「坂本様って『白』だよね」
「へ?」



  イメージカラー


名田庄のテリトリーである被服室で、秋良は出されたお茶を啜っていた。
この現状になったのには勿論理由はあるが、名田庄のなんとも中途半端な言葉により秋良
は本題を言い出す事が出来なかった。

「いやね、前から思ってたんだけど、坂本様のイメージカラーは『白』だと思って」
「そうでしょうか?」
小首を傾げるさまも実に愛らしい、と言いたい所ではあるがそこはぐっと留まる。

「役柄というか、既に癖だけど。イメージカラーって結構重要でサ。姫三人にしてもほぼ系統
は統一してあるし。目の潤いだからねぇ、顔もそうだけど存在って言うのかな?映えるように
は配色しているんだ」
ゴスロリ専門と化している名田庄ではあるが、別にゴスロリだけを作っているわけでもない。
ただ、自分が張り切って作れるのがゴスロリであるだけなのだ。
そして、そんな名田庄が始めて秋良に会った時思った。
この人は『白』なのだ、と。

涙が出そうになるほどに柔らかな存在。
誰もが、そこに居続けたいと願ってしまうような場所。
聖母(はは)の体内に居るような、そんな甘く柔らかな人。

「凄いんですね、名田庄先輩」
ほう、と息をついて感心する秋良の姿はなんとも厭味が無い。
ここまで自画自賛すれば大抵は呆れるか、反論するか、とにかく相手を馬鹿にするものだ。
まぁ、自分を自慢している人間を素直に関心できる人も、そうは居ないだろうがそこが秋良
が「坂本様」と呼ばれる由縁だろう。

「さてと、なにかオレに頼みたい事。あるんでしたよね」
しかもプライベートで。

「はい」

何時に無く慎重な面持ちで秋良は名田庄の気の抜ける言葉を告げた。



「実は映画をみたいんです」




「…はぁ」
そんな真剣な顔をせずに見に行けばいいのでは?
ついそう言おうとしたが、なんとか喉で留める。

「ある人と見に行く約束をしたんですが、相手は言えないんですが…その男の人で、オレが
見たい映画でいいって事でその……見たい映画が『☆になった○年』なんです」
少し伏せた顔が赤らんで可愛いな〜とのんきに名田庄は思ったが、映画のタイトルを聞いて
はっとした。
男二人で見に行くには、少々抵抗があるものだ。
話題作で感動大作、原作も涙を誘うものだが男二人で涙ものを見るとなると…。
実に遠慮したい絵図になりそうだ。

そこで名田庄に頼みがある。

「なるほど」
話しを聞いて名田庄はにやりと笑う。
これはもしかすると、もしかするのかもしれない。


「オレに頼みたい事があるんですね」


こくりと頷く秋良。


「まかせてクダサイvv」

名田庄は、にやりと笑った。




数日後、秋良の頼みはきちんと叶う事となる。




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