本日の御題:鳩山劇場の終演

◆借金と混沌だけを残して立ち去る無責任
就任から僅か8ヶ月半での辞任劇。これを早いというべきだろうか、ようやくというべきだろうか。 首相の席に座るべき刺客のない人間が座ると、こうも政治は乱れるものなのだということを、日本国民は知ることとなった。

最近の日本の首相の席は、どうも呪われているらしい。今日の昼食を仕事仲間と話をしていたところ、前首相の名前が出るまでに5分もかかった。首相経験者の名前は出てくるのだが、誰が先で誰が後だか、順番が分からない。まさに日本の政治が混沌としていることを表している。

さて、 鳩山氏は前衆議院選挙にて大勝したこともあり、天下りを元凶とする無駄遣いの排除、財政再建を期待した国民から高い支持率を得た。 国際舞台では、「温暖化防止」で意欲的な数値を提出し、各国から喝采を浴びた(その半分は、しめしめ・・・という意味であったかもしれないが)。

アメリカからの独立、対等のパートナーシップ、 アジア重視の外交姿勢。どれも自民党が政権を取っていた時代にはなかったスピーチを掲げた。

さて、結果はどうであっただろうか?

天下り先である公益法人の縮小については、十分な効果がでていない。もちろん、それはもっと時間がかかる問題であることも十分承知している。昨日今日ですべてにけりをつけることなどできないことを考えれば、及第点ぐらいは与えてもいいだろう。

ただし、事業仕分けというやり方そのものは、あまり正しいとは言えない。仮に今、仕分け作業をして無駄を減らすことができたとしても、天下りの構造そのものが変わらなければ、再び同じ無駄な体質ができあがるのも時間の問題だからだ。

高速道路の無料化についてはどうだろうか? 子供手当などバラマキ行政の結果財政赤字は拡大、無料化どころか実質的な値上げになるような案がまかり通ろうとしている。

当てにしていた埋蔵金も目標の3兆円には半分も届かず、あげないと言っていた消費税にも手をつけなければならないと言い始める始末。

素人から見ても、高齢化社会に入る日本は、今後消費税をあげなければならないのは目に見えているのに、野党時代になんとも甘い試算をしていたものだと呆れるばかりだ。

そして極めつけは普天間基地の移設問題。5月までには結論を出すという訳の分からない自信に満ちたスピーチは、時間の経過と共にそのメッキが剥がれ、無策であったことが明らかになった。鳩山氏が選挙前に語っていた「最低でも県外」は公約ではないと言う始末。

そして、県内移転を、力任せに決定し、アメリカと共同声明を出した直後の辞任劇。まさにすべての問題をめちゃくちゃにかき混ぜたまま、後片付けをしないで逃げ去ったといわれても仕方がないだろう。

結果として残ったのは、多額の財政赤字と、沖縄県民の怒り・落胆、沖縄基地を巡るアメリカ政府の不信感、中国からの軽視、ダムを始めとする公共事業の是非、料金体系の定まらない高速道路、見えない郵政改革、などではないだろうか。

◆名スピーチなど求めてはいない
鳩山首相は、突然の辞任会見の際、自分の声が国民に届かなくなってしまったことが残念だが、それは自分の不徳のいたすところ、と言い放った。クリーンな政党を目指しながら、まさか自分の秘書が不正に関わっていたなどと夢にも思わなかった、とも言った。小沢氏が特捜部に何度も事情徴収を受けている問題も語った。

そしてクリーンな民主党になるために、自分たちは身を引くと涙ながらにいう。

会見後、自分のスピーチは100点満点だと自画自賛したそうだが、私に言わせれば30点も危うい。国民に声が届かなかったのではない、届いた結果が招いたのだ。メディアも民主党に当初は好意的だった。しかし、小沢氏の疑惑のとき然り、社民党のスタンドプレー然り、米軍基地問題然り、決断すべきポイントで決断できずに支持を失ったのは、他ならぬ鳩山氏本人の責任である。

それを、「自分の声が国民に届かなかった」などと都合のいい理解をするのだから、この人はつくづく政治家には向かない人だと思う。

第一、名スピーチなど国民は求めていないのである。国民が求めたのは実行力、決断力。この国を明るくしてくれるための、エネルギッシュな改革なのである。

ちなみに、彼のスピーチは、仲間の民主党議員や閣僚たちの共感は得ることができたが、多くの国民からは冷ややかに受け止められた。そういう意味で、名スピーチとはとても言えない。学校のクラス内の弁論大会ではないのだから。

◆小人・社民、国民新に踊らされる巨人・民主
これも友愛精神の表れなのだろうか?
閣内におりながら、政府の方針に反したスタンドプレーをする福島社民党党首に、なおもすがる鳩山首相は、哀れにさえ見えた。

福島氏は沖縄を訪問し、知事や市長と相次いで会談。テレビモニターに映る同氏は、居場所を見つけた鯉のように嬉々として、 「米軍基地を沖縄県外へ移す」という信念を持っているのは社民党だけ、と党の宣伝活動を行う。

少数与党の社民党にとって、米軍基地問題は自分たちの存在意義を世間に知ってもらうもってこいの問題なのである。利用しない手はない。会談の際の福島氏の薄ら笑いに、私は気味の悪さを感じずにはいられなかった。

もちろん、社民党の党首が一人でノコノコ来たところでどうにもならないことを沖縄県知事は知っている。同氏の行動が社民党の広報活動に 他ならないことを十分に感づいていたのであろう。会談はしたものの、実に冷ややかな反応であった。伊達に年は取っていない。 利用されることを警戒したのだろう。

それにしても、鳩山首相のボンボンぶりには、正直呆れてしまう。こんなスタンドプレーを行われてもなお、社民党に連立維持を望むとは…。それこそ、社民党にとっては渡りに船の対応だったはずだ。アメリカとの共同声明に福島氏が署名しないということで、やむなく彼女を罷免することになった際も、「自分から辞任してくれないか?」とお願いする始末だ。見通しが甘すぎる。

福島氏が自分からは決して辞任せず、むしろ鳩山首相から罷免されることを期待していると言うことが、この期に及んで分からないとは、嘆かわしい。連立を組み、政治改革を行っている最中に自ら辞任をすれば無責任と非難されることになるからだ。だから彼女は、罷免されることを望んだ。

そうすることで、非難は全て鳩山首相に向くからだ。この程度のことも読めないようでは、とても首相の役目など果たせるはずがない。

これほど優柔不断で、右往左往した鳩山氏が、最も俊敏に決断したのが自らの辞任というのは、なんとも皮肉なものだ。そこには参院選挙を見越した行動であることが伺える。

社民党が連立から離脱しても、国民新党と民主党で辛うじて過半数を維持できることから政権維持は可能であったはずだが、内閣支持率の急降下で民主党議員から造反がでる可能性もでてきたことで、急遽辞任を決意したのだろう。内閣不信任案が野党から参議院から提出されれば、仮に衆議院で否決するとしても、政権運営が難しくなるのは言うまでもない。

◆ではどうすればよいのか?
非難ばかりしてもいけないので、最後に私なりの代替案を出したい。

米軍基地については、今日本各地で赤字になり、路線が消えつつある地方空港を、整備し直して米軍に貸し出せばよい。もちろん、海兵隊は空軍ではないことは承知している。滑走路だけがあればいいというものではないことは理解している。

しかし、海岸を埋め立て、新たに滑走路を造るよりは安上がりで環境への負荷が少ないのも事実である。

公益法人の縮小については、個々に存在の是非を問うのも大切だが、そもそもとして役員給与の大幅カット、退職金の見直しなども平行して行うべきだ。そもそも官僚が天下りをするのは、公益法人にうまみがあるからである。そのうまみを取り除くことをしなければ、一時的に削減しても、再びじわじわと増えてしまうことは目に見えている。問題の根源を取り除く必要があるのだ。優秀な官僚諸君には、是非とも定年まで政治を支えてほしい。

子供手当については、継続的に続けていくべきだ。そのための財源として、消費税アップは正しい選択である。高速道路の無料化については、競合する民業圧迫(電車やフェリーなど)や、渋滞による環境負荷の問題もあるため 行わない。

科学技術については、世界一を目指す。それは世界一を目指して、ようやく2位や3位になれるものだからだ。1位を目指さなければ、2位や3位にもなれない。まして日本は技術立国。ロケットや宇宙での有人飛行、小型旅客機の開発など、行っていくべきだ。

児童ポルノの問題に関しては、誰にでも目のつく場所に性情報が氾濫することを防止する。漫画やオシャレの雑誌の最後に、アダルトな情報を載せるなど言語道断である。対象はなにも女性だけではなく、たとえばレディースコミックではやっているボーイズラブについても、きわどい表現は規制の範囲に含めるべきである。

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