本日の御題:ヨウ素・セシウムの拡散と大国の思惑 |
◆放射性物質の拡散 消防隊員による必死の作業で、中央制御室に電力が供給されたのはよかったが、絶対あってはならないことであった「原子炉にヒビ、または穴があいている」ことがほぼ間違いなくなったからだ。今のところ、どの程度の損傷かは不明だが、しかし確実に高濃度の放射線を持った水が、設備内はもとより、近くの海や大気中に大量拡散することはもはや止めることができない。 これは、東電も予想していなかったことなのだろう。原子炉とは別の建物である3号機のタービン建屋で作業員3人(関連会社社員)が水たまりに足を入れて被爆したことからも明らかだ。東電は原子炉は無事と考え、隣の建物であるタービンのある建屋の水は放水によるものと考え、作業者に十分な説明をしなかったのではないか? なぜなら、被爆した2人の作業員は長靴すら履いていなかったからだ。 もし、原子炉から水が漏れだしていると考えていたなら、このような迂闊なことはなかっただろう。 今後、燃料棒を冷却するために放水を続けたとしても、あるいはタービンが外部電力によって稼働し初めたとしても、放射能で汚染された水は、確実に一定量以上が外に流れ出し、環境を汚染することは目に見えている。 ◆浄水場がヨウ素に汚染されること防げた 浄水処理の段階で粉末活性炭を利用すれば、放射性物質を吸着するという研究があったが、厚生省が都道府県に活性炭処理を検討するよう求めたのは19日であり、福島県川俣町の水道水から基準値を超えるヨウ素が検出されてからのことである。この非常事態においても、お役所仕事をしているのだ。 事なかれ主義とでもいうべきだろうか? 結果が出て、避けられなくなるまでじっとしている政府の対応に、疑いの目を向ける必要があるだろう。 その後、東京・金町の浄水場でも、基準値を超える放射性ヨウ素が発見された。これを機に、埼玉や千葉でも高濃度の放射性ヨウ素が水道水から検出され、町からは水のペットボトルが消えるというパニックを引き起こした。 東電の初動の対応の甘さもさることながら、問題が表面化してからでしか動けない日本政府・官僚の甘さは情けないの一言に尽きる。 ◆各国の対応に注目 ロシアは元々日本にとって近くて遠い国だが、実はフランスにおいても日本は存在感の薄い国である。 それを表すひとつの事件が、つい最近、ロシア極東に配備する揚陸艦を、フランスがロシアに販売したこと。日本を主要な同盟国と考えているアメリカやイギリスでは考えられないことだ。日本との外交問題に発展する可能性すら否定出来ない。しかし、フランスにとって、日本は遠い国であり、ロシアは近い国なのである(地理的にではなく、結びつきという意味で)。 そんなフランスやロシアが、今、日本に温かい手をさしのべようとしている。 ロシアに関しては、2010年の対日原油供給量は910万トン、製油製品は350万トンだったが、今年は1800万トンに倍増すると述べた。更に、10万トンの液状天然ガス(LNG)は既に日本に向かっているらしい(3/24時点)。 フランスも、原発被災対処の支援を開始している。 これらは確かに好意的に受け止めるべきだが、ひとつ認識しなければならないのは、国家間の外交であるということだ。彼らは全てが善意で動いているわけではない。 ロシアもフランスも、原子力エネルギーに力を入れており、フランスにおいては電力の80%を原子力に頼っている。そして、フランスにとって日本は原子力の分野では主要なパートナーでもあるのだ。世界でも最大手のアレバの売上高の7%(6億5,000万ユーロ)を日本は占めている。 福島第一原発3号基の燃料には2010年8月からアレバ製のMOX燃料(再処理工場で使用済燃料から取り出したプルトニウムを使うウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)が使用されているという事実もある。 更に、アレバは三菱と協力して(30%出資)青森の六ヶ所村の再処理工場から回収されるMOX粉末を利用するMOX燃料工場を同地に建設中であり、竣工予定は2016年。フランスにある58基のうち22基でMOX燃料が使用されている。 もし、福島の事故によって日本の政策が見直され、原子力発電所の規模縮小、廃棄という流れができてしまえば、フランスにとって大きな損失になるわけだ。 更に、福島の原発事故によって原子力発電所の危険性が改めて明らかになることで、自国の発電すら見直しを迫られる危険さえある。 事実、福島の問題が発生した後、ドイツでは原発反対のデモに25万人が集まった。地球温暖化防止の最有力候補としてあった原子力が使えなくなるとなれば、環境に一番力を入れているヨーロッパ諸国においても、京都議定書およびそれ以降の二酸化炭素排出量の削減目標は達成出来なくなるだろう。 |
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