DISTANCE


陵刀が仕事から帰り部屋のドアを開けると、そこには予想していなかった光景があった。
ベッドには、鉄生が四肢を投げ出しぐったりと横たわり、その身体は体液にまみれ、秘部からは少し血が滲んでいる。
「帰ったのか、司。」
振り向くと、そこには今一番見たくない男が立っていてた。
「これはどういうことなんですか、父さん!」
「お前が今までにないほど執着しているこの子がどんなものなのか、少し味見をしたくなってね。」
「・・・ッ!」
その一言に、陵刀は負けると分かっていながら遣威に殴りかかろうとした。
しかしその時、二人の声に気付いたのか、鉄生が目を覚ました。
「りょ・・・と・・・?」
そう呟いた鉄生の声は、酷くかすれている。
「目を覚ましたようだね。・・・じゃあ、私はこれから仕事でまたしばらく留守にするよ。」
「逃げるんですか?」
「その子の事に関しては、いくら私でもお前に敵わないようだからね。」
「・・・どういう意味ですか。」
「それは本人に聞くといい。」
そう言って、遣威は部屋を出て行った。


陵刀は鉄生を抱き上げると、そのまま風呂場に向かった。
鉄生を服を着たままの自分の膝の上に座らせ、腕を首にまわさせた。
シャワーから湯を出し、それをゆっくりと汚れた鉄生の身体にかけてやる。
身体が綺麗になると、そこにはいくつもの忌々しい鬱血痕が浮かび上がった。
秘部に手をまわし中を指で掻き回すと、残されていた残滓がドロリと流れ出た。
そしてそれは一本の白い道を造りながら排水溝へと流れていく。
陵刀はその光景に吐き気がした。
ふいに、首にまわされた鉄生の腕に力が籠もる。
どうやら後ろを弄られて感じてしまったらしい。
陵刀は、鉄生のものを握ると、それを上下に擦った。
少しすると、鉄生は身体を震わせて陵刀の手の中に精を放った。
しかし吐き出されたものはとても薄く、少なかった。
風呂場には、ただ水音だけが響いていた。


陵刀は鉄生に服を着せ、自分も着替えると、鉄生を新しいシーツの上にそっと寝かせた。
「鉄生くん・・・」
陵刀が触れようとした瞬間、鉄生の頬を一筋の涙が濡らした。
「鉄生くん?」
「ごめ・・・い・・・ごめんなさい・・・」
鉄生はまるで叱られた時の子供のように、ただ泣きながら同じ言葉を繰り返す。
「ごめん・・・俺・・・っ!?」
陵刀は、鉄生のその震える唇を自分の唇で優しく塞いだ。
「もう何も言わなくていい。キミは何も悪くないから・・・」
そう言いながら、鉄生の涙を指で拭ってやる。
「陵刀・・・」
「何?」
「俺が好きなのはお前だけだから・・・」
「うん、僕もだよ。・・・今日はもう眠った方がいい、ずっと傍にいてあげるから。」


『本当はもっと強く抱き締めてやりたかった。
アイツとのことを忘れるくらい・・・
でも今そんなことをすると、彼が壊れてしまいそうで恐かった。
とても脆くなっていたから・・・
だから今は傍にいよう。
明日はキミが笑えるように・・・』


*Fin.*

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〜あとがき兼いいワケ〜

こちらは「優しい陵刀&弱り切った(?)鉄生」でした。
でも内容的にアイタタな感じは変わりませんね・・・(汗)
切ない感じを目指してみたのですが、どーだったでしょうか?
最後の方は自分で書いてて鳥肌がたちそうでした。
陵刀はいくら怒ってても、パパには敬語なのです!!
この二人の会話は書いてて楽しかったです。
それにしても、なんちゅー親子だ・・・。





紅月の感謝の気持ち 萌え〜っ!!(叫)すみません、鬼畜バージョンも素
敵でしたが、こちらはさらにツボにハマったかんじで
す(笑)。優しい陵刀が『らしく』なくってス・テ・キvv
そして鉄生に手を出した陵パパの『味見』という台詞
にヤラレました!ビバッ、陵パパ(笑)。引き際を心得
ている陵パパはさすが年の功ってかんじでしょうか。
健気な鉄生も可愛くって萌えました。玖様、素敵に切
ない陵鉄小説を本当にありがとうございましたー!!








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