「あー。終わったぁ」 入学二日目の講義が総て終り、河野は少し放心していた。 一年目は基礎と聞いていたが確かに、国と国の運営・歴史をやっている。 以前行っていた小学でも似たような事を教えて貰っていたが。 「内容が濃い…」 なんせ教鞭を握る師父達は説明中にふと学生に質問をする。 曰く、現在の華珊の国主は誰だ。 曰く、鳴砂が始めて産出した鉱物は何だ。 …気が抜けないが、その分実に身になる講義だ。 「河野、そろそろ行かないと」 「え?あぁそうか」 この日彼等は生徒会から呼び出しが掛かっていた。 ここで一度時間の軸を昨日の夕方にまで戻す事にする。 ※ 藤森には寄宿舎が存在する。 四国から生徒が来ているが故に、初期より設置されているものだ。 その中でやはりと言うのか、姫専用の部屋があった。 「はじめまして、寄宿舎の監督をおこなっている辻です」 「はい。お世話になります」 「寄宿舎は基本的に住んでいる我々学生が管理維持しています。ただし食事は朝・夕と出るので 安心していいですよ。とまぁ基本はここまでですね」 あはははははは、と上辺だけの笑い声が響く。 笑い声につられてあははと、河野と四方谷は乾いた笑いをあげた。 「ここでは少々。専用の個室がありますので、そちらに移動しましょう。河野君にはもう一人紹介 したい『姫』も居る事ですし」 「えっもう一人居るんですか?」 辻は少々含んだ笑みを浮かべて部屋へと案内した。 部屋の中を見た瞬間、河野は自分の居る場所を思わず確認した。 藤森は男子のみで構成されている。同様に藤森学園のある莉菜府の隣の府、秋冷府(しゅうれ いふ)には女児の為の学び舎「桜ノ宮」がある。 けれど、ここは藤森。 つまり、ここに居るのはみな男である。 「あの…」 「オレは男だ」 「だよな」 納得をありがとう。と少し河野の思考は壊れていた。 少女のような見目麗しい少年は、おそらく容姿に対しての抵抗なのだろう来ている服のすそが短 く、足元は紐で確り結わえて動きやすくしている。(高級官や金持ちほど裾が長く、足元を隠す服を 着たがる傾向がある) 「はいはい、みこっちゃんも剥れてないで自己紹介」 「おはつおめもじ仕る。わたくしは豊実琴と申す。学は医師、河野殿とは勉学違えど志は同じくと 感じておりますゆえ、なにとぞ宜しくいたします」 ………なぜこうも挨拶が…いやもう何も言うまい。 通過儀礼の言葉でくぎり、よろしくと相槌をうつ。 誰も注意しないので、別に気にしなくて良いらしい。 「まあ、あまり細かい規約は無いけど、入舎したら入り口にある名前の札を赤札にひっくり返して くれればいいし。ああそうだ、この寄宿舎は基本的に二人で一部屋。河野は四方谷と共同になる。 いいね」 「はい」 「それと、入浴は本来大浴場を使うんだけど、姫は個室を使用する事。以上だよ」 微かに間を空けてから、あれ?と河野は思う。 「風呂、個室なんですか?」 「安全上と精神衛生上の問題だよ、姫は容姿がアレだからね」 一見女に見えてしまう容姿。これは周りの人々と姫の精神的安全を考えての事だった。 「ああ、それと明日講義が終わったら生徒会室に行く事。会長から今後の事について話があるら しい」 という経緯の末、現在河野達は生徒会室に居る。 「はじめまして、河野君。僕が生徒会長の有定です」 スイマセン顔を背けて良いでしょうか?花が異様に舞っていて凝視できません。 |