機のエンジンを日本に技術移転することすら強い警戒を示した。日本の電子技術を 米国に移転することで一応の決着を見せたが、この件だけを見ても米国がいかに技術を出し渋っているかが理解できる。

 ここで一つ、断りを入れてから話を進めたい。私は決して共産主義者では断じてない。あくまで現実的政策として、遅まきな がらロシアとの技術協力を進めるべきだと考えている。
 日本は米国に気を使うあまりロシアとの関係に一定の距離をおいているが、これこそ愚策というものだ。
 米国の装置を日本の機器に取り付ける場合、技術流出を防ぐためブラックボックス化されているが、ロシアは技術移転 に非常に能動的であり、これこそ最大の利点である。

 つまり肝心な技術は米国は移転してくれない。しかし国産ですべてをやろうとすると、膨大な開発費と時間がかかる。税金の無駄使い である。たとえばテポドンを監視するため日本では現在自前の偵察衛星の開発を計画しているが、これなどまさに愚策の象徴だ。
 無駄に費用を掛けて独自に開発するならば、外国の技術を安価に手に入れるほうが遥かに合理的である。そうして手に入れた 技術を元に独自の技術を構築するほうが、短時間で高性能の製品を作ることができるのは明白である。

◆あいみつを取る事は駆け引きの常套手段
 もし次世代技術競争で日本が引き続き先進的地位を保ちたいと思うならば、米国とロシア、双方にあいみつ(複数に見積もりを 取ること)をお勧めしたい。企業の世界では当然のように行われている行為だ。
 今まで日本政府は米国以外の取引先を持たなかった。冷戦下ではそれは当然のことだった。しかし時代は変わり、西・東陣営 という関係はかなり形骸化している。
 この状況下で最も現実的合理的選択肢は、複数の窓口を持つことだろう。

 たとえば米国にある技術について移転を申し出る。同時にロシアにも同じような技術について打診する。
 つまり、「もし米国が駄目ならロシアと交渉しますよ」と一言付け足すだけで、米国の対応も変わるだろう。軍事技術に移転可能 なロケットやエンジン、人工衛星などの分野では、交渉金額が膨大になるほか、その後の追加発注やメンテナンス、人員の派遣など 様々なメリットが生ずるため、米国・ロシアは供給国としての地位を相手に奪われることに相当神経を尖らせるためだ。

 その結果、米国の技術を採用することがあってもいい。大切なのは、あいみつを取ることで交渉を有利に進めることなのである。
 政治、特に外交は駆け引きであり、強かかつ合理的でなければ「お人よし」のレッテルを世界中からはられることになるだろう。
 「お人よし」でよいではないか、とお人よしは言うだろう。しかし国と国との関係は個人間とは違う。利己的で腹黒く感じて しまうだろうが、『国益こそ善』なのである。
 北朝鮮・ロシアを有力な外交カードとして米国と交渉しているお隣の中国に比べて、わが国日本はあまりにもお粗末な交渉を してはいないだろうか?

 またロシアとの技術協力は、こう着状態が続いている両国の関係を密接にする一つの手段としても位置付けることができるだろう。

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