『2度目の告白』 秋良に想いを告げ、はれて恋人同士となったオレ達。 恋人になったからといって、今までに無いサプライズが起こっているというわけではない。 けれど、何気ない日々がとても幸せで、心地良い。 これも秋良の癒しパワーを、毎日身近で浴びているおかげだろう。 だが、オレは今一つ腑に落ちない事があったりする。 今一つというよりかなり、気になっているのだけれども・・・。 その気になっている事、というのが・・・。 「はぁ?秋良に好きって言ってもらってないだって?」 そう、一度も言ってもらった事が無いんだ。 秋良の口から一度も・・・。 「ちょ、裕史郎声大きいって!」 「いや、だって・・・・亨、お前達恋人じゃなかったの?」 え、オレの勘違い? 「いやいや、恋人だよ。ただ、秋良から好きって言ってもらった事がないだけ。」 「え、じゃあ何。お前フラレタ訳?」 フラレタ悲しみを乗り越えるために、想像の中で付き合ってるわけ? 痛いなー亨。 「だから違うって!ふられてないよ!秋良からちゃんとOKもらったよ。」 それにオレは痛くない! 「じゃあ何で秋良から好きって言ってもらった事無いんだ?」 裕史郎は時々、と言うかいつも物事をストレートに聞いてくる。 無自覚でやってんのかこいつは。 「寧ろそれはオレが聞きたいよ・・・。」 「それもそうだな。」 告白した時は『うん』、と言っただけで好きとは言ってくれなかった。 そういえば、日常でも好きって言ってるの、オレだけだな・・・。 「亨、・・・・何かもうオレお前が可哀相に見えてきた。」 いつもイジメてごめんな。 今日辺りから少しだけ態度、改めるよ。 「可哀相とか言うなよ・・・、泣きたくなるだろ・・・。」 それに、今日辺りとか言わず今から優しくなれよ。 少しだけじゃなく、かなり態度改めろよ。 と言うか自覚してたんだな・・・・。 「あれ?亨に裕史郎、何してるの?」 二人して姫オーラも出さず、ドス暗いオーラを放っている矢先、話の中心人物の秋良が来た。 今は昼休みだというのに、姫二人以外誰も居ない教室。 二人の暗いオーラにやられたのだろう。 今が絶好のチャンスだ。 秋良にこの不安を打ち明けねば。 「秋良、あのさ・・・。」 「ん?どうしたの、亨?」 「オレ・・・秋良に聞きたいこと、あるんだけど。」 もし、あの告白の時オレが、急いて秋良の返事を聞きそびれてしまっていたとしたら。 もし、秋良に恋愛感情としての好き、が伝わっていないのだとしたら。 「どうしたの?急に改まっちゃって。」 伝わっていないのだとしたら、もう一度伝えなければ。 拒絶されるかもしれない恐怖は、あの時乗り越える事が出来たのだ。 今だって乗り越えられる。 「秋良、オレ・・・。」 「うん?」 拒絶されるよりも、今のあやふやな関係でいることの方が、ツライ。 「秋良、オレ・・・前にも言ったけど、秋良のことが好きなんだ。」 「うん。」 「恋愛対象として好き、なんだ。」 「うん・・・知ってるよ。」 優しく微笑んでいる秋良。 なんだ、ちゃんと伝わっていたのか。 「じゃあ秋良は?秋良はオレのこと、どう思ってるんだ?」 前はこれを聞き忘れたんだ。 一番大切なことを。 「・・・オレ?」 相手の気持ちを知らないで恋人になったなど、よく言えたものだと思う。 だけど今、やっとで秋良の気持ちを確認できる。 「オレは・・・・」 俯いていたオレの目の前に影ができた。 「オレはね、亨が・・・・大好きだよ。」 驚いて顔を上げると、息がかかる程近くに秋良がいた。 しかも、オレが望んでいた言葉よりもはるか上をいく、嬉しい言葉。 嬉し過ぎてオレは、前の告白の時よりも強く強く、秋良を抱きしめた。 オレも、大好きだよ・・・秋良。 **** あの二人が自分達の世界に入ってしまったので、教室を出ることにした。 廊下に出ると、校舎が違うはずの実琴がいた。 「よー実琴。何してんのこんな所で。」 「あ、四方谷。お前こそ、河野や坂本様と一緒じゃないのか?」 「あー・・・オレ、お邪魔虫なんだよなー・・・。」 「あ・・・あぁ、お邪魔虫・・・な。」 お邪魔虫で状況が解ったらしい。 実琴に解るくらいあの二人、解りやすい恋愛をしているのだ。 「実琴・・・昼まだだろ。食いに行こうぜ・・・。」 「あ、うん・・・。今日のメニュー、何だろうな。」 「冷し麺とか、・・・冷たいものがいいな・・・。」 「熱いからな・・・・。」 氷バケツ三杯くらい、あいつらにかけてやりたいと思った今日この頃・・・。 |