本日の御題:大飯原発3、4号機を再稼働、期間に「?」

◆大飯原発3、4号機を再稼働、期間に「?」
野田首相は今月8日に官邸で記者会見し、関西電力大飯原発3、4号機(福井県 おおい町)について「国民生活を守るため、大飯原発3、4号機再起動すべきだという趣旨の発表を行った。

原発の再稼働(起動)がなければ、関西地区では15%もの電力不足が発生し、それは昨年の関東地区を上回る電力不足であるため、国民生活に多大な影響を与えるとともに、化石燃料の70%を中東に頼っていること、電気料金値上げは中小企業・零細企業の経営を圧迫し、国内産業の空洞化雇用の減少に繋がるという理由であった。

そのひとつひとつは分からないでもない。
15%の電力不足は、電気機器がなければ命にかかわる人々の生活に多大な影響を与えるであろうし、2〜3時間の停電が許されない工場もあるだろう。 この円高のなか、電気料金まで上がれば、海外に出ていく中小企業も増えるかもしれない。

しかしだ。 野田首相はまずやってはいけないことをやろうとしている。 それは電力需要がひっ迫する夏だけではなく、年間を通して安定的に「原発を動かそう」としていることだ。官僚が考えそうなことだが、まず電力不足が深刻な関西で再稼働にこぎつけ、これを勢いとしてなし崩し的に他の原発も再稼働していく腹づもりなのだろう。

野田首相は、とてももっともなことばかり言っているように思えて、肝心なことを言っていない。ひとつは、関西電力(他の電力会社もそうかもしれないが)が、この事態を予想していながら、この一年間、なにも対策を打ってこなかったことだ
それゃそうだろう。彼らは原発の再稼働を望んでおり、再稼働が必要なくなるような対策をする気などさらさらないのだから。

そこは政治主導で代替エネルギーの育成をしっかり考え、行動すべきだったが、それをしてこなかったという点で、政治にも責任がある。 この点がまったく述べられていない。

また、電力不足が夏場に発生するのに対し、問題を電力コストや化石燃料の調達不安にすり替え、一時的な再稼働ではなく継続的な本格稼働を想定している点も、国民に対する大きな裏切りだ。
継続的に原発に頼っている間は、新しい技術は生まれてこないし育たない。

これでは、野田首相が自ら言った「将来的には原発の依存を限りなく減らす」時代は永遠に来ないであろう。

美辞麗句を並べたところで、やろうとしていることは単純明確で、電力会社の利益確保(化石燃料を使った発電はコストがかかる)であり、震災前と変わらないのだ。

つい最近、東京電力の賞与が復活し、大企業よりも平均年収が多くなることに非難が集中しているが、税金を投入して保護している企業とは思えないほど、国民の意思は反映されないことに苛立ちを覚えてならない。

税金が投入されている以上彼らは純粋な民間企業ではない。彼らの好きなように事業を行うことは許されない。 彼らの収入や今後の事業の方向性については、国民の意見が反映されるべきだ。

しかし、その国民の意思を踏みにじる政府のやり方に、この国の民主主義を疑う。 これで投票率が低いことを嘆くなら、お門違いもはなはだしい。投票をしない選挙民に問題があるのではなく、選挙民の意思を尊重しない政府にこそ問題があるのだから

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