甘い呪文(小話その1)






「アニキー。ちょっと聞いてくれよぉーっ!!」
 学校から帰るなり、啓介が涼介の部屋へと駆け込んでくる。
「おかえり。どうしたんだ?一体・・・。」
 啓介はハアハアと乱れる息を懸命に整えながら、
「た、ただいま。あ、あのさ・・・池上のやつが俺のこと可愛いとか言うん
だぜ!?高校生にもなった男に可愛いって、変だよなー?」
 口を尖らせ、可愛らしく悪態を吐く。
『そういうところが可愛いんだよっ』とは口には出さず、涼介はただ優しく
啓介を見つめる。
 しかしここで重大な事柄に気が付いた。
《池上のヤロウ(←もちろん啓介の交友関係は調査済みなので、顔も知
っていたりする)、俺の啓介に何ちょっかい出してやがるんだ!?・・・さ
て、どう料理してやろうか?フフフ。》
 心の中で池上に対する報復を誓い、顔にはいつも通りの笑みを浮か
べながら、
「啓介。別に変でもなんでもないぞ。啓介は本当に可愛いからな!!」
 とりあえずキッパリと断言しておく。
 この事実だけは、譲れない。啓介の可愛さは、生まれたときから今日
まで、ウルトラマックス健在なのだから・・・。
「ア、アニキまで・・・////」
 啓介は頬を赤らめて目を泳がせ、涼介の言葉が冗談なのか、それとも
本気なのか決めかねている様子である。
「本気だぞ。啓介は可愛いvv・・・俺が今までおまえに嘘を言ったことが
あるか?」
 もちろんここはダメ押しの一手で攻める。
 案の定、「ううん、ない。」と啓介はあっさり白旗を揚げた。
「だがな、啓介。そんな顔を俺以外の誰にも見せるんじゃないぞ?」
「そんな顔って・・・?」
 不思議そうに啓介が聞き返す。
「そういう照れて可愛らしい顔のことだよ。もう端から見れば誘ってるよ
うにしか見えない。」
「さ、さそっ・・・?誘ってるぅ!?」
 驚きに目を見開く啓介の顔は、もはや熟れたリンゴのように真っ赤に
なっていた。
「そういう顔は俺だけに見せてくれ。」
 言いながら、涼介は啓介との距離を少しずつ縮めていく。
「なっ、なっ、何・・・??」
 わけのわからないまま、啓介は壁際まで後ずさった。
 もう涼介は止まらない。いや、止まれない。
 啓介の体を壁に押さえつけるように、涼介は啓介の体の両脇に自分
の両腕をついて、啓介をそこに縛りつけた。
「ア、アニキ・・・。」
 掠れた声で啓介が呼ぶ。
 その声に惹かれるように、涼介はそっと啓介に口付けた。
 優しいキスに、啓介の体からだんだんと力が抜けていく。
 ゆっくりと離れた涼介の唇から、甘い呪文が発せられて―――

 『愛してる』

 それに答えるように啓介の腕が、涼介の背中に回されるのだった。






                                      【END】









[後書き]
あははははっ(泣笑)。すみません。密かにスランプです(←エラそう)。
とりあえずリハビリのつもりで書きましたが、ひどいです。読めたもの
じゃありません(死)。読んで下さった方、本当に申し訳ございません。
この小話シリーズは、実はもう1つのサイト(有栖川○栖)でもやってお
りまして、短いお話を書きたいとき用だったりします(←オイ)。
ちなみにこのお話は、涼ちゃん→大学1回生・啓ちゃん→高校2年生と
いう設定だったり・・・(←ここで説明するなっ!)。
いつも以上に(?)アニキが壊れていて、失礼いたしました。


↑ しっかし私の後書きは、何故いつも自爆しまくってるのか・・・?
とか、当時の後書きを読んで真剣に悩んでみたりしております(苦笑)。
いや〜甘いですね、ゲロ甘。まさにタイトル通りの甘さです(遠)。
涼ちゃんの台詞は、おそらく啓ちゃんスキーの紅月の脳内言語だと思
われマッス!(さわやかに〜)




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