本日の御題:国内の全原発停止は、ビジョンを持って行うべき

◆政治決断で止めたのではない全原発、そこにビジョンはない
国内の原発が全て停止した。 一小市民の私は、これのニュースを複雑な気持ちで迎えている。

最終的に達成されなければならないことだが、しかし早すぎる印象も否めない。
エネルギーの確保は国民の生活に直結することはもちろん、国家の重要な安全保障であり、数十年という長いスパンで物事を考えなければならないからだ。
そのために政治家がしなければならないのは、代替エネルギーの確保や推奨であり、脱原発後の将来のビジョンである。

しかし、現状は、原子力行政に携わる人間からは「一日も早く、原発ゼロからの脱却を目指したい」という言葉が聞かれ、政府もそれを消極的ながら支持している。できないのは、国民の支持がないに過ぎない
つまり、行政は、大震災前となんら変わっていない中で、原発だけが、ただ止まっているのである。 単なる惰性で原発が止まったに過ぎない

行政が止めようとして止めたのではなく、定期検査に入るから止め、そのまま稼働できなくなるだけである。
彼らは、家庭での太陽光発電が増えれば、電気料金が上がるなどという嫌がらせ、脅迫としか思えないようなことを平然と言う人々であり、そこに本性があることを忘れてはならない。

理念なり、ビジョンなりのない停止は、いつでも簡単に復活する
八ッ場ダムがいい例ではないか。 政権交代時、あれだけ停止を明言していた民主党だが、停止を決定した前原国土交通相から新大臣(前田武志国交相)に代わってわずか、わずか10日で、国土交通省関東地方整備局が当ダムの建設は有意義だと報告書を提出し、あっさりと工事再開の許可が下りてしまった。

原発を止めるのであれば止めるなりの方策が必要だが、元々完全に止める気がない人たちに、その方策を考えられるはずがない。そこが最大の問題だろう。

また、ご存じの方も多いと思うが、原発が止まっているからと言って安心だなどと決して思ってはならない。 停止後も燃料棒は熱を発しているため、時間をかけて少しずつ冷却をしていく必要がある。
多くは保管場所が見つからないために、原発内に貯蔵されているだが、限られたスペースに密集して保管されているため、地震に対しては脆弱であることが報告されている。 かなり危険な状態であることに変わりはないのだ。

そして、残念なことに、報告されていても、実際には誰も動かない、何もしない、というお役所体質もなんら変わっていない。 福島の原発では、国内からも海外からもその危険性が指摘されていたにも関わらず、全く手を打たずに今日に至った経験を、全く活かしていない。
この期に及んで彼らの中で安全神話は崩壊しておらず、「何百年に一度」「何千年に一度」だもっともらしい理屈を付けて、自らに非がなく、原発は必要であると言うことを訴えるばかりである。

このような体制で、原発再稼働を訴えたところで、国民が支持するはずがないことを、なぜ民主党は分からないのか、私は不思議で仕方がない。

最後に各国の反応をご紹介しよう。

アメリカ「原発に最も積極的だった国家であった日本の原発が停止することに驚き」

ヨーロッパ「原発停止は政治力的指導力欠如の結果」

中国「電力需要を満たせなければ、地方に打撃」

各国の反応の違いは実に興味深い。ひとつの事象に対して、これだけ様々な考え方(彼らにとっての正しい指摘)が異なるのだから。
いずれの国家・地域も、エネルギーに関しては海外に依存しており、昨今の原油価格高騰に苦しんでいる。また、エネルギー政策が国家の安全保障にからんているの共通だ。
ちなみに、産油国の意見も付け加えなければバランスが悪いが、残念ながらそのような記事が見つからなかったのでここに掲載することができなかった。

オバマは、スリーマイル島の原発事故以来停止していた原発の新規建築を許可した大統領である。

EUはドイツのような脱原発を進める国もある一方で、フランスやイギリスといった原発先進国をメンバーに持つ組織である。ロシアからの天然ガスに多く依存しているため、政治的な理由で原発に頼らざるを得ない状況にある。

中国は、エネルギー需要の増大と、石油・石炭といった化石燃料依存からの脱却を目指して、急ピッチで原発を建築している国家である。

いずれも原発完全停止に否定的な指摘をするのは当然である。なぜなら、日本の脱原発を賞賛すれば、それは国内の原発問題に飛び火するからだ。要は、彼らは彼らなりに国内向けに情報を伝えているのであって、その国の事情によるところが大きいということだ。

よって、必ずしも、彼らの指摘を鵜呑みにする必要はない。

しかし、それでいて、彼らの指摘ひとつひとつを見ると、確かに一片の真実がある。 都合のいい一部分を切り取った各国・組織の指摘は、全てをひとつにまとめると日本の現状をよく説明できている。
電力需要の3〜4割を原発で補ってきた国が突如原発なしで夏を迎えようとしているのは驚きであり、計画停電が実施されれば経済活動にも悪影響を与える。

こういった原因を招いたのは政府や東電、いや原子力行政全般であり、国民の不信感を払拭できない愚鈍な国会議員たちだ。 彼らは残念ながら変わらない。変えるためには、人を入れかえる必要がある。

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