本日のお題:次期主力戦闘機(FX)はユーロファイターこそ相応しい

◆老朽化するF4ファントム
数年前より度々話題になっているが、いよいよ次期戦闘機FX選定の時期に差し掛かっている。防衛省は既に9月26日にメーカーなどからの提案書の募集を締め切り、米英などが共同開発中のF35ライトニング2、米海軍のFA18E/F、欧州共同開発で英独伊などが採用しているユーロファイターの3機種が応募されている。

当初はフランスのラフォールも参加する噂があったが、アメリカ依存の高い日本がヨーロッパの戦闘機を導入する可能性は低く、当て馬にされることを危惧して応募を見送ったという。

なぜ、次期戦闘機FXが必要かというと、中国はステルス性を持つ第5世代戦闘機「J20(殲20)」の開発を急ピッチで進め、2017年にも実戦配備する見通しであるからだ。これによって、日本海、いや、東アジアの勢力図は一気に塗り替えられる危険がある。中国に対抗するためには、最新鋭またはそれに準ずる性能を持つ戦闘機を配備しなければ、日本の海や離島を守ることは適わぬだろう。

現在、老朽化が進んでいるF4ファントムは、元はベトナム戦争当時に作られた機体だ。もちろん、中身はブラッシュアップされており、当時とは比べものにならないほど性能は向上しているが、次世代の日本の防空を託すにはあまりにも貧弱過ぎる。

これまで、F2戦闘機(戦闘機とは言っても、対艦攻撃能力を持つなど、その機能は多岐にわたる)をアメリカと共同開発して運用してきたが、この機体の製造は今年に入って既に終了してしまった。武器輸出の禁止があるため、アメリカにとって日本との戦闘機の共同開発は全くうまみがないものだったのだろう。 配備されている数も僅かであり、80年代に導入されたF−15イーグルとF4ファントムが日本の空を守っていることに変わりはない。

◆それぞれの特性
応募があった3機体のうち、性能的に最も劣っているのは米海軍のFA18E/F(スーパーホーネット)だ。実績は十分にあり、最近、オーストラリアで追加配備が決まった機体である。ただし、電子機器を最新にするなどして機能アップは図っているものの、ステルス性は前方向にしかなく、機動性も最新機と比べると劣る。第5世代戦闘機と対等に渡り合うには力不足は否めない。

F−35は日本がF−22購入を諦めてから俄に話題になっているステルス性を備えた第5世代戦闘機だ。おそらく、J20(殲20)が下馬評通りの性能を発揮した場合、これと互角以上に戦えるのは、アメリカ製ではF−22かF−35しかないだろう。

しかし、開発の遅れが心配されているのと、費用が非常に高いのがネックになっている。最近になって、機体に亀裂が生じる問題も明らかになった。

ユーロファイターは、確かにF−22よりは性能が劣るとBAEシステムズ社のマーケティング資料にもあるが、その総力差は決して絶対的なものではない。あくまで参考にしかならないが、ロシアの戦闘機Su−27との空中格闘戦での想定勝率によれば、F−22の91%に次いで82%と高く、F-15、F-16、F-18Aといっふた他の米軍戦闘機およびフランスのラファールが軒並み60%以下であることを考えると、その性能の高さが伺える、

既に多くのヨーロッパ諸国およびサウジアラビアで実戦配備されているというのも強みだ。F−35は実戦配備にまだ時間がかかるので、その間、日本の空はF4が守らなければならないことになるからだ。

ユーロファイターはF−22には及ばないものの従来機に比べてステルス性を持ち、機動性能に至っては非常に高い。自衛隊のF−15のパイロットが試乗した感想では、その機動性に驚いたという。F−15は現在でもステルス性を持つ一部の戦闘機を除けば世界最強の戦闘機であるにも関わらず、だ。

また、日本でのライセンス生産も可能としており、ただ海外から物を買ってメンテナンスをするだけではなく、生産もできるということは、日本の航空機業界にとってまたとない好条件である。

日本は、戦前には航空機の高い生産技術を持っていたが、GHQの占領下で航空機の開発を禁止されたため、未だに先進諸外国より遅れを取っている。戦車や艦船、潜水艦が世界でも屈指の性能を誇っているのとは対照的だ。

ユーロファイターの導入は日本の航空産業の技術の底上げに繋がる点は注目すべきだ。特に、日本はエンジンに関する技術が弱いため、機動性の優れたユーロファイターの生産技術を手に入れることは、大きなメリットがある。

ステルス性については、意外に思われるかも知れないが、その素材を日本のメーカーがアメリカの航空機産業に供給しているなど、決してひけをとってはいないのだ。

◆どの機体がベストか?
軍事評論家の多くは、F−35こそ本命だと言う。確かに性能的にはユーロファイターを抜いていると言われている(特にステルス性)し、日本政府も元々そのつもりだったであろう。

しかし、ヨーロッパのメーカーが、ここまで好条件を出してきたにも関わらず、アメリカの戦闘機を選択してしまったならば、フランスが危惧した「結局は当て馬」というレッテルを貼られ、次回以降は公募にすら参加してもらえなくなるだろう。それは、アメリカから不当に高い費用で航空機を買い続けなければならないことを意味する。

日本の主力戦闘機は、現在のところF−15である。この機体の買い換えというのであれば、F−35という選択肢は正しいかもしれない。しかし、F4戦闘機の買い換えと考えた場合、世界最強の戦闘機ではなくとも、日本の航空業界にとってメリットがあり、かつ高水準の性能を持つユーロファイターこそが正しい選択だと私は断言する。

繰り返すが、これだけの好条件を得ながらアメリカ機購入に決まれば、それは政治的敗北である。なぜならば、アメリカ政府、およびその航空業界の顔色を窺い、その圧力に負けたことを意味するからだ。

アメリカ政府、およびその航空業界にとって、ヨーロッパの機体を日本が購入することは、今後十数年にわたり得るであろう数億ドル、数十億ドルの利益を失うことを意味する。面白く思うはずがない。

しかし、野田首相が日本の国益を第一に考えるならば、アメリカ一辺倒の姿勢を正すべきなのだ。そうすることで、数年後に来るであろうF−15の買い換え時期に、日本は適正価格でF−35を購入すればよい。

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