最強の男(ひと)






 ある日の昼休み―――
 屋上には、明凌連(+朝日奈派)の面々が集っていた。と言っても、特に何の目的
があるわけでもなく、各々が昼食―持参した弁当、もしくは購買で買ったパン等―を
取っていた。
 宗近和寿は、松尾と一緒にフェンス際の一角で持参した弁当を開いていたが、ヘッ
ド(朝日奈大)の姿が見えないため、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見回していた。
 そこへ―――
 バアンと屋上のドアが開き、当の大が姿を現した。
「あさひっ・・・」
 声をかけようとした宗近の前を通り過ぎ、大は導明寺壱茶のところへまっすぐ向か
う。
「壱茶さんっ。」
「おう、どうした?坊主。」
「先程、照宇さんが呼んでられましたよ。何か大事な話があるとかで、体育館裏へ来
いって伝えてくれって。」
「ゲゲゲッ・・・、多分また親父がお冠っつー話だろうな。気が重いぜ。」
「そうなんですか?」
 キョトンと聞き返す大を見て、壱茶が笑う。
「フッ・・・」
「ど、どうかしたんですか?」
 うろたえる大を見て、壱茶はついに吹き出した。
「アハハハッ。」
「もーうなんで人の顔見て笑うんですか?」
 プーウと膨れる大の様が、さらに壱茶の笑いを増幅させる。
「ハハハハッ・・・・もうっ、ほんとに可愛いよな、朝日奈はvv」
 壱茶がまだ笑いを滲ませた声で、そんなことを言う。
「え!?」
 途端に大の顔がボッと赤く染まった。
 不意打ちとはこういうことを言うのだろう。
「いっ、壱茶さん・・・もしかして俺のことからかってます?」
 上目使いにそんなことを言っても可愛さは増すばかり。
「いや。俺は大マジメだぜ?なんならその証拠を今から見せようか・・・?」
「?」
 一瞬後、大は壱茶に腕を引かれ、そのまま壱茶の胸に倒れ込んでいた。
「えぇっ!?」
 うろたえる大の耳に、様々な声が入り交じって聞こえてくる。
「おい、壱茶がセクハラしてるぞ!」
「こら、壱茶。抜けがけはなしだと言ったろ?」
「おいおい、マジかよ!?」
「ずるいぞ、壱茶。」
 しかしそれらの声の中で、一際大きな叫び声ともいうべき声が、大の耳を直撃した。
「コノヤロウッ!壱茶、てめぇっ。朝日奈を放せっ!!ぶっ殺されてーのか!?」
 そう、それは大に命を捧げた男(笑)宗近の声である。
 怒鳴りながらも、大を壱茶から懸命に引き剥がそうとする。
 そしてようやく取り戻した大をぎゅーっと抱きしめ、
「だっ、大丈夫だったか?朝日奈。この変態に変なことされてないか?」
 必死の形相で問いかける。
 その目は―――――マジだ。
「だ、大丈夫ですよ。壱茶さんは俺のことからかってるだけなんですから・・・。」
 のほほーんと答える大に、宗近の不安は増すばかり。
 この無自覚天然系の可愛いヘッドには、きっと宗近のその不安を理解することは永
遠に不可能であろう。
「まあ無事ならいい。こいつは後できっちり俺が殺しとくから!」
「ああ!?何だと?俺様がお前みたいなヘナチョコ野郎にヤラレるわけねぇだろーが
!!」
「なにぃ!?なんなら今からやっか?」
「おお、やってやらぁ!」
 すっかりやる気満々の壱茶と宗近。
 周りはハラハラと(いや、楽しんでる者も少なくないが)見守るだけだ。
 しかしそこに、やんわりと割って入ったのは―――天の声・・・もとい、大の声。
「2人ともケンカはダメですよ。それにもうすぐ午後の授業も始まりますし・・・。」
「坊主・・・」
「朝日奈・・・」
「ちっ、しゃーねぇな。」
「わ、わかった・・・。」

 こうして昼休みは、嵐の後の静けさ―――という状況で幕を閉じたのであった。



  最強の男、朝日奈大!!






                                               【END】







[後書き]
鬼組SS第2弾でしたー。布教布教っと(笑)。
兄弟CPファンの皆様、すみません!!私はあくまで「大君総受」推奨なので。皆が
大君のことを可愛く思ってて欲しいなと(苦笑)。いや、実際めちゃ可愛いんすけどね
(←アホ)。ほんとはもっと茜ちゃんとか東堂さんとか四方さんとか石黒さんとか・・・
etc.登場させたい人がいーっぱいいたんですけど、力量不足でした(汗)。
まあこのメンツで茜ちゃんを出すのは難しいかな?石黒さんも出そうと思うとお店し
か無理っぽいし?(爆)他にも、敵役さんと大君の絡みとかも書いてみたいしー。とか
言ってるとキリがないですね。時広×大とかどうでしょう?(いや、そんな激マイナー
CP誰も読みたくないって・・・)
今回のSSは、ほんとは大君が何故「壱茶さん」と呼ぶようになったのか?という謎
に迫ろう・・・とか思ってマシタ。それなのにいつの間にか話が逸れていってしまって
・・・やっぱり壱茶と宗近の低レベルな(失礼)ケンカが原因か?(爆)
またいつかリベンジしたいです!
というわけで、皆様ぜひ『鬼組』を読んで下さいませ〜vv(最後はやっぱり宣伝/殴)




BACK