『夜の目撃者』







「てめぇっ、紅虎。何・・・飲ませやがった!?」
「いややなー、狂はん。そんな怖い顔せんと。ただのしびれ薬ですよってに。」
「しびれ薬・・・?クッ。」
 悔しそうに唇を噛む鬼眼の狂。
「まあしびれ薬なんか使わんでも、狂はんをしびれさす自信はありますけど。なーんてvv」
 アハハッと笑う紅虎を狂は燃えるような紅い瞳で睨みつけた。
 今の狂は、冗談を聞くような気分ではない。
 まあ普段からあまり冗談の通じる人間ではないのだが・・・。

 そもそも、何故こうなったのかというと―――





 夜―――
 この日狂は、1人満月を眺めながら、大木に身を預けつつ、いつの間にやらうたた寝を
していた。
 そこへ大徳利(おおどっくり)を持った紅虎がやって来たのだ。もちろん中には、なみな
みと酒が入っている。
「狂はーん、一緒に飲まへん?1人やと味気のーて。やっぱり酒は誰かと飲む方が数倍
楽しめるもんやしねぇ。」
 半分でき上がった上機嫌の紅虎であった。
 その態度に、狂も思わず油断したのかもしれない。
 いや、狂のことだから、ただ単に『酒』と聞いて、何も考えず飛びついてしまっただけの
ことかもしれないが・・・。
「ああ、いいぜ。」

 かくして、2人は美しい満月を肴に、酒を飲み始めたのであった。
 もちろん狂は、その酒が『薬入り』とも知らずに・・・。
(ちなみに紅虎は、先に解毒剤を飲んでいたので助かったのだ!用意周到かつ計画的
犯行である。)





 そして再び現在―――

 圧倒的不利な状況にもかかわらず、狂はやっぱり狂だった。
 威厳も――強い光を放つ瞳も――何もかもその全てが。
 余裕すら、紅虎は狂のそれに遠く及ばなかった。
 これだけ歴然とした立場の差があるというのに、何故なのか・・・。
 それこそが『鬼眼の狂』なのだと、紅虎はこの日、深く知ることになる。
 狂を抱いたその後で―――。





「どうだ?一服盛ってヤる感触ってーのは?」
「うるさいっ!狂はん、ちょお黙っといてんか。」
「ククッ。ずいぶん余裕がないみたいだな?」
「狂はん、今の状況わかっとるんか?あんまりワイ怒らすと何するかわからへんで?ほん
まに。」
「ああ、かまわねーぜ?お前のヤリたいようにヤればいい・・・。」
「その言葉、絶対後悔さしたる。」





「くっ・・・・狂はんっ・・・」
「・・・あっ・・・んんっ・・・・」
『こと』に及んだ後も、主導権は変わらず狂にあった。
「狂はんっ・・・狂はんっ・・・・好きや!!」
 我を忘れてのめり込んでいく紅虎に、狂が薄く笑う。
「ああ、知ってるさ。ずっと前からな・・・。」
 そして狂は自分から紅虎に口付けた。
「狂はんっっ!!」
 紅虎が喜びに目を輝かせながら、さらに激しく狂を抱きしめる。
 狂はそんな紅虎を見つめながら、口元を歪めて笑うのだった。

 紅虎は、完全に狂に捕らわれたことに、まだ気付かない―――。




 そうして夜は、月を目撃者にして、ゆっくり激しく更けていくのであった・・・・・。







                                                   〈了〉








[後書き]
す、すみませんでしたぁっっ!!(土下座)<いきなりこれか?
銀士朗様、頂いた美麗「紅虎×狂」イラストから、こんなヘボ妄想をしてしまって、本当
に申し訳ございません(>_<)ひそかに頂いた当初から、あまりのイラストの素敵さに、萌
え妄想を繰り広げさせて頂いておりました(←殴)。今回は、その一部をさらけ出した結
果といいますか・・・(滝汗)。イラストを拝見したとき、まず狂さんの目の抵抗具合から、
「あっ、これは一服盛られたな・・・」と思いました<コラコラ
イラストの雰囲気から妄想変換させて頂きましたが、本当は頂いたイラストでは舞台が
外じゃないんですよね・・・(遠い目)。も、申し訳ございませんっ!!
もういくら謝っても足りません。ご迷惑と知りながら、このヘタレ文は銀士朗様に押し付
捧げさせて頂きます(これを恩を仇で返すというのですね←撲殺)。返品・ゴミ箱・踏
み付け(笑)・・・etc.いかようにもご処分下さりませ。本当に本当にすみませんでした
(>_<)そして重要な反省をもう1つ→紅虎も狂さんもめちゃくちゃニセモノくさくてすみませ
ん・・・(冷汗)。話し方とかめちゃ難しかったデス。

【こぼれ話】→書きながら、何度も『裏』行きになりそうなところを踏み止まりました(裏も
作ってないくせに・・・/爆)。エ○・・・ちょっと書きたくなってきました(苦笑)。




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