最近カッコ良くなった妹がふと言った一言。 糸の先 最近、秋良はよく左手を見ていると思う。 ふとした視線の先が手にいっている。 それは別に構わない。 秋良に見られているという事は、意識してくれているという事に他ならないからだ。 だが。 「秋良?」 呆けていた秋良に声を掛けるが、未だに視線は左手。 「左手がどうかしたのか?」 「え!?」 まさか… 「気付いているとは思っていなかったのだな」 「…あははは」 ばつが悪かったのか、秋良は乾いた笑いをこぼした。 それでも視線は左手に行っている。 「左手がどうかしたのか?」 もう一度同じ質問をすると、困った顔をしたものの呟くように話始める。 「オレの妹がね、赤い糸の話をしたから」 「赤いいと?…ああ、小指に繋がっているというやつか」 「うん、ちょっと気になっちゃって」 頬を赤らめて言う秋良に、頬が緩む。 気にかけてくれているのだと思うと、あの二人より優位に立っているのではないか と自信がでてくる。 「秋良」 なに?と小首を傾げる姿は愛らしく、またあの姫の姿を見てみたいとも思う。 だが、それは自分一人が堪能できればいいことだ。 会長用の椅子に腰掛けた秋良に近づき膝を付くと、少しこわばった秋良の左手を とる。 「私の手を見ていたと言うことは、気にしてくれているのか?」 「そっそれは…統威はカッコイイし、付き合っている人いるのかなぁって...」 「君に繋がっていると、私は思いたい」 ピクリと握っていた秋良の手が震える。 そのまま逃げてしまわないように少しだけ力を込めると、秋良の頬はさらに赤みを 増した。 「あの時、私は言った。これからずっと君のそばにいさせてくれないか、と。あの時 は、どんな形であれ傍にいれば拠り良いトップとして自分が成長できるのではない かと思っていた」 「統威」 徐々にうつむいていく自分の何か心地よいものが撫ぜる。 秋良が撫でているのだと解ると、余りの嬉しさに笑みがこぼれた。 「今は、運命の糸がつながっていると…そういう存在でありたい」 誘われるように秋良の左手の小指に唇で触れる。 「そして、いずれはこの指に…金の鎖を送りたい」 だから考えてくれ。 そう言いながらもう一度唇を違う指に唇をおとす。 あまりにも自分でいった言葉が恥ずかしく、そしてすぐに返事を聞くのが恐ろしくて 思わず退室しそのまま帰宅した。 明日秋良は私を避けないでくれるだろうか? ※ 指が熱い。 いや、顔も…と言うよりも全身が熱いが。 今自分の身に起こった事が現実か夢か、自信がもてない。 統威が、キスをした。 しかも自分の指に。 なんの話をしていたのか、そうだ赤い糸。 運命の恋人には赤い糸が小指同士で繋がっていると、妹がはなして…。 「とうい」 『運命の糸がつながっていると…そういう存在でありたい』 とは、つまり恋人になりたいということだろうか? 小指に羽根のように触れた唇の感触がまだ残っている。 そして。 『いずれはこの指に…金の鎖を送りたい』 小指の時とは違い、焦がれるように唇を押し付けられた左手の薬指。 発熱の元は十中八九この指だ。 「え?ええっと」 金の鎖。 触れたのは左の薬指。 「へっ?え?」 まて、ちょっとまて。 つまり統威は…。 「…どうしよう」 全然嫌じゃない。 と言うよりも。 「うわぁ」 明日、統威の顔をまともに見れるだろうか? |