『そんな風に呼ばないで』




「なぁ、サンダー。」
 十代の呼びかけに、万丈目は眉間に皺を刻んで振り返った。
 そして、ゆっくりと息を吐く。
「その呼び方…いいかげんやめないか?」
 諭すように言ってみるが、
「なんで?」
 もちろん効果はない。
「フー……いや、もういい。」
 あっさりと諦めた万丈目。これも学習能力の賜物か。
 しかし十代の方は納得がいかない。
「え〜?よくないって。サンダーがやだって言うなら……う〜ん………準?」
「!?」
 いきなり名前で呼ばれて、万丈目の心臓がドキーッンと音を立てて跳ねた。
 その衝撃は凄まじく、一瞬で万丈目の顔が真っ赤に染まる。
 思わず下を向いて顔を隠そうとするが、すぐに十代に覗き込まれて不発に終わ
った。
「うわぁ〜っ、顔真っ赤。大丈夫か?準。」
「準、準と、人の名前を気安く呼ぶなーーーっ!!!!!」
 照れの度合いが許容を超えて、ついにキレてしまった万丈目であった―――。



 その後、万丈目のことを「準」と呼ぶ十代と、そう呼ばれて怒鳴り散らす万丈目
の姿が、あちらこちらで目撃されたという。




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