それは―――
 ちょっとした、いたずらのつもりだった……。






   いたずらは恋の始まり (お題:いたずら)






 ある週末の夜―――
 御堂茜は朝日奈大の家に遊びに来ていた。
 家には今日から日曜日まで大しかおらず、1人でいるのは寂しいなぁ…
という気持ちもあって、大が「うちに来ないか?」と茜を誘ったのだ。
 茜は相変わらずの尊大な態度で、
「土下座して頼むってなら、行ってやってもいいぜ?」
 などと言う。
 もちろん大が土下座するわけもなく、代わりに「何言ってんだバカッ!」
という怒声と、ゲンコツが1発返された。
 茜はブツブツと文句を言いながらも、大の「夕飯は俺のおごりだからさ。」
という一言に飛びつき―――今に至る。


「大ー、のどかわいた。」
「はいはい。」
「大ー、小腹がすいたぞ。」
「わーかったよ。ったくもう!」
 さっきからずっとこの調子である。
 エラそうな客の態度にキレもせず、せっせとジュースやお菓子を運んで
くる大は、それでも結構楽しんでいた。
 なにしろ友達を家に呼ぶということ自体が久しぶりなのだ。
 そうそう、こんなかんじだったよなぁと中学の頃を思い出し、なんだか嬉
しくなってみたり。
 しばらく大の部屋で、飲んで食って他愛ない話をしていた2人だったが、
そろそろ夕食の支度に取りかからねばならない時間となった。
「俺、今からカレー作ってくるから、適当にくつろいでてくれる?」
 そう言って、部屋を出て行く大。
 茜がヒラヒラと手を振りながら、「お〜。」と気のない返事をする。
 部屋で1人になった茜は、本棚から適当に漫画を漁り読んでいたが、だ
んだんそれにも飽きてきて、ついには大のベッドにパタリと倒れ込んだ。
 数秒後―――
 他人のベッドで気持ち良さそうに眠る茜の姿があった……。



「茜ー、カレーできたぞ。」
 声をかけながら大が自室の扉を開くと―――
 そこには屍…もとい、眠り人が1体。
「茜…?寝てるのか?」
 ベッドに近付きつつ声をかけると、返ってくるのは規則正しい寝息だけ。
 いつも学校で寝まくっている茜だが、こんなに無防備な姿は初めて見る
ような気がする。
 ベッドに腰かけて、至近距離から茜を見つめ―――大は思わずフフと笑
った。
「こうやって寝てると、茜も可愛い普通の高校生ってかんじだよなぁ。」
(そうだ!こんなチャンスめったにないよな……)
 立ち上がり、机の引き出しからゴムやピン、リボン等を取り出す(何故こ
んな物を大が持っているのかは謎であるが…)。
 寝ている間に髪の毛を弄って可愛く(?)変身させちゃおう!という、子
どもじみた『いたずら』を思いついた大であった。
 そしてもう一度ベッドに腰かけ、そ〜っと茜の髪に手を近づけ―――触
れようとした瞬間、大は逆に茜に手を取られ、グイと凄まじい力で引き寄
せられていた。
 あまりに突然のことで、大は驚きのあまり声も出せず、茜の胸に倒れ込
んだ状態のまま、呆然と固まっていた。
「大……」
 耳元で囁く声が掠れている。
 寝起きだから…という理由だけでないことは、その甘い響きで大にもな
んとなくわかった。
「あ、茜…?」
 見上げた先に茜の視線。
 近すぎるその距離に慌てて目を伏せようとした大は、しかしその前に強
引に唇を塞がれていた。
 茜の唇によって。
「んっ…」
 全てを奪い尽くそうとするかのような激しい口付けに、大は為すすべも
なく翻弄されてしまう。
「ん……ふっ………んんっ………はぁっ…………」
 息苦しさに意識を飛ばしかけた寸前、ようやく唇が解放される。
 ぐったりと茜の胸に凭れかかり、ハアハアと肩で息をする大。
 自然と目尻から零れていた涙を茜の舌が掬い取る。
 頭の中が真っ白になってしまい、何も考えられない大は、ただ茜に縋り
付いていることしか出来ずにいた。
 ただ1つわかることは、自分がちょっとした『いたずら』をしようとしたこと
が、何故かはわからないけれど、この事態を招いてしまったということ。
「あ…かね……なん…で……?」
 ようやく発した疑問に返る答えはなく、今度はベッドに押し倒されてしま
う。
「え…?」
 呆然と見上げる大の目に、茜の真剣な瞳が映る。
 そのまま大の首筋に茜の唇が触れて―――
「あっ…イヤッ」
 拒もうとした大の耳元で、甘く囁く声。
「好きだ……。大が欲しい。」
 ドクンと全身の血が沸騰するかのような錯覚に襲われる。
(そんなこと言われたら……もう拒めないっ!)
 ゆっくりと茜の背中に回される両腕。
「茜……俺、も………好…き………」
 互いの熱がゆっくりと混ざり合い、甘く溶けてゆく。



 数時間後―――
 朝日奈家のキッチンに、カレーを温め直している茜の姿があったという。






                                        【END】










[後書き]
大変大変大っ変お待たせ致しました>< このお題を頂いてから一体何
ヶ月が経過したのでしょうか…?(遠い目)もう本当にお待たせしまくりで
申し訳ございません(土下座)。『いたずら』という素晴らしく妄想を掻き立
てられるお題に、何を書こうと色々考えて…考えて…考えて…結局こん
なかんじになりました(←オイ)。最初は、こうそっち方面(←?)のいたず
らを考えていたのですが、激しく裏的な妄想が頭を駆け抜けてゆき…こ
れはマズイなと(笑)。で、軌道修正した結果が、大君からの『いたずら』
ということになりました。しかしこれ、茜ちゃんからの『いたずら』のまま書
いていたら、相当エロくなってたんだろうなぁ(苦笑)。そして最後のオチ
は、わかって頂けたでしょうか?カレーが冷めちゃうくらい長い間、しかも
大君が自分でカレーを温め直しに行けないような状態になるまで、さーて
2人は一体何をしてたんでしょうか?(←バレバレ/笑)
お題を下さった桜太様、ものすごくお待たせをしてしまい、本当に申し訳ご
ざいませんでしたっ!!!!!!もうお忘れになっていてもおかしくないと思います、
ほんとに(冷汗)。もしもまだ覚えていて下さって、このSSを見て頂けまし
たら、どうぞ貰ってやって下さいませ>< 返品ももちろん謹んでお受け致
しますので!ではでは、エ●妄想爆発(笑)の素敵お題を本当にありがと
うございました〜vv




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