本日の御題:日中関係回復を願う中国政府

◆反日教育はいずれあしかせとなる
結局のところ、実現はしなかったが、5月27日、中国が四川大地震のために自衛隊輸送機の受け入れを表明したことは、実に驚くべきことであった。四川といえば、太平洋戦争当時、日本が大量の爆撃をしたこともあり、中国国内でも反日感情がひときわ強い地域である。 

にも関わらず、なぜ中国・胡錦涛政権は自衛隊機受け入れを検討し、事実日本に打診してきたのか?

それには共産党が政権を担うことの正当性=日本・欧米の支配からの開放=反日 という図式を、少しずつ変えたいと考えて現われではないか? 確かに、この構造は今まで十分機能してきた。しかし、中国が欧米・日本、いや世界中と政治的・経済的に関係を深めていく中、この中国国民のアイデンティティは中国と世界との間に、深い溝を作ってしまう危険がある。

それは最終的にはアメリカに並ぶ(いや超える)覇権国家の地位を狙う中国政府にとって、決してよいことではない。

このたびの胡錦涛政権の動きは、悪の権化のような日本の軍隊(自衛隊は海外では軍隊と呼ばれる)の平和的利用をテレビ等で報道することで、行き過ぎた反日感情を和らげ、大人の国としての品格を国民に求めようとしたのでないだろうか。

ちなみに、同地震では米空軍の輸送機2機が、既に人道支援物資を送るため成都に到着している。

◆対ロシアとの微妙な関係
また、中国とロシアの関係が、ここのところ悪化しているのも理由のひとつだろう。

冷戦終結後、 ロシアは外貨獲得のため中国へ大量の兵器を売り込んだ。それだけではなく、スホーイ35を始めとする最先端戦闘機のライセンス生産の権利まで与えてしまった。これは中国空軍の近代化に多大な貢献をしたが、最近になって中国のライセンス違反の問題が浮かんでいる。

つまり、ロシアの技術がロシアの意図しないレベルで流出しているということだ。
ロシア政府は中国に対して不信感を強めており、一時期は冷めていた日ソ関係も修復への動きが見られている。小泉首相が靖国参拝をしていたころは、「中国」「ロシア」「韓国・北朝鮮」がタッグを組み嫌われ者だった日本だが、中ロの関係悪化によって味方につけたい国に代わりつつある。

少なくとも、中国にとってロシアは軍事的ライバルになりえるが、日本はそうではない。ロシアから安くてそこそこの質のものを手に入れ力をつけた今、今後のパートナーとしてふさわしいのは自国の覇権の障害にならず、かつ技術を持っている国である。

中国人の精神的構造を理解するうえで重要な兵法書は実に戦略的・合理的である。常に関係は変化しており、昨日の敵は今日の味方であり、昨日の味方は今日の敵は当たり前という考え方だ。

それを知らずに彼らと付き合うと、思わぬしっぺ返しをくらうかもしれない。もちろん、それはロシアのことを言っているわけではない。

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