My dear partner





  〜想い〜


 俺―町谷(まちや)―の相棒の『さくら』は、とても美人だ。
 線が細くて色白で。キレ長でいつも伏目がちな薄茶色の瞳も、その瞳と同じ色
のふんわりとした髪も。
 なにもかもがキレイで、俺はそんな『さくら』の何気ない仕草にドキドキする毎日
だ。
前髪をかき上げたときに一瞬見える憂いを含んだ瞳だとか、食事をしているとき
の紅く艶のある唇だとか、はたまたなにげに触れ合った指先の感触だとか。
 本当に俺はどうかしている。
 いっくら美人だからって、『さくら』は男なんだから・・・。
 ああ、こんな俺の心の内を知られたら・・・と思うと怖くてたまらない。『さくら』に
嫌われてしまったら、俺はもう二度と立ち直れないだろう。
 俺の望みは、いつまでも『さくら』の相棒で居続けることなのだから。



                        ☆



 私は沙倉という(名前は省略しておく)。
 私には町谷という相棒がいる。彼は明るくて素直でお人好しな好青年だ。いつ
も太陽のように温かく私を見守っていてくれる。
 優しくて・・・。でも彼は誰にでも優しいのだ。
 そう。彼は別に私でなくとも良いのだろう。私には彼しかいなくとも、彼にはたく
さんの友人や仲間がいる。
 スポーツ万能で、日に焼けた顔がキリリと凛々しくて。
 そんな彼は当然モテる。
 私は男だ。そして町谷も男だ。幸か不幸か私は女のような容姿をしてはいるが、
とにかく性別は男なのだ。
 このハンデは大きいと思う。でも私は町谷に私だけの町谷になって欲しい。こ
んなことガキの独占欲と思われるだろうけど、それでも私は町谷が欲しい。ずっ
とずっと私だけの町谷でいて欲しい。
 そのためにはどうしたらよいか。私は考えた。考えて考えて・・・。
 そして・・・、誘惑することにした。
 精一杯色っぽい目をして見つめてみたり、偶然を装って体のどこかに触れてみ
たり。今のところその成果が現れているかどうかはわからないが、少しは町谷も
気にしてくれていると信じたい。
 本当はこんなバカなことをして、反対に嫌われてしまわないかという不安もある
が、それでも私はやる。やると決めたんだ。
 だってずっと町谷の相棒でいたいから。





  〜誓い〜


 さくらにキスをした。
 よくわからないが、自然にそうなった。
 うまい具合に(?)あたりに人気はなく。芝生に寝っ転がって昼寝をしていたさく
らの髪に、埃が付いていて。それを取ろうとしてかがみ込んだら、さくらが目を開
けた。
 その瞳があまりにも近くにありすぎて、俺はそのまま吸い込まれそうな気がした。
 気付いたら、ずっと見つめ合ったままで。俺はなぜだか何かに導かれるように、
そのままさくらに覆い被さっていた。
 さくらは抵抗もせず、ただじっと黙って色っぽい眼差しで俺を見つめていて。
「さくら。」
 と俺は一度呟いたと思う。
 するとさくらは、またそっと目を閉じた。
 それは無言の誘惑。
 俺はさくらに口付けた。甘い甘いさくらの唇は、少し震えていた。けれどさくらの
右手がぎゅっと俺のシャツを掴んでいたので、俺は勇気を出して、一度離した唇
をもう一度さくらのそれに押し付けた。
 今度はさっきよりももっと深く口付ける。さくらが受け入れてくれたときは、目眩
がするほど嬉しかった。
 この日のこのキスこそが、俺たちが永遠の相棒だという誓いであることを、俺は
信じて疑わない。―――俺たちはずっと一緒だよな、さくら。



                       ☆



 町谷とキスをした。
 寝たフリをしていたら、隣りの町谷がこっちを覗き込んできた。目を開けてみた
ら、すぐ目の前に町谷の澄んだ黒い瞳があった。
 私はその近さに驚いて、でも嬉しくて、気持ちが少しでも伝わるようにと精一杯
見つめ返した。
 今日ばかりは神様も私の味方をしてくれたのか、町谷もずっと私を見つめたま
まで。いつものように「なんだ〜?俺があんまりカッコイイからってそんなに見つ
めんなよ。照れちゃうぜ。」というような軽口は返ってこなかった。
 かわりに、なんと信じがたいことに、町谷は私を抱きしめて・・・というか私は寝
っ転がっていたので、町谷が私の上に覆い被さってきたのである。
 私はもう、まさか町谷が私にちょっとでも欲情してくれたなんて信じられなくて。
びっくりして嬉しくて、とにかく目の前にある町谷の瞳を捕まえておくのに必死だ
った。
 すると町谷が、「さくら。」と私の名前を呼んだ。優しい優しいその声に、私はうっ
とりとして目を閉じた。
 その後のことはよく覚えていない。
 とにかく町谷の唇がゆっくりと降ってきて。私は嬉しさのあまり少し震えていたと
思う。夢中で町谷のシャツを握りしめていたような気もする。
 二度目のキスは激しくて、私は必死で町谷のあとを追いかけた。絡み合う舌は
とろけそうに甘く、そして熱かった。
 この日のこのキスを私は忘れない。だってこれは、私と町谷の『永遠』という名
の約束なのだから。―――これからもずっと一緒にいようね、町谷。





                                           【END】








[後書き]
グハーッ、何ですか?これは・・・(←自分で書いといてこのコメントか?)。
実はこれ、めちゃくちゃ古いんです。やっぱり8年くらい経ってるのかなぁ??(遠
い目)あんまり古すぎて何年前かも定かではありません、はい。悲惨な文体にど
うしようかと思いながら、手直しせずに載せてみました(ドーン)<ヤケクソ
一応以前と違うのは、漢字変換を増やしたくらい(苦笑)。文章云々の前に、この
SSがどうしようもなく砂吐けそうに激ドロ甘なのは、実はこのときのテーマが『甘
々を書く』というものだったからです。昔の私は、なんと信じがたいことに(?)甘
々というものを書けない奴でした。で、これは練習として思いっきり頑張った結果
だったわけです(笑)。頑張った甲斐あってか、当時文通して頂いていた文章書
き様と相方の遼ちゃんに、それぞれ90点以上(もちろん甘々度が/笑)を付けて
もらった覚えがあります。
このたび、遠い昔の原稿(当時はワープロ打ちでした/古っ)を発掘して載せたの
は、久々に「字書きさんに100のお題」の方で、この町谷&沙倉を登場させたこ
とがきっかけでした。せっかくだからこの2人のなれ初めも載せよう!と思ったの
が運のつき。これを読み返す&打ち込みするのは、かなり勇気がいりました。後
書きを書いている今でも、本当にこれ、載せてもいいのかしら・・・?と往生際悪く
思っている次第です(苦笑)。紅月の初期作品、読んで笑ってやって頂ければ嬉
しく思います////






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