◆通信傍受できる範囲
今月28日夜、ついに通信傍受を可能とする組織犯罪対策法案が衆議院法務委員会で可決された。
目的としてあげられているのは「暴力団による銃器・薬物犯罪」やオウム真理教のような「大規模凶悪犯罪」、
「法人を利用した悪徳商法」など主に組織的犯罪に対応するためである。
これは政府が国際公約としてあげていたものであり、今回、公明党の支持を得たことで実現した。
◆問題点の列挙
【1】通信傍受対象を一定の枠にはめることができない
この法案によって、疑いのかけられた人物・組織と少しでも関わった人間は、それを理由に通信傍受されてしまう
恐れがある。
たとえば筆者がWeb上のあるサイトにたまたまメールを送ったとする。そのサイトは表向き普通のパソコンショップを
装っていたが、実は裏社会が経営していたとしよう。
するとこのサイトを検査対象にしていた当局によって、私の電話やメールでのやり取りが盗聴されてしまう、という
ことが起こりうるのだ。勿論、盗聴の期間には限度があるが、必要に応じて幾らでも延長することができる例外項目
が付属しているので、事実上限度はないに等しい。
これはオフラインでの友人・知人にも当然当てはまる。
つまりこの傍受する権利の使い方によっては、山の中で誰とも関わらずひっそり暮らしている人間を除き、日本国民
全員を監視することだって可能になってしまうのだ。
【2】通信傍受対象の選定ミスに対するフィードバックがない
仮に傍受の結果、犯罪とは何も関係がないと判明した場合でも、盗聴されていたことは一切本人には知らされない。
つまり、本人には被害にあった事が全く分からない訳だ。
これならば、警察は仮に「シロ」にほぼ間違いないと思われる被疑者に対しても、何のためらいもなく
盗聴することができる。
傍受する対象の選定を間違ったとしても露見しないので、誰にも非難される心配はないからだ。
【3】第三者の介入は事実上不可能
盗聴を行う際は、NTT職員の立会いの元とされているが、当然NTT職員が傍受内容を聞くことはできず、よって立会人と
は言えどもその内容を把握することもチェックすることもできない。
「NTT職員立会いの元」という項目は、中立な第3者が存在し、それによって職権乱用が防止できるというイメージを
国民に与えるための”名文”と言っていいだろう。