いつも世界は回ってる (お題:されど、世界は回る) 4日前――― ホワイトデーにかこつけて、俺は朝日奈に告白した。 2月14日のバレンタインデーに朝日奈からチョコを貰ったのは、 もちろん俺だけじゃない。 少なくとも、明凌連&明凌朝日奈派の幹部は全員貰っていた。 けど、俺は我慢できなかった。 これ以上皆と同じでいることなんて耐えられない…そう思った。 ―――朝日奈の特別になりたかった。 だから、ダメもとで告白した。 ホワイトデーのお返しにと、一生懸命に選んだマフラーを渡しなが ら…。 呼び出した屋上。 俺の告白に笑顔で頷き、『付き合う』ことを了承してくれたときは、 幸せのあまり一瞬気が遠くなりそうだった。 世界は今、俺を中心に回っている――― そんな気さえしていた……。 今日は3月18日―――すなわち俺の誕生日だ。 俺は朝から浮かれていた。 なにしろ今日は、恋人(朝日奈)が祝ってくれる初めての誕生日。 しかも4日前に恋人になったばかりなのだから、期待は高まると いうもの。まあその…色々な意味で。 学校が終わり、俺はすぐに朝日奈を俺の家に連れて帰った。もち ろん合意のうえで、だ。 今ほど一人暮らし(しかも防音ばっちり?のマンション)で良かっ たと思ったことはない。 朝日奈をリビングのソファに座らせ、俺は紅茶とケーキを用意す る。朝日奈を歓迎する準備はすでに万端だ。 しかしここで、朝日奈がおずおずといった様子で口を開いた。 「あの…宗近さん。」 「おぅ、何だ?」 「ほんとは俺の方がケーキとか用意する立場なのに、なんだかす みません。」 「へ?なーに言ってんだ。こうしてうちに来てくれただけで、十分だ よ。朝日奈とこうして2人っきりで誕生日を過ごせるなんて、まるで 夢のようなんだから…さ。」 「そ、そんな……////」 照れて俯く朝日奈の可愛さに、理性が一瞬ぶっ飛びそうになる。 (い、いかんいかん。我慢だ、俺!) 根性でなんとか理性を呼び戻す俺。 そんな俺の葛藤を知らない朝日奈は、マイペースに再び口を開 いた。 「あの…改めてお誕生日おめでとうございます。これ、プレゼントで す。」 「おおっ、サンキュー。開けていいか?」 「はい、どうぞ。」 ―――ガサガサガサ 慎重に包装紙を捲っていくと、中から現れたのはシンプルな無地 の箱。それをそっと開けると、そこにはガラス細工の置物が1つ。 天使をかたどったそれは、まさに朝日奈の分身のようで。 「おおお〜っ、スッゲーなこれ。めちゃくちゃキレイじゃん。それに、 なんだか朝日奈に似てるよな、この天使。」 「えぇ!?ななななに言ってんですかっ、宗近さんってば。」 「いや、マジだって。ありがとな、朝日奈。一生大事にするよ!」 「いえ、気に入って頂けて良かったです。」 「ところで、朝日奈。」 「はい?」 「俺、もう1つ欲しいモンがあるんだけど。」 「えっと…何でしょう?」 「朝日奈大。」 「え?」 「大が欲しい…。」 そう言って、引き寄せた朝日奈の体は、やはりと言うべきか完全 に固まっていた。 見ると、表情もフリーズ状態だ。 「朝日奈?……大?お〜い、大君?」 呼びかけるも反応なし。 俺は逆に好都合とばかりに、朝日奈をソファに押し倒した。 そしてゆっくりと圧し掛かり、キスをして―――上着の裾からする りと手を入れ、素肌に触れた瞬間、ビクリと朝日奈が覚醒した。 目を見開き、自分の今の状態を悟ると、 「ヤッ…」 と叫びながら、両腕で俺の肩を押しのけようとする。 油断していた俺は、見事にソファから転がり落ちた。 しかも情けないことに、頭から。 「アッイテテテテ……」 頭を擦りながら起き上がったとき、すでに家の中から朝日奈の姿 は消えていた。 俺はこのとき、最低な誕生日を迎える羽目になったということに、 ようやく気が付いた。 世界は俺の存在など関係なく、いつもどおり回っている……。 翌日――― 最低な誕生日を差し引いても余りあるような幸福が待っていた。 家を出ると、目の前には朝日奈が立っていて、 「昨日は逃げちゃってごめんなさい。」 と目を潤ませながら言う。 「いや、俺の方こそ悪かった。」 「あの…俺、嫌だったんじゃないですからね?その、急なことでび っくりして…心の準備が間に合わなかっただけで……。俺、宗近 さんのこと好きですから!!」 言うだけ言って、恥ずかしそうにダッシュで駆けていく朝日奈。 その顔は、熟れたリンゴのように真っ赤だった。 俺は嬉しさのあまりニヤけそうになるのを必死で堪えながら、 「待ってくれ、朝日奈。俺も一緒に行くから!」 朝日奈の背中に向かって、慌てて声をかけるのだった。 俺達の恋は、まだ始まったばかり――――。 【END】 [後書き] というわけで(ゼイゼイ←只今息切れ中…)、宗近さんお誕生日お めでとうございますvvなんとか間に合った…かな? 誕生日くらいは(←?)幸せにしてあげたい(ぶっちゃけイクとこま でイッちゃってもいいかな?)と思って書き始めたのですが、やは り宗っちは宗っちでした(笑)←酷 でもまあ幸せな誕生日…の翌 日だったんじゃないでしょうか?(笑) 心の準備さえできれば、大 君との××も夢じゃないヨ!宗っち(注.××にはお好きな言葉を どうぞ/笑)。 今回もまた、誕生日SSにちゃっかりとお題を使わせて頂いちゃい ました。す、すみません〜。そのうえ、どのへんが『されど、世界は 回る』の『されど』なのか……(汗々)。も、申し訳ありません(平伏) このへんは軽〜く流してやって頂けると幸いです(逃)。 お題を下さった木下龍都様、本当にありがとうございましたvv宗近 さんのお誕生日記念SSになってしまいましたが、よろしかったら貰 ってやって下さいませ(もちろん返品も可でございます)。 |