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Fake Of Love
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 一点の曇りのない澄み切った青空の下、地獄の釜の蓋が開こうとしていた。←なんだなんだ?







 生徒会室の応接セットには、五人+αの姿が見えた。

「一体なんの用ですか?有定“元”生徒会長」

 元、に力を込めて発言したのは、河野亨姫であらせられる。
 眉間には皺(しわ)が刻まれ、全身から「不機嫌です。俺に触れたら火傷させるぞ」と言わんばか
りのオーラを発している。←放火はいかんよ、放火は。

「私は(坂本と話す事に)忙しい。(早く坂本の傍へ戻りたいから)用件は手短に願おうか」

 音として聞こえたものは短いけれども、省かれた部分が露骨に顔に出てる御鷹・C・統威。
 関係ないが秋月は「チャーリー」という愛称を彼に授けている。元ネタは「帯ギュ」である。←本当
に関係ねぇな。

「無駄な時間をコイツ(御鷹)と過ごしたくないんでサクッといきましょう」

 命知らず発言の第三弾は、四方谷裕史郎姫が投下なされた。
 彼も前述の二人に負けず劣らずの不機嫌っ振りである。
 ちなみに、裕史郎姫の負のオーラの直撃をくらってる豊実琴姫は、花の顔(かんばせ)を素敵な
ほどに青くして、もはや意識は遠のきかけている。←合掌。

「本当に生きがいいね、君達……………本当に、ね」

 ニッコリ笑ってグッサリ突き刺す有定は、誰が見ても「すんません土下座するんで顔こっち向けな
いで下さい」と言いたくなる瘴気(しょうき)を放つ。
 仕事をしていた生徒会執行部の面々が、何人か顔を青ざめながら左胸を押さえている。←さすが
ラスボス、威圧感が違うねぇ。

「ま、君達と遊んでもあまり楽しくないし、とっとと用事を済ませようか」

 楽しければもっとずっとこの瘴気を出し続けるのか!?とツッコミたい所だが、早く終わる事に越し
たことはないので、四人は黙って続きを促(うなが)す。
 有定はテーブルの上に、一冊の冊子を置いた。
 無地の青い表紙には、何の印刷もされておらず、一カ所にポストイットがつけられたそれは、内容
が見当もつかない。
 四人の顔には一斉に怪訝な表情が浮かぶ。

「ソレにね、とっても面白いモノがかいてあってね。是非とも四人に見て貰いたかったんだ」

 1.5倍増の女王スマイルを炸裂させながら、冊子を四人の方へ差し出す。
 代表して亨が手に取り、訝しみながらページを開く。
 他の三人も開いたそこに目線を落とした。
 その瞬間。


ごぉ────ん… ごぉ────ん… ごぉ────ん…


 暮れに聞く、百八つの煩悩の鐘の音に似た音が四人の背後に、確実に流れた。←ちょっと待て
帰国子女。
 有定が印づけ、亨が開き、四人の視界に映ったモノ。
 彼らの“癒し”、彼らの“潤い”、彼らの“聖域”。
 坂本秋良氏の、『激・発禁物!千葉県警(猥褻物取締りが一番厳しい県警)がスキップしながら
やって来るぞ』的なあられもない姿がリアルに描かれていたのであった。
 生徒会室は、異様な沈黙に包まれる。
 如何程(いかほど)の時間が流れたのか、一分とも一時間ともつかないが、この部屋の異質な空
気を一掃する清廉な雰囲気が後光を伴って現れた。

「遅れてすみません。………ど、どうしたの!?みんな!」

 入った途端に感じた違和感と、遥かな世界の住人となりかけてる姫三人と御鷹、青を通り越して
白に近い顔色の執行部員達に、秋良は驚いて、己に一番近い場所にいる亨の肩を揺すった。

「亨?裕史郎?実琴君?御鷹君?」

「「「「…………………ぁあ?」」」」

「大丈夫?いったい何があったの?」

 白濁した意識の中、突然現れたるは愛し恋しや坂本秋良。
 心配そうに眉尻を下げているその表情は、先程脳裏に焼き付いた表情と重なって見えた。

 ──間──

 ボタッ

 ボタボタボタッ、と止めど無く流るるは深紅の液体。
 しかも亨のみならず、裕史郎と御鷹までもが顔のど真ん中から血を流し続けている。

「わーーっ!!三人ともどうして!?しっかりして!」

 満員御礼出血大サービスな三人に、秋良は慌てふためきながらもティッシュを差し出したり、生
徒会室常備の冷蔵庫から保冷剤を出したりと介護に回る。
 ナイチンゲール・秋良の世話虚しく、三人の鼻血は延々と流れ続けていた。

「実琴君、有定先輩、いったい何があったんですか?」

「なにって…」

「坂本様、お気遣い無用ですよ。彼らにはナニがあったんです」

「え?あ、あの、意味が…?」

「ようするに、彼らは若いって事です」

 満面の笑顔の有定に対して、秋良は困惑するばかり。
 原因を聞く秋良に対して、どう答えたら良いのか、皆目見当つかない実琴+執行部面々は、静
かに滂沱するばかり。
 鼻が血で詰まり、話す事が困難な三人は発禁物の残像が脳内を駆け回り、それどころではない。
 ある種の阿鼻叫喚図さながらの生徒会室に、有定の高貴な高笑いが響く。  怪我人(?)の応
急処置に忙しい秋良は、諸悪の根源でもある冊子に気づけず、甲斐甲斐しく血みどろの三人の世
話をする。
 それらを横にして何も言えずに泣く実琴達に、いいよ、と秋良はふんわり微笑んだ。

「大変な事があったんだろうから、言いづらい事なら無理して言わなくてもいいから。先輩方も無理
しないで結構ですよ」

 後光がさしたかのように心の底から、労ってくれているのが感じる秋良の言葉に、実琴+αの心
は一つとなった。

『あぁ、坂本様。(こんなキッツイ性質の方々に想われてる)貴方に、哀してると言えたら(むしろ訴
えれたら)いいのに………(静泣)』






終劇




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