※出来れば本編『捕らわれた太陽』を先に読んでからお読み下さい※ 捕らわれた太陽 【番外その1―お祝い編―】 5月3日――― 今日は、朝日奈大の誕生日。 朝から皆(主に四校同盟の幹部たち)が石黒の喫茶店に集まり、盛大 に誕生パーティーが催されていた(もちろん店は臨時休業)。 料理はもちろん石黒のお手製。 メインは特大サイズのホールケーキである。 そのあまりの殺人的な甘さに、主役の大を含むほぼ全員が撃沈したこ とは言うまでもない。 ちなみにほぼ全員というのは、言わずもがな、1人悠々と食す東堂を除 いて…である。 宴は夜遅くまで続き、結局解散したのは夜の11時を回った頃。 皆がそれぞれの方角に別れ、いつしか大は自宅までの道を1人で歩い ていた。 暗い―――夜道。 明かりといえば、道の両端にところどころある街灯だけ。 今日はあいにく、雲に隠れて月も見えない。 今まで大人数で騒いでいた分、1人で歩く夜道はなんだか寂しくて。 大はいつしか足早に帰路を急いでいた。 しかも俯きかげんで。 あっ!と思ったときには遅かった。 急に目の前に影ができたかと思うと――― トスンッ 避ける間もなく人にぶつかってしまう。 「うわっ、すすすみませんっ!」 何か前にもこんなことがあったような…?と思いながら大が慌てて顔を 上げると、 ―――既視感――― 目の前にいたのは、時広慎也だった。 「やあ、大君。久しぶり!会いたかったよvとっても。」 そう言って、しっかりと大の手を掴みながら、ニヤリと笑う。 逃がすつもりはないという意思表示のつもりだろうか。 「っ!と、時…広さっ………」 大はあまりの衝撃に一瞬声を失い、それから1度ゆっくりと深呼吸をし てから、 「俺…俺は会いたくなんてなかったです!もう2度と。」 顔を上げて、睨みつけるようにきっぱりと言う。 「ククッ。相変わらずだねぇ。まあそう言わずに、さ。一緒においでよ?ま あ嫌だと言っても来てもらうけどねっ♪」 (相変わらずなのは貴方の方ですよ…。無理矢理俺をどこかへ連れて行 こうなんて、あのときと全く同じじゃないですか!) 大は心の中でそっと毒づく。 声に出さなかったのは、どうせ何を言っても無駄なんだろうという、一種 の諦めの気持ちからだった。 あのときは逃げ出せた―――ううん、逃がしてくれたけど、今度は…? 不安な気持ちが表情に出ていたのか、時広はクスクスと笑いながら、 「心配しなくても大丈夫。明日にはちゃんと帰してあげるよ。まあ今回は、 だけどね。」 そんなことを言う。 それを聞いて気が緩んだのか、大は少しだけ体の力を抜いた。 まあ最後の言葉には少なからず不安が残るような気もするが…。この 際、気にしない方が身のためというものだろう。 「で、俺をどこに連れて行こうっていうんですか?」 大の前向きな発言に気を良くしたのか、時広は嬉々として答えた。 「もちろんラ●ホテルに!」 「………失礼します。」 「あっ、うそうそ。待ってよ、大君。冗談だってば!俺の家に行こうよ?ね っ?」 「時広さんの家…ですか?」 「うん♪大君今日誕生日なんでしょ?だからお祝いしよーと思って色々準 備してるんだ。だから…ね?来て?」 「…よく、知ってましたね。俺の誕生日なんて…。」 「そりゃあ愛しの大君のことだから…。何でも知ってるよ、俺は!」 冗談なのか本気なのか、時広の表情からは何も読み取れない。 相変わらずのポーカーフェイス。 しかし大は、何だか嬉しかった。自分の誕生日を知っていてくれて、わ ざわざ祝うために会いに来てくれたのだと知って。 大は掴まれた腕とは反対の手で、時広の上着の裾をそっと掴み――― 小さな声で、言う。 「行きます。時広さんの家に連れてって下さい////」 「大っ!?」 驚きに目を見開く時広の前には、可愛らしく頬を赤く染めた大の姿。 しばらくの後――― 大をお姫様抱っこしながら、弾むように夜道を駆ける時広の姿があった とか。 果たして、時広にお持ち帰りされてしまった大は無事に家に帰れたの か? それは、2人だけが知っている――――。 【END】 [後書き] 大君、お誕生日おめでとー!!もう時間なくって、これが精一杯でした (汗)。しかもいきなり連載の番外編だし(爆)。本当は連載の続きを書く つもりは全くなかったんですけど、なんか誕生日だし、いっか〜みたいな (←いや、よくないだろ!?)。まあもともと『捕らわれた太陽』はシリアス 調(多分)だったので、今回はポップ(←?)なかんじで書けて楽しかった です♪この後(お持ち帰り後)とか書いたら、絶対裏ですよね!(笑)まあ 裏は本で書いたので、サイトの方ではこんなかんじで。しかしこんな今さ ら連載の番外編なんて、需要はあるのだろうか?いや、ない(←自問自 答?)。楽しいのは書いてる私だけ…みたいな(爆)。もしご感想など頂 けましたら泣いて喜びます!不評もしくはご反応がない(←この可能性 大/涙)ようでしたら、もう2度とこの連載の番外編は書きませんので、ど うぞお許しを〜(逃)。逆に、もしまた読んでやるぜ!というお優しい方が いらっしゃったら、調子に乗ってまた番外編第2弾とか書いちゃうかもし れません(笑)。というか、この連載の内容を覚えて下さっている方が果 たしているのだろうか?(←めちゃ根本的な問題/爆)実は私も忘れかけ て……ゲフゴフッ。ではでは、読んで下さってありがとうございましたvv |