本日の御題:大阪府知事選〜それぞれの思惑
 今回は変則的ではありますが、投稿者からの問題提起に対する管理人の返信という形を取っています。

劉表さんのご意見(2000.02.01.投稿、02.06掲載)

◆誰が得をするか
 今回は、どの候補者が当選するにせよ、民主党が一番ババを引きそうである。
 相乗り官僚が勝てば「自自公、有権者の支持受ける」というタイトルが紙面を賑わすことは間違いないからである。
 共産党は敗れても対立候補を立てて戦ったので、存在感を十分アピールでき、一定の評価を受けるでしょう。
 一方、仮に共産党が勝てば「自自公敗北」の文字が躍り、相乗りした民主党も責めは免れないはずである。
 また、自民府連推薦候補が当選するこも考えられるが、この場合、自民党の一人勝ちと言える。衆議院選挙へ向けて自 民党支持層の掘り起こしを進めることができるのだから。
 つまり、自民党は「党本部推薦の相乗り候補」と「自民府連推薦候補」、どちらかで勝てればいいのである。
 府連推薦候補に投票した人は次の総選挙では自民党を支持すると予測されるため、連合や民主党はもとより自由党、公明党 も打撃を受けるでしょう。
 その一方で独自路線を歩む共産党は、一定の票を得て、府連推薦候補と合わせて自自公批判がこれだけあるということを 宣伝することができる。
 すべての場合で民主党は不利な立場に立たされる。このあたりを鳩山氏も自覚しているようで、 積極的に相乗り候補に関与しない態度を鮮明にしている。

◆地方へ侵食する中央
 1960年代から70年代前半は公害問題などの、産業優先の政治が扱いきれなかった問題を背景に革新自治体が存在した。
 政策論争もあって、環境福祉では国政にも影響を与えるほどの力を持つまでになった。しかし経済面で躓き、 自公(当時は小沢氏もいたから、実質今の自自公と言える)に社会党も加えた相乗り候補が擁立され、特定大学卒業の 官僚出身者が首長になったわけである。
 しかし、開発行政を中央と一体となって進めたため、彼らが批判していた革新系自治体以上に財政を悪化させてしまった。
 産業政策も従来型大工場誘致に固執し、工業団地は売れ残り、インフラ整備の負担だけが残ったのである。
 一方、いわゆる革新側が主導した相乗り自治体、神戸市でも、開発行政が80年代は一層推進され、結局阪神大震災 直前には財政がパンク状態となってしまった。震災がさらに追い討ちをかけた。

 中央(=自自公)は今度は交付金を乱発して地方に景気対策を推し進めさせようとしているが、補助事業では地方自体も 負担金を負担するので、受けがよくない。
 私は現代日本の病理の多くが、利権政治を招きやすい裁量行政と集権的財政システムに起因すると考えております。

 こうしたやり方には官僚を首長にするのが都合がいいのであろうが、必ず行き詰まる。経済理論を全く考慮に入れていない からだ。
 開放経済である地方で、景気対策として金を撒いても絶対地域経済のためにはならないのである(介護など現物給付は 別として)。

◆地方自治、第三のパラダイム
 そこで、第三の地方自治のパラダイムが必要とされるが、これは与党からは決して生まれてこない。自己を否定することに なるからだ。
 では社共はどうかといえば、現実路線へ転換してきているとはいえ、国民一般にはアレルギーを起こす人が少なくない。 とくに大阪、京都では相乗りの大義名分は「反共産」であり、今後もこの傾向は続くだろう。
 そう考えると、民主党が新しい機軸を打ち出して独自候補者をたてることが一番可能性はある。 場合によっては中央と対決することも必要でしょう。

 しかし、このままずるずる相乗りをつづけていれば、国民から見放される恐れがある。利権集団を抱え、公明党とも着々と 選挙協力を進める自民が総選挙で圧勝するシナリオが現実味を増してくる。
 今回の府知事選挙の候補者擁立は民主党の支持団体の連合が中心だったので、断りきれなかったという側面は勿論あるであ ろうが。

 しかし、連合にしてみても、リストラに危機感をもつサラリーマンの期待に何ら応えられず、逆に、従来型 開発行政のお先棒担ぎをしているのだから、その存在意義は確実に薄れてきている。
 民主党は連合との付き合い方を再考する時期に来ているのかもしれない。

管理人より

 劉表さん、度々ご意見をお寄せいただいてありがとうございます。機会を見て、様々な場所でディスカッションを したいと考えています。

◆中央と地方の関わり
 まず大前提として、地方選挙に中央政府・議会が関与することが果たして正しいのか、そこから考えなくてはなりません。
 実は先ごろ、このことについて仲間内で議論があったのですが、民主党が自自公と統一候補を擁立してもよいのではないかと いう意見がある方からされました。
 理由は中央の関係を地方に持っていく必要はないからというものでした。
 つまり、中央で民主党は自自公と対決し、共産、社民と手を組んでいますが、地方選挙ではそれが自自公民になっても 構わないというわけです。
 確かに地方自治は国政とは別個のものであり、上下ではなくあくまでも対等な立場であるべきなので、この意見には一定の 理解をしましたが、現実問題としてはやはり自自公と統一候補を応援することには反対の立場です。

 まず地方行政は中央とは別個とは言え実態は3割自治であり、中央の政策の影響を強く受けること。また地方選挙であっても 中央の大物政治家が応援に駆けつけることは決して珍しいことではなく、地方選挙が中央選挙の事実上の投影になっていることが あげられます。
 にも関わらず、独自候補を擁立せず与党三党と同じ候補者を推薦していたのでは、民主党のスタンスが国民には理解できない。
 地方分権が完全に進み、地方自治体が自立した時ならば(地方のことに国が介入しない)、国会のごたごたを地方に持ち込むことは ナンセンスですが、悲しいかな、現状は理想とはかけ離れています。
 よって、民主党もまた独自候補を擁立して存在感をアピールしてほしかった。現状はどっちつかずで、殆ど不戦敗です。

◆中央政府の野望
 中央から出される補助金で事業行う場合、なんと地方は90%以上を負担しております。つまり国の負担金は1割程度です。
 その結果、地方自治体の財政は圧迫しておりますが、これは中央政府の望んだことだといわれています。
 借金体質にしておけば(自立能力を削いでおけば)、地方自治体を思うがままに操作できるからです。つまり「もし言うことを 聞かないならば、例の補助金はカットするよ」といった具合です。
 地方の財政を逼迫させて反抗する力を失わせる、という意味では、江戸時代の参勤交代のようですね。
 さらに中央官僚の天下り先にされたら、地方分権にも悪影響を与えるでしょう。

◆総選挙の行方
 残念ながら、民主党は鳩山氏が代表になってから、政策に一貫性がないように思えます。
 「共産、社民」と手を組んで「憲法論議を始めましょう」と叫んでみたり、ネクストキャビネットを作るまでは よかったが、国会外で気勢を挙げてみたり。
 前者は、もし与党が本格的に議題とし始めた場合、野党間の連携にひびが入り(憲法第九条の扱いについて)、野党三党の共同歩調が 乱れれば、自自公連立政権に野党がよく浴びせる「数合わせの連立」という言葉をそのままそっくり言い返されることになるでしょう。
 後者は、法的になんら認められていない「内閣」を外野で組閣することで、茶番のようにお茶の間には映るでしょう。
 私はかつてシャドーキャビネットを提案し(某民主党事務所に)、ネクストキャビネットについても賞賛の言葉を述べましたが、 少なくとも運用面で間違っている。是非とも然るべき場所で、与党と対峙してほしいと思います。

 また、大阪府知事選に見るどっちつかずの優柔不断な姿勢は改めるべきでしょう。
 次に政権を取るのは自分達だと思うならば、その前哨戦で不戦敗を決め込むことは暗愚としか言いようがない。

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