難攻不落を落とす為に…



一つの事を成す為の下準備は、案外大事だったりするものだ。
一手を打つなら二手三手先を見越して行う。

将棋・チエス・囲碁なども先を読まなくて勝利は無い。
そう…それは戦略の一種なのだから。

よく言うでしょ。持久戦に持ち込む時は、回復・補給経路を絶てとね。

日常生活でも同じ事。
坂本様を二代目坂本様と浸透させた経緯だって、実はその戦略に基づいたものだ。まぁ勘の良い彼は
その意図には気がついているだろうけどね。


それに坂本様を会長に仕立て上げようとしたのも、俺の中のプランの一つ。
だからね…初めは、何が何でも坂本様に会長になって貰おうと思っていた。
様々な危険要因の削除とか…糺とか春江それに越廼以外が聞いたら、かなり物騒に感じるかもだけど
…本気でやろうと思っていたんだよね。

でもね…途中で無風選挙になっちゃうって気が付いちゃったんだよね。
俺が手を下すまでもなく、案外生徒は坂本様に惹かれてたんだよ。
そうすると、あれこれ色々作戦を立てていた俺としては拍子抜け…ちょっぴり詰まらないと思ったんだ。


でさ、そんな俺にあの御鷹の登場。
インパクト…容姿…カリスマ性…正直利用する手は無いと思ったんだよね。

御陰で棚ぼた…坂本様の艶姿が見れたんだから…やっぱり無風選挙じゃなくて良かったね。

無風選挙じゃきっと坂本様の姫姿は見れなかったんだよね。
それは確信に近い予想。
まぁ選挙も終わった今だからこその結果論から言えば、あるべくしてあった結果かな…坂本様の姫化っ
てやつはさ。

何て言うの?御鷹と言う強力なインパクトを持ったライバルが現れたからこそ、隠し玉みたいな坂本様の
姫姿を見る事が出来たと言えるって訳。
まぁそれに至る経緯として、坂本様の応援が姫二人…河野及び四方谷両名だったと言うのが大きいの
だけどね。

誰しもが考えそうで思い付かない、坂本様の姫化。姫経験者ならではの荒業かな。

俺も彼と同じ立場ならそうした筈だっただろうしね。
何せインパクトを付けにはもってこいの手だからさ。

それと大事なのは、姫化してインパクトって言ったって…良い方向に流れないと意味は無い。
笑いを取るっていうのも有りと言えば有りだけどね…やっぱり目の保養は必要。
その点坂本様は本当に可愛いし癒し系でガッチリ民衆のハートをキャッチしちゃったんだろうけどね。


もう会長じゃないって言うのに、嘆願書の山が来たのは内緒の話。
そんなの知れたら、益々坂本様は姫の格好してくれないだろうしね。
だから内緒の話だよ。俺としても見たいけどね。

まぁ従順なNOと言えない日本人の典型ならば、容易に坂本様の姫姿を見れた事だろうね。
だが坂本様は、流される様に見えるが、かなり自分の意思を持っている。
簡単に頷いてはくれない…それに現会長だしね。

(サラッと「どうです姫に?」と冗談めかして言ってみたら、困った顔されて…やんわり断られたんだよね。
アレはアレで凄く可愛らしいかったけど…)

不意に坂本様とのやり取りを思い出しながら、俺は少し余韻に浸る。



そして、余韻に浸りながら大事な事を思う。

(だからと言って無理強いは好ましく無い。幾ら坂本様の姫の艶姿を見たくても、悲しい顔でそんな恰好
をされるくらいならば、見ない方がましだね…あくまでアノ坂本様での姫姿を望むんだしね)

実琴姫辺りがコレ聞いたら暴れそうだけど、俺としては無理強いさせて坂本様を姫にしようとは思わない
と言う事。
コレは重要な事だね。

だから、今回ばかり俺の作戦はかなり厳しい状況。

・無理強は無し

・あくまで自主的に

・穏やかなあの優しい微笑みを曇らせない

・勿論坂本様らしさは損なわせない

コレらを組み込みながらの、麗しの姿を求めるのは容易じゃ無いだよね。
力でゴリ押しって訳にはいかない…緻密でそれでいてさり気なく…上手い具合に誘導する事が絶対条
件だからさ。

「どうしたものかね…この難攻不落のお姫様の麗しの姿を見るには」

幾通りの作戦を考えながら…俺は隠し撮りされていた姫姿の坂本様の写真を見ながら誰に言うわけで
も無く言葉を漏らした。

「さてさて、パワーも充電したし…もう一踏ん張り頑張りますかね」

俺は難解な作戦を立てる作業に戻った。
全ては…あの麗しの姿を見るために…。


おわし




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