本日の御題:福島第一原発の爆発は防げなかったのか? |
◆設計には、必ず「危険の想定」とそれに合った「安全基準」がある 50年前のチリ地震や三陸地震を経験し、堤防の設置や毎年の避難訓練など、津波対策をしっかりやってきた自治体でも甚大な被害と多数の死者、行方不明者が出たことを考えれば、まさに今回の津波は想定の範囲を遥かに超えていたと言えるだろう。 その意味で、福島第一原発を設計、運営した各団体の責任を問うのは酷な話である。 物は、どうしても、設計する際に「危険を想定」しなければならない。その想定をよりハードにすれば確かに安全は高まるかも知れないが、そこにはコストと利便性という問題が生じることになる。だから過去のデータに基づいて、「ここまで想定すれば十分である」という基準を「人」が作らなければならない。 貯水タンクが海岸側にあるなど、福島第一原発の設計については津波に弱い造りになっていたかもしれないが、海水を使って冷却するならばそれは理に適っているし、そもそも「想定した津波の高さ」であれば原発の敷地内に水が押し寄せることはないのだから、「安全」として考えられても無理はない。 ◆当初バッテリィは作動していた 地震から僅か30分もしないうちに押し寄せた最大津波(その前に小さな津波はあった)に自衛隊が間に合うはずがないのは当然だが、地震後、原発は安全装置が作動し核分裂の連鎖反応が停止、燃料棒の熱も通常時に比べて1/100に下げることができた。これは技術の勝利である。 更に、重要なことだが、当初非常用のバッテリィが稼働していたので、冷却システムも機能していた。事実、6号機まである発電施設は、同時に熱をもって水素爆発を起こしたわけではなく、初めは機能していたバッテリィがなくなったことで熱が上昇し、ひとつ、またひとつ、水素爆発を起こしたのだ。 この爆発は、対応がまずかったという意味で、人災ではないのか。 これによって放射線は急激に上昇し、作業員が近づくことさえ難しくなってしまった。バッテリィが稼働している時間は半日程度、更に止まってからも1日程度は温度上昇による爆発がなかったことを考えれば、この時間帯に迅速に電源の復旧作業を行うことができれば、海水を取り込むことも、危険な放射線内で放水することも、更に被爆覚悟で電源ケーブルを350mにも渡り敷設する必要もなかったのではないだろうか? 初動に関しては、官邸でも自衛隊でも消防団でもない、原発職員が迅速に動かなければならない時に、「想定外の津波が押し寄せたこと」による「想定しない破壊」を前にして、現場が動けなかったことが問題ではないだろうか? では、なぜ動けなかったのか? 現場がマニュアル外のことを自ら判断し、そして動くということは現実的には難しい。特に、今回のような事故は、責任の重さから、勝手な行動などできないのは想像できる。と考えるならば、それを決定できる権限をもつ者、それが原子力保安員なのかどうかは分からないが、総合的に判断できる者の対応が遅れたことが最大の問題と言えよう。 ◆最後に 中国においては、ネットでは常に日本をバッシングするユーザーが多い中、今回の被災に関しては、日本を悪く言う者は叩かれ、四川の大震災の時は日本から救援されたことを上げて、日本を支援すべきだという声が大勢を占めたことは非常に嬉しい事実だ。 韓国においても、大手新聞社が「日本大沈没」という映画を彷彿させるタイトルを付けたところ、一般の韓国人から「不適切」と指摘されるなど、政府やマスコミに比べて、一般市民の良識が目に付いた。 領土問題や歴史認識で日本は度々東アジアで嫌われ者であると日本人は感じることがよくあるが、災害に国境はないという認識を改めて感じることになった。 その一方、地震当時東北地方を訪れて被災した過激な環境保護団体シーシェパード(略称:SS)は、現地で食料や寝床の確保、車での移動などの助けを受けながら、今回の被災を「天罰」と話すなど、その歪んだ思想をよりいっそう鮮明にした。 危機に際して、人間性は出るものである。 最後に、外務省発表の災害支援を申し出た国、機関について一覧を下記に記したい(3月21日現在)。どの国家、どの機関が、何をどうしてくれたのか、国はより明確なものを発表しなければならないだろう。それは援助をしてくれる人の心に応えることになるからだ。 特に、中東やアフリカ諸国は内戦や混乱が続いている地域であるにも関わらず表明してくれているところが嬉しい。アジア諸国においても同様である。ブータンのジグメ・ケサル国王は18日、個人の名義で100万ドルを寄付をされたともいう。これらの期待に応えるためにも、日本は被災から立ち直り、そして恩を返していかなければならない。 (50音順) (大洋州) オーストラリア、サモア、ソロモン、トンガ、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー (北米) 米国、カナダ (中南米) アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、キューバ、グアテマラ、グレナダ、コロンビア、ジャマイカ、スリナム、チリ、ドミニカ(共)、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ (欧州) アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アルバニア、アルメニア、アンドラ、イタリア、ウクライナ、ウズベキスタン、英国、エストニア、オーストリア、オランダ、カザフスタン、キプロス、ギリシャ、キルギス、グルジア、クロアチア、コソボ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルクメニスタン、ノルウェー、バチカン、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポーランド、ポルトガル、マケドニア、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク、ロシア (中東) アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、パレスチナ自治政府、ヨルダン (アフリカ) アルジェリア、エジプト、ガボン、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、チュニジア、ナイジェリア、ボツワナ、マダガスカル、南アフリカ、モロッコ、ルワンダ (アルファベット順) |
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