月夜の誓い(小話その2) 『啓介、ごめん。』 もう何度、そう呟いただろう。 涼介は自分の部屋のベランダから、真っ暗になった空をもう長いこと 見上げていた。 ケンカ・・・したのだと思う。多分。 ただあまりに忙しすぎて、啓介に構ってやれなかったのだ。 それでも寂しさを堪えていつも帰りを待ってくれていた啓介に、涼介は もっと優しい言葉をかけてやるべきだったのだ。 そう。悪いのは全て、涼介の方。 「啓介、ごめん。」 もう一度呟き、ため息を吐く。 それから涼介は部屋に入り、車のキーを手に取った。そしてそのまま 部屋を後にする。 閉め忘れた窓が、涼介の焦る気持ちを物語っていた・・・。 FCを走らせながら、涼介はレッドサンズメンバーで啓介と親しくしてい る者に、片っ端から電話をかけていく。 しかし誰のところにも啓介はいない。 (やはり、そうか・・・。) 皆と騒ぐのが大好きな啓介だが、今まで本当に怒ったときや本当に悲 しいときなどは、1人になることの方が多かった。 だから今日も多分そうなのだろうと予測はしていたのだ。 (そうすると・・・) 考えられるのは、1つしかない。 目的地を見定めると、涼介はさらにFCのスピードをあげた。 白い車が夜の街を疾走する・・・。 赤城山頂上。 「啓介・・・。」 FDに凭れて空を見上げていた啓介は、涼介の声にビクッと肩を震わ せ、それからゆっくりと振り返った。 「アニキ・・・。」 ちょっと驚いたような啓介の表情。 「啓介、すまない。」 涼介は謝りながら、ゆっくりと啓介に近づく。 啓介は首を横に振りながら、 「なんでアニキが謝るんだよー!?」 ちょっと怒ったように言う。 「俺が悪かったからだ。」 言いながら、涼介はやっと啓介のすぐ前までたどり着いた。 啓介の頬に手を伸ばしかけて、躊躇うように寸前で止まる涼介の手に、 啓介はクスリと笑いながら自分の手をそっと重ね合わせた。 それが合図のように、涼介がその手をグイと引き寄せ、バランスを崩し た啓介をそのまま自分の胸に押し付ける。 啓介の腕がそっと背中に回され、しばらく無言のまま抱き合って――― 先に口を開いたのは啓介だった。 「でも、アニキ。悪かったのは俺の方だからな。やっぱ俺がわがまますぎ たっていうか・・・。」 「そんなことはない。悪いのは俺の方だ。啓介の気持ちも考えないで。」 すかさず涼介が返す。 「ちげーよ。俺だってば!」 「いや、俺が・・・。」 また言い争いになるかと思われたとき、2人が同時に吹き出した。 「アハハハッ。」 「フフッ。」 「ここでケンカしたら、意味ねーよな。」 「ああ、全くだ。」 「じゃあさ、アニキ。」 「何だ?」 「仲直りの印ってことで・・・」 そっと目を閉じる啓介に、 「そうだな。」 涼介は優しく頷き、ゆっくりと口付けた。 この夜。 月に見守られながら、2人はさらなる愛を誓い合ったのだった・・・。 【END】 [後書き] はい。小話その2(またの名をリハビリSS第2弾)でした。短いわりには難 産でした(爆)。やっぱりなんにも考えないで書き始めたのですが、最初の 台詞が『啓介、ごめん』ですからねぇ?(←誰に言ってるんだか・・・)。もう どうしようかと思っちゃいました(核爆)。なにしろケンカ話を書いたのが初 めてでしたので・・・これって仲直りする話なのよね?とか自分に問いかけ ながら書いておりました(←アホ)。とりあえず仲直りできて良かったです (笑)。ほんとはシリアスに展開させるつもりだったなんて・・・口が裂けても 言えません(←言ってるし)。 今度はちゃんとリハビリSSではなく、普通の(?)ものが書けたらいいなっ て思っております。 相変わらずのヘタレ文で失礼いたしました。もっとリハビリが必要だわ! (っていうか、一生リハビリで終わるんじゃ・・・?)。 ↑ そうか、このSSはリハビリだったんだな。どうりでヘボ・・・(自主規制) 当時の後書き・・・だからなんでこんなに自爆しまくってるのぉ〜?(涙) これじゃー今さら何もコメントを付け加えられませんって。確かに、このバカ ップル(失礼)兄弟にケンカさせようとして、見事玉砕した記憶は微かに残 っております(苦笑)。まあうちの兄弟じゃーケンカなんて絶対無理っすね。 なにしろアニキが啓ちゃんにベタ甘だもん(笑)。じゃ、そういうことで(?)。 |