**無自覚?** 生徒会選挙も終わり、ようやく一段落ついた今日この頃。 放課後の校舎内は、部活や勉強、委員会活動などに励むもので溢れていた。 生徒会も然り。我らが坂本様こと、坂本秋良は今日も癒しを与え、生徒会活動 を行う。 「えっと、じゃあ姫任務の伝達はこの位かな?何か質問はある?」 少し遠慮がちに、だが明確に。 秋良は会長になってまだ日は浅いが、その能力をいかん無く発揮している。 「はーい、御鷹はいつ帰るんですかー。」 と、亨姫こと亨は頬杖をついて秋良に尋ねる。 御鷹をけなして秋良が困った顔をしてしまうのは嫌なのだが、御鷹が秋良の傍 にいることはもっと嫌いだった。 「私の帰る場所は秋良のいる所だ。秋良がここにいる限り、私は一歩もここを動 くつもりは無い。」 「「ふっざけんな御鷹ー―!!!」」 当然の如く反発する亨と裕次郎。 赤面した秋良はまたか・・・という表情を浮かべて、少々疲労感が伺える。 (あーあ。結局また俺の出番か。) 「こらこら、三人とも坂本様が困ってるよ?いー加減にしなさい。」 笑ってはいるけど、目だけは全く笑っていないその微笑に不気味さを感じたの か。 秋良を困らせてしまったことの罪悪感からなのか、(多分両方)三人はピタッと 大人しくなった。 (全く、手がかかる・・・。いくら坂本様でも、これじゃあ疲労で倒れちゃいそうだ な。) 「あ、あの会長・・・」 「だーめ,俺はもう会長じゃないんだから。有定先輩、もしくは修也先輩ね?」 たしかにその通りなのだが、本当は名前で呼んでもらうなんて期待していなか った。 彼の性格上,恥ずかしがって言っては貰えないのは分かっていたからだ。 それでも後々のために、彼と更なる親睦を深めるのは必須だし、今から下準備 はしておくべきだろうと考え、そう口にした。 というか、ちょっとだけ,彼の照れたような,驚いた顔を見てみたかったのだ。 ・・・・それがどういう意味なのかは,よく自分でもわからなかったけれど。 「あ、えっと・・修也先輩・・・・その、ありがとうございます。」 「・・・・・!」 (全くこの子は・・・!) ダメ元で言ってみた言葉に,秋良はなんと答えてくれた。 しかも、超絶に可愛い、極上の微笑みと言うオプション付で!! (やばい・・・・何か柄にも無く胸がきゅんきゅんしてる・・・!) 姫にだってときめいたことの無いはずの自分が、なぜか今うるさい位に胸が高 鳴っている。 しかもその相手は、あの坂本秋良・・・。 「・・・?修也先輩・・・どうかしたんですか?」 上目遣いで、秋良が尋ねる。 (ああ・・・意外に睫毛長いんだな。唇もいい形してるし、肌も白い。) 御仏の如く、慈愛に満ちた癒しを人々に与えてくれるのは知っていた。 頭脳明晰、運動神経抜群、人当たりがよく誰からも好かれるのも知っていた。 本人が気にしているほど顔は悪くないし,よく見ると,あの坂本一家なだけある 容姿を持っているのも知っていた。 だけど、それだけだったはず。 なのになんだ,この高鳴りは。 知らぬ間に肩に乗せていた手に力がこもる。 具合でも悪いのだろうかと,変に心配して顔を覗き込もうとした秋良のせいで、 さらに顔が近くなる。 唇が,近い。 「「「うおっほん!!!」」」 御鷹と姫二人のあからさまな咳払いのせいで我に返った有定は、引き寄せて いた肩を離す。 顔が赤い気がするのは,多分気のせいじゃないだろう。 「・・・っで、伝達は以上なんだろう?なら俺は忙しいから今日はもう帰るよ。」 「あ、はい!!本当、いつも来てくれてありがとうございます。では気をつけて。」 最後の方は何とかいつもの調子を装ることができたが,秋良以外の人物は不 審な目で見ていた。 「・・・・おい裕次郎。」 「ああ・・・・面倒臭いことになってきたよね・・・。」 「・・・・秋良を渡すつもりは,無い。」 「??何,どうしたの皆して怖い顔してるよ?」 実琴と秋良は何が何だかわからないといったふうな様子でいた。 ああもう本当に,どうして気づかないのだろうかこの少年は。 自分の魅力に!どれだけ周りから愛されてるかって事に! そして、ついにはあの有定まで落としちゃったって事に! しかも、あんな極上スマイルまでプレゼントしちゃってさ!羨ましいったらありゃ しない。 「・・・っていうかさあ・・・あの有定先輩だよ?どうやって対処しようか?」 「うーん、元祖・復讐法だしね・・・・。」 「・・・・・・。」 話についていけない二人をよそに,三人の結構真面目な会議が始まった。 後日,胸の痛みがひかない有定が、 有定親衛隊の助言で秋良の教室にやってきたのは,また別のお話。 **END?** |