◆インターネット博覧会開幕
20世紀最後の日、2000年12月31日にインターネット上で博覧会が開幕した。
これを企画したのは前IT担当相堺屋太一氏であった。彼はかつて通産官僚として大阪万博を手掛けた経歴を持つ。
インターネット上で博覧会をする、というのは何とも堺屋氏らしい発想だ。同氏はある雑誌の中でこうインタビューに答えている。
ロンドンの万博では汽船、汽車、郵便がメーンだった。汽車で汽船で遠くに行くことができるようになり、
郵便で全国一律に手紙が送れるようになった。これらによって情報が普及することになった。最新の技術で何かしたいと
思うとき、万博はヒットする。
(中略)
タレントやイベントの情報はネットに既にあるけれど、多くの人が自分が求める本当に好きなことを探せるまでには至っていない。
せっかくの技術だから、興味のあることを誰もが見つけられる場をうまく運用できないか、と考えた。
(中略)
こうした仕組みをつくることによって、インターネットの楽しみを広くアピールできるようになる。
そして同氏はインターネットこそ、現代の最新技術であると断言している。
ちなみにインターネット博覧会は「インパク」という略称がある。アドレスはこちらなので参照されたい。
◆公営のポータルサイト?
さて、学者らしい理想に満ちたインパクであるが、その内容は如何ほどであろうか?
まずインパクメインゲートをくぐると、ハピリオンと名付けられたコンテンツに出る。そこには国や各種団体、企業、個人などの
サイトがリンクされ、閲覧者はそのリンクを伝って各々のページに流し込まれる仕組みになっている。
そう、すでに多くの閲覧者が気づいているはずである。これは「公営のポータルサイト」に過ぎない、と。
理想がどうであれ、なんてことはない、出来上がったコンテンツはポータルサイトそのものなのである。
しかもその中身はサイト数でもサービス面でもYahoo!や楽天などには遠く及ばない。
それどころか、国家レベルの多大な投資によって仮に将来、このポータルサイトがYahoo!などを超えるサービスを
提供するようになったなら、それこそ官による民間圧迫という誹(そし)りを受けるだろう。
◆官主導なら得意なサービスの提供を!
実際のサイトを見に行った方なら分かるだろうが、インパクはまさに既存ポタールサイトの「パクり」である。
そういった意味では、この名称は正しい。
しかしそれを閉幕する2001年12月31日まで続けるとしたら、まさにITの名を借りた無駄遣いである。
私は提案したい。官主導であるならば、官が得意とする分野でのポータルサイトを目指してほしい、と。
新世紀の医療、科学分野での海外の最新技術を紹介したり、20世紀シアターとして過去のデータベースをまとめ上げるのもいいだろう。
こういった情報を一つのサイトで知り得るとしたら、それは大変便利であるし「万国博覧会」の精神からも逸脱しない。
堺屋氏はこのインパクでインターネットへの関心を高め、インターネット人口の増加を期待しているようだが、
現在のコンテンツ(パビリオン)では、すでにインターネットに慣れ親しんでいる人間にはそっぽを向かれ、
未経験者の関心も得られないという最悪の結果をもたらしかねない。