【この想いを乗せて】 2月14日。 ついにこの日がやって来てしまった。 今日は世に言うバレンタイン・デー。好きな相手にチョコレートと共に自分の想いを伝える、男の子 にとっても、女の子にとっても、一世一代の大勝負の日………らしい。一般的には女の子から男の 子にチョコレートを贈るみたいなんだけど、最近は女の子同士で交換したり、自分のために買って きたり、男の子から女の子にプレゼントを贈ったりもするみたい。けど、やっぱり男が男へチョコレー トを贈る、っていうのはさすがに変だよね……。なんて思いながらも持ってきちゃってたりするわけ で……。 きっかけはほんの些細なこと。妹の冬姫が「秋ちゃんは好きな人にあげないの?あげたらきっと喜 ぶんじゃないかな?」と言ったからだったりする。本当はそう言われる前からずっと考えてはいた。 彼にチョコレートをあげることを。けれど、あげてもいいのだろうか。迷惑じゃないだろうか。という問 いかけが俺の頭の中をくるくると回り続けていた。そんな時に言われた冬姫の「喜ぶ」という言葉に 後押しされ、勇気を出して彼にチョコレートを渡してみようと思った。 夏ちゃんが友達から借りてきてくれたお菓子づくりの本を片手に、何度も失敗しながら出来上がっ たチョコレートは不恰好だったけど、ちゃんと本のとおりに作ったし、味も俺と冬姫の二人でちゃんと 確かめたから、問題はない……と思う。 本当に喜んでもらえるとは限らない。もしかしたら受け取ってすらもらえず、突っ返されて、拒絶され てしまうかもしれない。けれど、彼を『好き』だという俺の気持ちに偽りなんてないから。ちゃんと、あ りのままを伝えたい。 「あのっ………!」 俺の想いを、この甘い甘いチョコレートに乗せて、貴方に贈ります。 貴方はこの想い、受け取ってくれますか? |