酔っぱらいに愛の手を (お題:酒は飲んでも呑まれるな) 「朝日奈、年が明けたら家に遊びに来ないか?」 と、明凌朝日奈派副ヘッドの宗近和寿が言ったのは、冬休みも間近 に迫ったある日のことだった。 「え?」 と驚いたように見返す大に、さわやか〜に笑いかけて、宗近はさらに どうかな?ダメか?と畳み掛けるように問う。 「いえ。ぜひ行きたいです!でもそんなときにお邪魔して、本当にいい んですか?」 「もちろんだ。どうせ気楽な一人暮らしだからな。それに・・俺と朝日奈 の仲じゃねぇか。遠慮はなしだぜ?」 「どんな仲だよ!?」 不意に背後から聞こえる呟き・・・もといツッコミ。 「どわぁ〜っ!?」 「っ!?」 驚く2人の前で、ツッコんだ張本人―松尾智典―は、涼しい顔で「よ っ!」と片手を上げた。 「松尾さん、こんにちは。」 「ト、トモっ!驚かすんじゃねぇよ。」 「フフッ。それは宗近が独り抜け駆けしようとしていたから・・・かな?」 「なっ、なっ、何言ってんだ。抜け駆けなんてするわけないだろーが。」 「フーン。そう?でも俺には新年早々朝日奈と2人っきりに・・・なーん ていう下心が見え見えだったんだけど・・・。そうか〜、気のせいだっ たんだー。」 「お、おぅ!」 「じゃあ・・・皆も当然呼ぶんだろうね?」 「えっ!?」 「抜け駆けじゃないんだろう?」 「・・・・・・・呼びます。」 こうして、2人の会話に全くついていけず、きょとんとしている大を置 き去りにしたまま、新年は皆(明凌連幹部たち)で宗近の家に集まる ことが決定したのだった。 松尾智典、恐るべし―――。 1月3日。午後1時。 宗近宅に集まった面々―大・松尾・東堂・四方・照宇・壱茶・神南・ 後藤(茜は欠席)―は、大・松尾を除く全員が既にデキあがっていた。 部屋の至る所にビールや缶チューハイの缶(残骸)が転がっている。 大はさっきからやたらと絡まれまくっていた。 躱しても躱しても、次から次へと擦り寄ってくる酔っぱらいどもに、も はや半泣き状態だ。 ちなみに大は自分がお酒に弱いという自覚があるため、あまり飲ん でいないので無事だったりする。 松尾はと言えば・・・薄ら笑いを浮かべながら、酔っぱらいどもが大 に絡む様子を熱心にデジカメで撮影していた。一体何に使うつもりな のか・・・考えるだに恐ろしい。 そうこうしているうちに、酔っぱらい連中がついに意識を失い始め た。バタリバタリとフローリングの床に沈没してゆく面々。 ようやく最後の1人が倒れ、起きているのは大だけとなった(松尾 は用事があるとかで、撮影するだけしてさっさと帰ってしまった)。 ホッと息を吐き、ベランダに出ると、冷たい風が頬に心地良い。 しばらくボーッと空を眺めていると、不意に背後から抱きついてくる 人影。 大は驚きに「ヒャッ!」と悲鳴を上げて固まった。 おそるおそる振り返ると、犯人(?)はほんのりと頬を赤く染めた宗 近だった。 「む、宗近さん?どうしたんですか?」 大が聞いても、その声が届いていないのか、さらに大をぎゅーっと 抱きしめてくる。 「あ、あの・・・はは離して下さいっ!」 必死で抵抗する大をものともせず、宗近は腕の力を緩めることもな く、熱っぽい目で大を見つめ―――あろうことか大の首筋に唇を押し 付けた。 「あっ・・・」 思わず洩れた甘い声。 その声に煽られた酔っぱらいの次の行動は、1つしかない。 そのまま大を押し倒し――――たのも束の間、背後から迫った複 数の拳に問答無用で沈められる宗近だった。 「大丈夫か!?朝日奈。」 「朝日奈、無事か?」 「この変態に何もされなかったか?」 「遅くなってすまない。ちょっと飲みすぎたようだ。」 「俺としたことが、酒ごときで不覚をとるとは・・・。」 口々に言う皆の顔をぐるりと見回すと、眠っていたはずの全員が そこに顔を揃えていた。 「はい、大丈夫です!」 にっこりと笑う大に、新年早々ほんわ〜と癒される明凌連幹部た ち。 「こんなところにいたら風邪を引く。早く中に入ろう。」 そう言って、大を促す東堂。さすが(?)明凌連ヘッドである。 「あっ、でも宗近さんが・・・」 まだベランダに沈んだままの宗近を心配する大に、 「大丈夫大丈夫。後で責任をもって起こすよ。」 と言いながら、四方は心の中で呟いていた。 (抜け駆けした罰だ。宗近、しばらくそこで寝てろ!) 数分後・・・ ベランダで目覚めた宗近は、ここ数時間の記憶を完全に失ってい たらしい―――――。 【END】 [後書き] というわけで(?)、新年第1弾SSでした〜。お正月SSを書こうと思 ったとき、何故か『お正月』=『酒』しか思い浮かびませんでした(笑)。 おっかしいなぁ?私、アルコール類一切飲めない人間なのに(苦笑)。 上手い具合に(?)お題にお酒関係のものがあったので、こちらで書 かせて頂きましたvとりあえず、『酒は飲んでも呑まれるな』という言葉 は、宗近さんに捧げたいと思います(笑)。しっかし新年早々、やっぱり 宗っちのポジションはオチキャラなのか!?(酷っ)ええ、もちろん愛で すよ?愛v好きなキャラほど苛めたい・・・(←オイ)。松尾さんだけでな く、何故か四方さんも黒い気がするのですが・・なんとな〜く東堂×四 方スキー様には怒られそうな気がします(汗)。ま、まあそういう方はう ちのサイトには来られてませんよね?(←そういう問題か!?) そんなこんなで(?)、お題を下さった南あきら様、本当にありがとうご ざいました>< お正月仕様のSSとなってしまいましたが、どうぞ貰っ てやって下さいませvv(もちろん返品もオッケイです。) それでは皆様、本年も『月の螺旋と黄色い箱庭』をよろしくお願い致 します(ペコリ)。 ※最後にこっそり注意書き→お酒は20歳を過ぎてから!※ |