さくらの花びら 散る度に
 届かぬ おもいが またひとつ
 そして
 いとしさと せつなさと 心強さと
 あなたに 感じる


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  さ く ら
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 桜前線、真っ只中。
 柔らかな陽光を受け、緩やかに散る桜に包まれたキミも素敵だったけど。
 夜に散る桜を二人きりで見たくて。
 キミを突然呼び出して、ここまで引っ張ってきた。
 偶然見つけた場所で、人気が少ないのに桜の木が植えられてる、絶好の花見ポイントの小さ
な公園だ。
 昼間は奥様方とちみっこ達で憩うであろうこの場所も、時間帯がかなり遅いせいか自分達以
外は誰もいなかった。
 人目がないのをイイ事に、ずっと手を繋いできたけど。
 この場所に着いた途端、示し合わせたかのように二人立ち止まってそこから桜を見ていた。

 折り重なるようにして植えられてる桜は、数にしてみれば十数本なんだろうけど。
 一本一本が大きくて。
 満開を迎えたそれらが、月の光をうけて淡く発光しながら散る様は。
 己の心に、儚さと、感嘆と、畏怖を叩きつける。
 こんな光景をキミと一緒に見れたことが、嬉しくて。
 とても誇らしくて。
 でも、言葉にするのが恥ずかしくて。
 「キレイだな」って言いながら散っていく桜の花から、キミに視線を移す。

「うん」

 地面に目線を向けたまま短く返事をしたキミは、桜の木を一度も見ていない。
 何を見ているのかと聞けば、キミはそこから目を離さず。

「桜。綺麗だよね」

 同じように下を向くと、人に踏み付けられて、ひしゃげた桜の残骸しかない。
 それでも、キミは。
 綺麗、と。
 桜に酔ったように、うっとりとしたように。
 迷いなく呟く。
















 ああ、カミサマ。

 この、心の奥底から突き上げるオモイは。

 なんと呼べばイイ?










 キミは。
 寒い冬を越え咲き誇る桜も。
 襲いかかるように降る桜も。
 踏まれて土で薄汚れた桜も。
 綺麗と言える。
 本質は一緒だと。
 寒さに耐え続け、我慢して、やっと咲ける忍耐も。
 風に吹かれ、呆気なく散ってしまう潔さも。
 役目は終わったとばかりに、見向きもされない侘しさも。
 全部見つめて。
 同じ桜だと。
 綺麗だと言えるキミ。





 キミが、僕を(俺を)(私を)受け入れてくれたら。
 どれだけ嬉しいことだろう、と思う。
 キミに愛されたなら。
 どれほど心強くなれるだろう、と思う。

 叫びたい、抱きしめたい、………独占したい。

 でも叶わぬユメ……今は、まだ。

 今は、どこまでも真摯で柔らかな、キミの隣りで。

 キミが綺麗と微笑むさくらを。

 一緒にみている。

 ほんの少しの胸の痛みと、共に居れる幸せを感じながら。









終わり




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