この世界は、数多くの国が存在する。

 その中でも一線を引く国々がある。

 東四大国。
名の通り、大陸の東側に連なる四つの巨大な国々。

 東に鳴砂(めいさ)。
砂原が一面に続き、金脈鉱脈の多い地。

 西に翠紗(すいしゃ)。
緑林のが多く、生き物溢れる地。

 南に李劉(りりゅう)。
そびえ立つ岩山に囲まれ、豊かな水脈のある地。

 北に華珊(かさん)
海に面し海産物に恵まれた、海の恩寵の多い地。

 その四国の総代を務めるのは、四国の内最も南の位置にある李劉。

 遥かな昔、この国がまだ国とも呼べぬ頃。
 混乱と混沌に疲弊した民達を救う為に、一匹の龍を率いた若者が立ち上がった。民を憂いだ彼は
近隣の国々から疎外された優秀な文官・武官・農民を集め一つの村を作り、飢饉に嘆く者達を奮い
立たせ。近隣国からの襲撃を武官を引きいて蹴散らし、内から腐らせる醜官を文官とともに罷免し、
農作物を襲う天災をも竜の力を使い収め、小さき国々を統治したという伝説を持つ国である。
 その名残か、次代の国を引き継ぐ王の子たちに。皇子には「竜」を、皇女には「龍」を字(あざな)に
付け。王位に上がった者には新しく国から一文字、「李」を字に付ける慣わしがある。


 華やかな伝説のある李劉には、次代の四国支えの要。文官、武官の育成機関がある。

 鳴砂が費用を算出し、華珊が基礎を打ち、翠紗が建て、李劉が管理を行う。
 四国が連なる国であるからこそ出来た機関である。

 この機関に在籍機関は最低で三年。
 その間に、文官・武官そして医師と成るべく、青年達は切磋琢磨するのだ。



 名を「藤森」。
後に学びし者どもの集いし場という意味を付け。


 藤森学園と相成る。









 春を幾ばくか過ぎた頃、藤森学園にて。



「入学生、ですか?」
「そう。時期外れではあるがね。鳴砂の小学(文官候補者が勉学する場)からの推薦だ。成績事態
には問題はないんだが…顔がな」

 暫くの沈黙が場を包む。
 嫌な汗を相当共に流しながら、溜息を吐く。

「・・・では『制度』適用となるのですね?」
「そうだ、それで。当面の面倒を坂本、君に任せたい」
「解りました」

 礼をし、室内から退去する。
 むしろ、話が始まる前に逃げ出したかったが…。
 己の気質の所為か、引き受けてしまった。

 暗雲を背負い、物憂げにしている青年。
 名を坂本秋良という。


 内心、彼は困っていた。時期外れの入学者の面倒を見るのは一向に構わない。そもそもそれす
ら委員会に属する自分に与えられている仕事の一つだ。だが、問題はその入学者の「顔」である。

 『制度』適用者となるならば…。

「絶対美形だよね」

 鎮痛な溜息を吐きながらも、
 明日来るであろう入学者への『制度』説明をひたすらに考えていた。






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