本日の御題:大予測!赤字国債発行は恒例化する!
◆他人の財布を握る官僚たち
 11年度予算大蔵原案が内示された。景気回復を狙った積極財政で、一般公共事業費は前年度比で10.5%の 大幅増。年度内に実際に工事業者に支払われる代金も支出ベースで11%増となった。

 さて・・・。深く溜め息をつき、プールに飛び込む時のように勢いを付けなければ、この先を語る気にはなれない。
 勇気を振り絞って公共事業費の推移を見てみよう。事業費別のシェアだが、赤字国債を大量に発行し歳出を大幅 に増やしたにも関わらず不思議とシェアに大きな変動は見られなかった。 「治山・治水」「住宅・市街地」「港湾・漁港・空港」の変動率は僅かにコンマ1%(つまり1/1000)、 道路整備は30.1%から28.9%、環境衛生等は18.3%から17.8%である。
 最も変幅動が大きかったのは「その他」という欄の2.1%だというのだから、「積極財政」が聞いて呆れる。 なんてことはない、支出が増えようが減ろうが、従来通りの予算配分をそのまま実行しているだけなのである。
 省庁の力関係で全てが決まり、効率化など微塵も考えてもいない予算。日本で有数の名門大学を出た彼ら(予算を直 接決定した上級官僚たち)は、このことに国民が、マスコミが、いや世界中のエコノミストが気付かないとでも思って いるのだろうか?

 いや、彼らはそもそも「国民の意思」や「マスコミの批判」などには関心を示さないのだ。
 官僚はご存知の通り国家公務員である。公務員は民間企業とは異なり公正な試験をパスすることによってなれるわ けで(民間企業ではコネや人脈が入社のポイントになることがある)、彼らに国家権力という蜜を与えたのは、他なら ぬ紙切れなのだ。つまり、国民の意志など全く気にしなくても官僚にはなれてしまうのである。
 また、マスコミがどんなに騒ごうとも、警察が動かない限り痛くも痒くもない。責任を取るという名目で、有名企 業に天下れは終わりである。
 では、海外のエコノミストはどうか。やはり同じである。たとえ海外のエコノミストに総スカンを食らっても、 その結果日本の企業がバッタバッタ倒れても、次の選挙で評価を受けるのは政治家であって官僚ではない。
 つまり、省庁の既得権益を守るために派手に財政をつぎ込んで、いざ支払いの時になると「支払いは別の人」と姿を 晦ませるというのが、彼らのやり方なのである。

◆いつまで続く積極財政
 大蔵官僚が言う積極財政だが、言葉を変えれば大博打財政である。国債依存率(歳入に占める国債の 比率)は急上昇し歳出も大幅増、しかし歳入は減少中。財政は火の車なのに効果が不確かな商品券(正式には地域復興券) を決定してみたり、低所得者に実質増税となる減税をしてみたりと、やりたい放題である。
 既に述べたように、この予算編成は従来通りのものであり、景気浮揚には殆ど効果を出さないだろう。極めて限られ た人を潤すのみである。
 そしてここが最も重要なのだが、「11年度予算で潤った人」を平成12年度も潤わせるためには、「平成12年度予算 も頑張らなくてはならない」という点だ。公共事業の多くは、道路整備事業(全体の28.86%)などの土建屋さん関連 である。この業界は成熟した経済では仕事も少なく、本来ならば自然淘汰されていくべきところである。
 しかし公共事業によって潤うために、自然淘汰どころか農業関係者などからの人口流入があって、建設業就労者は年 々増加している。数が多くなれば業界自体の発言力が増すほか、公共事業が打ち切られた時の影響も大きくなる。もち ろん、彼らを養うための事業費も毎年大きくならざるを得ない。
 つまり、本来ならば倒産して異業種へ労働者が移動するところを、国が無策にも厚遇するものだから、かえってそこ に人が集まってしまうのである。これは財政を一層悪化させる方向に働くだろう。
 不気味なデータがそれを証明している。毎年の農業従事者の減少数と建設業者の増加数には、ある程度の相関関係が あるのだ。特にこの状況は、産業の少ない地方に強く出ている。
 さて、日本政府はあと何年、「積極財政」を続けることができるだろうか?この「大博打財政」が 行き詰まった時、日本に本当のビックバンが訪れると筆者は予想している。
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