『熱の余韻』





「ねぇ、寝てるの?」
 春樹は目の前に横たわる幸田に声をかけた。
 しかし返事はない。
「ねぇ、起きないと襲っちゃうよ?」
 さらに顔を近づけて、囁くように言う。
 今度は返事があった。
 ただし、寝息の。
「・・・スー・・スー・・・スー・・・・」
「・・・・・・」
 春樹の口元に、歪んだ笑みが浮かんだ。
 もう一度、最後の警告を。
「どうなっても・・・知らないからね?」




「んっ・・・ん?・・・・・んんっ!?・・・んうっ・・・・」
 幸田は、息苦しさに目を覚ました。
 それも当然だった。
 幸田の唇は、塞がれていた。
 訳のわからないまま、自分に圧し掛かっている男の胸を叩いた。
『放せ』という意思表示。
 さらに数秒―――幸田の酸素は奪われ続けた。
 あまりの苦しさに、失神してしまいそうになった頃、ようやく唇が解放された。
「はっ・・・ハア・・・・ハア・・・ハア・・・・・」
 体の自由は奪われたままだったが、とりあえず幸田は何度も息を吸っては吐
いた。少しずつ、意識がクリアになってくる。
「春樹・・・」
 自分の体を押さえつけている男の名を、怒りの混じった声で呼ぶ。
 しかし先程の息苦しさで潤んだ瞳では、いくら睨んでも迫力はない。
 名前を呼ばれた本人は、フンワリと嬉しそうに笑った。
 そんなに可愛らしい反応をされては、怒る気も失せてくる。
「寝込みを襲うとは、いい度胸だな。」
 幸田が呆れたように言うと、春樹はクスリと不敵に笑った。
「まさかこれで終わりだとか思ってるわけじゃないよね?」
「・・・は?」
 幸田の寝ぼけた頭では、言葉の意味を理解し切れなかった。
「わからないならいいよ。すぐにわからせてやるからさっ。」
 春樹の腕に再び力が入る。
「痛っ。」
 幸田は、さっき無理にでも起き上がっておかなかったことを後悔した。
 が、もう遅い。
「んっ・・・」
 再び塞がれた唇。
 全体重をかけられた状態では、幸田といえども逃れる術はなかった。
 まあ春樹の『あばら』を2・3本折るくらいの気であれば、あるいは逃げられ
たのかもしれない。
 しかし幸田には、そこまでして逃げようという気が起きなかった。
『愛』だ『恋』だという類ではないにしろ、少なからず想っている春樹だからこ
そ、受け入れても良い・・・そう思ったのか、幸田自身、思い返してみてもその
ときの気持ちはわからなかった。
 それでも1つだけ言えることは、重ねた体の熱が、決して不快なものではな
かったということ。
 そして激情のままに幸田を抱きながらも、幸田の体を気遣う一面を見せた
春樹が、なんだか妙に可愛かったこと。
 それが、それだけが、幸田の覚えている全てだった。


『幸田さん、俺は今日からガキをやめる。あんたが目を離せないワルになるよ』


―――ああ、待っている。
 幸田はそっと心の中で呟いた・・・。





                                           【END】





[後書き]
ギャーッ、すみません。2人とも偽者くさ・・・ゲフゴフッ。初黄金〜SSで、なぜ
か微エ○(爆)。おかしい・・・私にしては珍しくギャグじゃない(←そういう問題
か?)。だいたいまだ原作半分しか読んでないくせに、SS書いてること自体が
間違ってる・・・間違ってるよ、私(遠い目)。
原作の春樹の告白シーン(ええ、告白シーンです!)を読んで、萌えが一気に
燃え上がりました(洒落かい?/寒)。実は書いてる途中で、モロにエ○シーン
になりそうだったので、慌てて軌道修正しました(アホ)。ここまでなら、ギリギ
リ表レベルでしょう?<聞くな

では、恒例の(?)自爆ツッコミを。
1.このSS、舞台(場所)は一体どこ?→答.おそらく幸田さんの家。
2.このSS、一体いつの話?→答.さあ?(オイ)
3.このSS、最初は現在進行形で書いてるのに、何で急に無理矢理回想シー
ンになってるの?→答.エ○をごまかすため、強引に軌道修正したから(殴)。
はうぅー、色々ほんっとすみません!!

このSSは、素敵小説「黄金を抱いて翔べ」をすすめて下さった刹那様に捧げま
す。刹那様、こんなんですけど(汗)、よろしかったら貰ってやって下さいませvv
                               2003.5  ■紅月しなの■







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