本日の御題:日本がなくなる

◆秦と楚と斉の昔話
中国春秋戦国時代の話。

西の強国・秦は、隣接する楚の力を恐れた。というのも、楚は大国であるだけでなく、東の大国・斉と同盟を結んでいたからだ。

そこで、秦は楚に遣いを送りもし斉との同盟を破棄してくれるなら、百里四方の土地を楚に譲ろうと申し出た。

楚王は大喜びし、「儂は戦をせずに秦から土地を得たぞ」と自慢し、早速、斉との同盟を破棄しようとした。

その時、楚の智者が王を諫める。「秦が楚に重きを置くのは、斉という強国と同盟を結んでいるからです。もし、楚が斉との同盟を破棄したならば、秦は楚を重く見る必要がなくなります。力の弱い楚に、どうして秦が土地を差し出しましょうか?」

しかし、楚王は諫言を無視し、斉との同盟を破棄してしまった。

さて、まもなく秦から使者が到着し、地図を楚王の前で広げると、楚に割譲する土地は一里四方であった。当然、楚王は激怒する。しかし怒っても後の祭り。秦は約束は一里だったと言い返すのみ。智者の予見は見事当たったのだ。

さて、この話、どこかの国に似ていないだろうか?

そう、秦を中国に、楚を日本に、斉をアメリカに置き換えると、ピタリと一致する。

鳩山政権は就任当初から中国・アジア重視を掲げて、アメリカを軽視してきた。その結果の一つが普天間基地移設問題である。

かくしてアメリカとの同盟関係がギクシャクし始める。それを待っていたかのように、中国は動き出している。

◆世界に警察はいない
最近になって、中国軍の挑発的行動が目立っている。

事の発端は、4月13日、東シナ海で哨戒飛行中の海上自衛隊のP3C哨戒機に対し、速射砲の照準を合わせ、いつでも撃墜が可能かのように威嚇する行動を取っていた。このような行動は冷戦時代の旧ソ連でもやったことがないという。

それに対して、日本政府ができること、それは外交ルートを通じ、中国に対し事実関係の確認を申し入れることぐらいである。

その直後、今度は中国海軍の艦載ヘリコプターが海上自衛隊の護衛艦の周囲を近接飛行した問題が勃発。これもお得意の外交ルートで中国政府に日本政府は「非常に危険な行為であり、再発防止を強く求める」 」抗議したところ、返ってきた回答は何とも馬鹿にした内容。

「日本側の監視活動に対する必要な防衛措置だ」

中国が、これらの行動を国として正当化したことは、大きな転換期にさしかかっていると。

と5月3日、今度は中国調査船が日本のEEZ内に侵入、海保に測量中止を要求してくるという事件が勃発する。これに対しても、日本は外務省が抗議するに留まっている。

さて、ではアメリカはなんと言っているのか? 何もいっていない。おそらく、日韓の領土問題同様、両国で平和的に話し合ってほしいと述べる程度ではないだろうか?

中国は、日本政府の出方については既に予測済みで、むしろ今回の度重なる挑発は、アメリカの出方を窺っていると考えたほうがいいだろう。

◆台湾を見習え!
さて、この状況を冷静に見ている国(地域というべきか?)がある。お隣り台湾だ。

中国と経済的結びつきを強めているとはいえ、台湾にとって日米同盟は東アジアの安全保障に欠かせないものであったため、この同盟が揺らいでいることに強い危機感を抱いている。実際、政治的な理由で一度は開発を中断した弾道間ミサイルの開発に再び着手することを宣言した。これは、北京を射程に収めるものである。

台湾は中国との戦争など決して望んではいない。しかし、自己の権利を守るためには、自らが力を持たなければならないことをよく知っている。日本とは危機感が大きく異なるのだ。

もっとも、日本が今置かれている状況は、終戦直後を除けば最悪と言っていいだろう。冷戦時代の終焉は、中国という巨大な市場と軍事大国を生み出した。それはソ連(ロシア)よりも挑発的で、しかも日本に対しては被害者意識の高い国である。更に、経済的な結びつきが強いため、かつてのソ連以上に旧・西側諸国への影響力が強く、有事の際に日本がどこまで守られるか、非常に疑問がある。

西と東といった明確な敵味方があれば、どちらかの陣営に属することで仲間を得ることもできるが、冷戦の終焉はその明確な敵味方という関係を取り除いてしまったため、誰が守るべき国で、誰が憎むべき国なのか、不明瞭になったのだ。

今、日本はアメリカから不審がられ、中国からは蔑まれ、韓国からは敵意をもたれ、北朝鮮からは無視され、ロシアからは相手にもされていない状況にある。

そして、国内に至っては、自衛手段を持つことを、未だに禁止するかのような憲法第九条に縛られているのである。

日本が今すべきことは何か? 一言で言えば、弾道間ミサイルを開発することである。中国が、北朝鮮が、そして台湾までが持とうとしているのだ。日本が持ってはいけない理由はない。

もちろん、核兵器を持つ必要性はないだろう。日本はいつでも核兵器を作ろうと思えば作れる国である。その国が弾道間ミサイルを持つと言うだけで、十分な抑止力になる。

これを軍国主義だという者がいるならば、中国や北朝鮮のミサイルを、脅威を取り除くことができるのか問いたい。

言葉による解決を望むのは正しい。しかし、力なき言葉は政治の世界、特に外交では意味をなさない。現に、上述の通り、日本は外交ルートを通しての抗議しかできない国だと甘く見られ、その主張は無視されているではないか。

今日の世界情勢を見るに、戦後のトラウマから開放されてもいい時期にきているのではないか。

欧米列強が植民地支配を活発にさせていた時代ならいざ知らず、マスメディアの発達した今日において、兵器は必ずしも、戦うために、使うために持つのではない。自らの主張を、正当性を発言するために持つのである。

もし、社民党のような机上の空論で軍事力を悪だと決めつけるならば、その時こそ、日本の平和は守られないだろう。

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