本日のお題:東アジア貿易自由化

◆東アジア貿易自由化へ部会
8月14日のニュースで、ひとつ驚いた内容があった。

東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国など東アジアサミット参加16カ国が開いた経済閣僚会合で、貿易、投資自由化に関する作業部会を新設する日中の共同提案を了承したというものだ。

これまでもそのような話は幾度となくあった。しかし、少なくとも自民党政権時代は、アメリカをアジアから排除することになりかねないため、非常に慎重な対応をしてきたものだ。しかし、今回は一歩踏み込み、日中が共同提案したという点が新しい。いや、決して誉めているわけではない。

過去の経緯を説明すると、中国はこれまでASEANプラス3(日中韓)の自由貿易協定(FTA)を主張してきたのだが、日本としては中国主導で経済圏が作られることを警戒し、経済成長が著しいインドや、オセアニアのオーストラリア、ニュージーランドを加えたることを求めてきた。
共同提案は枠組みについては棚上げし、作業部会を通じて政府間協議に入るという内容になっているという。

枠組みを棚上げして進めるのは、この場合、決して良いことではない。なぜなら、このFTAが発足するか否かに関わらず、中国と共同提案をした時点で、日本の裏切り行為とアメリカに受け止められる可能性があるからだ。

アメリカは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を推し進めており、そこには当然日本も含まれている。

日本がTPPへの参加の態度を曖昧にしているこの時期に、アジア版FTAに中国と共同提案したとなると、アメリカは内心穏やかではないはずだ。中国市場は日本だけではなくアメリカにとっても巨大市場であり、そこでアメリカ企業が不利益を受けることを快く思うはずがない。

中国の離間の計(日本とアメリカを裂く計略)に、まんまと日本(民主党政権、海江田万里経済産業相)はのせられてしまっている。

中国からしてみれば、自国市場を開放するとしても、日本であればコントロールが効くと考えているのだろう。いざとなれば伝家の宝刀、反日プロパガンダで日本製品をボイコットさせることもできるし、それに対して日本政府は何もできない無能ぶりを発揮するのが目に見えている。

これまで主導権争いを展開してきた日中が協調姿勢に転じた背景として、米国主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を牽制(けんせい)したい中国と、東アジアの経済連携に積極的な姿勢を示すことでTPP交渉を有利に運びたい日本の思惑が一致したことが挙げられる、とニュースは分析を続けるのだが、アメリカとは経済だけではなく安全保障でも強く結びついていることを忘れてならない。

このコラムで何度も書いていることだが、残念ながら中国も韓国も、日本の真のパートナーには現在のところなり得ない。未だに反日教育が延々と続けられている以上。地理的に近いからとか、歴史的に長い繋がりがあるだとかいったことは、こと現代においては何の意味もない。

もちろん、今後、日本が当初の狙いの通り、アジア版FTAをネタにTPPを有利に交渉できるならばよし。ただし、それだけの交渉力を持った政治家がどこにいるのか、私は知らない。

ちなみに、FTAについては、11月の東アジア首脳会議で正式決定し、(1)物品貿易(2)サービス貿易(3)投資−に関する3つの作業部会を設置するとのこと。 それまでにTPPの件で態度を明確にできていればよいが……。期待するのは無理があるだろうか。

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