いつか君の隣に




放課後の生徒会室で日々の仕事をしている中、ふと秋良の様子を窺う。
まだ交代したばかりで仕事に慣れようと一心に書類とファイルを確認していて、
私が見つめているのに気がついた風は無く、秋良のそばに寄っても、一生懸
命やっている為かやはり向かない意識をこちらに向けたくて、
「…秋良」
聞こえるか聞こえないか位の声で名前を囁き、後ろからそっと抱きしめる。
腕の中にすっぽりと納まるサイズに、誰にも見せずそのまま温もりを感じ腕の
中に閉じ込めて離したくなくなる。
「どうしたの?」
見ていた書類等から意識を私に向け、少し困惑した風ではあるが、いつもの
河野たちとのやりとりの中で抱きしめるのと違い、2人きりでの突然の行動に
も秋良は嫌がりもせず、私の腕の中に納まっていてくれる事に安堵を覚えた。
秋良は全く気が付いて無いが、秋良を狙っている元会長や河野達も当然の
様に傍らにいれる事を自然に受け入れ、対等に話せる立場にいるからこそ、
想いを告げ心地良い関係が崩れてしまう事を思うと伝えられないでいる。
好意を抱いていてくれている事は日々の言動で判ってはいるが、それが事、
恋愛感情となると。
想いを伝えても、秋良ならばたとえ驚いたとしても対等な立場まで拒絶はしな
いであろうことは彼の人格をみていれば判る。
だが、
「統威?」
抱きしめたまま何も言わない私の言葉を身じろぎもせず待っていてくれている
愛しい存在。
その存在の横に、自分では無い誰かが並び立つのは耐えられそうにも無い。
抱きしめた所から伝えられない想いが伝わって、いつか同じ様に想いを返して
くれる様になればと・・・




BACK