本日の御題:日本製品に足りない品質と価格戦略、ブランド力、デザイン

ブランドイメージ確立の失敗
昨日の円ドル為替レートは、78円/ドルであった。数年前には円安が進んでいた時期があり、その時は確か125円/ドルぐらいであったから、倍とはいかないまでも、円のドルに対する(ユーロに対してもだが)が異常に高いことが分かる。

当然の帰結として、日本の貿易収支は悪化しており、昨年から今年にかけては、震災の影響もあるだろうが、月ベースでは度々赤字に転落している。

しかも、抜本的な対策は打てずにいる状態だ。国内を見れば、電気料値上げや計画停電の実施など製造環境は好ましくない。

レノボなどの一部メーカーがメイドインジャパンのブランド力のために日本国内で生産を開始したが、それも組み立て工程であり、日本メーカーが物を納品しているわけではないので、雇用や経済効果は限定的だろう。というよりも、単に下請けメーカーとして、海外企業に労働力を提供しているだけである。

また、iPhone然り、アンドロイド携帯然りだが、日本メーカーは元気がない。ひとつは、ブランディングの決定的な失敗だろう。韓国のギャラクシーが世界のスマートフォン市場でiPhoneと二強状態になっているが、様々な理由があるとはいえ、日本のスマートフォンとの一番の違いは品質ではなく、売り方である。

例えば、名称ひとつとっても、NTTドコモのスマートフォンは「N」だの{P}だのいって、全くブランド力がない。少なくとも、海外の人にそれは伝わらないだろう。まるで暗号ではないか!

スタイリッシュでもない。デザイナーがデザインしたものとはとても思えず、私には小さな箱にしか見えない。

そして、世界に訴求効果のある有名人をCMに使用することもない。金がかかるからだろうが、円高のこの時代、ドルやユーロで払うギャラを躊躇う気持ちが私には分からない。なぜならそれ以上の利益が得られるからだ。

これら全ての面で、日本メーカーは韓国メーカーに負けている。

市場が違えば、価値も違う
更に、もうひとつ大きなミスを日本メーカーはおかしている。
戦後の高度成長期と同じルールに縛られているのだ。

その時代、輸出先の多くはアメリカであった。あるいは市場として大きかったのは西ヨーロッパであった。それらの地域の市場は成熟しており、品質もある一定以上を求められていた。

そこに、当時円安で、品質も平均以上であった日本製品が流入し、見事に商品が売れたのである。

成熟した市場相手であったため、品質も当然求められる。日本メーカーは日本人らしい細かな心配りをすることで、付加価値を高めていった。

しかし、これは日本政府や企業が努力して作った状況ではなく、たまたま世界情勢がそうであっただけである。まさに幸運がもたらした成功なのだ。

現代はどうか?
巨大市場は今や先進国ではなく、人口爆発が進む途上国にある。ブラジル、インド、中国、インドネシアなどだ。

彼の国の経済は成長率が高く活況ではあるが、決してドルベースでの賃金は高くない。つまり所得が高くない。しかも、従来の先進国に比べて、製品に求める品質は確実に低い。完璧さや付加価値を求めるのは、車を既に1台所有し2台目を選ぶときであり、1台目を選ぶときではないのだ。

それは、パソコンであってもテレビや洗濯機といった家電であっても同様である。

にも関わらず、日本メーカーは今でも他社にない機能をひとつでも多く付けて付加価値を高め、高品質な「メイドインジャパン」のブランドで売ろうとしている。売れるはずがない。

これから売り込みをかける市場が、従来とは違うのだ。過去の成功体験は捨て、何を作れば売れるのか、韓国人や中国人のように貪欲に考えるべきである。

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