本日の御題:コソボを第二のドイツ、朝鮮にしてはいけない
  ◆ロシア軍とNATO軍の進駐
 ロシア軍は、直接痛みを伴うことなくコソボに入場し、歓迎を持って迎えられた。
 対するNATO軍は、戦費を使い、爆撃機を撃墜され、誤爆をして中国との間に緊張関係を生み、ようやく コソボに入る権利を得た。
 この違いは非常に大きいが、実はそれよりも遥かに大きな問題がある。指揮系統が2つある進駐軍である。

 ロシアはその大国意識から、アメリカ主導のNATO軍の指揮下に入ることを拒み、単独でコソボに入った。
 これが如何に危険なことであるか、正しく認識しているニュースキャスターがどれだけいるだろうか? どこのテレビ局も、 またどこの週刊誌も、その表面だけを報道して後は専ら野村夫人の騒動に現を抜かしているが、実はこの二重の指揮系統で一つの 地域を治めるということは、非常に大きな危険をはらんでいるのである。
 その理由は、表題の通りだ。そう、第二のドイツ、朝鮮になりかねないのだ。

 まず考えて欲しい。ロシアとアメリカは果たして友好関係にあるだろうか?
 答えは「ノー」だろう。天下に太陽が2つ存在しないのと同じように、2つの国が並び立つこともない。ロシアは経済危機によっ て近頃元気はないものの、なお大国としての利権を手放そうとはしていない。

 また、ロシアのエリツィン大統領はすでに高齢の上健康状態も最悪で、2000年には新しい大統領が選ばれるだろう。
 そしてもう一方の大国アメリカもまた、来世紀はポスト・クリントンの時代なのだ。これは何を意味するのか?

 新任のロシア大統領はまず軍の支持を得るために、容易く外交で妥協することはできなくなるはずだ。
 一方のアメリカもまた、選出されたばかりの大統領は、安易な妥協はできない。
 つまり、どちらも引くに引けないというわけだ。

 それでもコソボで何事も起こらないうちは問題ない。しかし、ひとたび炎が上がれば、これほど危険なことはない。 NATOとロシア、この合い入れぬ勢力が別個に進軍しているコソボは、最悪の場合、かつてのドイツや朝鮮のように、 分割占領されてしまう可能性があるのだ。

 ロシアは地理的・歴史的繋がりの理由からコソボを手放そうとはしないだろうし、アメリカおよびNATO諸国もヨーロッパ にほど近い地域に、ロシアをバックに背負った国ができることは望まないだろう。
 かくして、新任の2人の大統領は妥協よりも強調よりも、強いリーダーシップと正義の名の下にシナリオを突き進む……。

 これはあくまでも筆者の個人的な考察であるし、筆者自身、100%こうなるとは思っていない。
 しかし、2つの指揮系統でコソボを治めようと本気で考えているならば、当然考慮されなければならないということだけは 確かだろう。

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