あれから3ヶ月。 カイ・レイ・マックスの誤解はまだ続いていた―――。 『絆』―パートU― 「仁兄ちゃん。」 「ん?何だ、タカオ。」 「俺、兄ちゃんに相談があるんだけど・・・。」 その言葉を聞いた瞬間、木ノ宮仁はだらしなく頬を緩ませた。 可愛い可愛い弟が自分を頼ってくれている―――その事実は、正直バトルに勝つこ との何万倍も嬉しい。 すっかり浮かれきった仁に、しかしタカオの相談事は痛かった。 何故なら、タカオの悩みを作ってしまったそもそもの原因は、仁自身だったのだから。 タカオはこう言った。 「俺、なんかこの頃、カイにもレイにもマックスにも避けられてるみたいなんだ。それに 3人とも、なんか俺のこと遠巻きに見てるっていうか・・・。何でだろう?兄ちゃん。俺な んか悪いことしたのかなぁ・・・?」 悲しそうに言うタカオに、仁の罪悪感は増してゆく。 そうして世界一弟に甘い兄は、心の中である1つの決意を固めるのであった・・・。 翌日――― 仁は人知れずカイを呼び出した。 場所は、人目につかぬよう、ある廃工場の中。 待ち合わせ時間きっかりにカイは来た。 「やぁ。よく来てくれたね、カイ。」 「フン。いきなりこんなところに呼び出して一体何の用だ?」 不機嫌を隠そうともしないカイの声。 しかしそんなものにビビる仁ではない。 「まあまあ、そういきり立たないで。」 「早く用件を言え!」 「フゥ。実はタカオのことなんだけど・・・。」 「き、木ノ宮がどうした!?」 途端にカイの顔色が変わった。 その素直な反応に、仁はそっと心の中でほくそ笑む。 我が弟はやはり愛されているらしい―――。 これは喜ばしいことのはずなのだが・・・仁にとっては複雑だ。 「単刀直入に言う。カイ、君は俺とタカオのことで、何か誤解していることがあるんじゃ ないのか・・・?」 「!? ご、誤解だと?」 しばらく経って――― 廃工場を後にするカイの口元には、いつもは見られないような穏やかな笑みが浮か んでいた・・・。 その日の午後――― 仁はマックスを呼び出した。 今度は街の外れにあるめったに誰も立ち入らない森の中に。 マックスは約束の時間に5分ほど遅れてやって来た。 「Hi!遅れてソーリーね。」 「いや、たいして待っていない。」 「ところでこんなところに呼び出して何の用ね?」 「ああ、実はタカオのことでレイから何か聞いてるんじゃないかと思ってな。」 「!?」 マックスの顔色が変わった。 カイ同様、やはり誤解をしているらしい。 「ど、どういうことね?」 仁はコクリと1つ頷いて、 「アメリカ人の母親を持つマックスならきっと理解してもらえると思うんだが・・・」 「ホワット?」 「俺とタカオは―――」 しばらく経った頃――― 「Oh!それは本当ね?」 マックスの嬉しそうな声が森の中にこだました・・・。 さらにその日の夜――― 仁は最後の1人―レイ―を呼び出した。 今度は夜も遅いということで、待ち合わせ場所は公園。 「あなたから呼び出しとは珍しいですね。」 仁が待ち合わせ時間の10分前に公園に行くと、そこには既にレイがいた。 そして開口一番が先程の挑戦的な一言であった。 まあ当然といえば当然だろう。 3ヶ月ちょっと前、仁にタカオとのキスシーンを見せつけられて以来、まともに顔を合 わせるのは今日が初めてなのだから・・・。 「わざわざ来てもらって悪いな。実はタカオとのことで話しておきたいことがあって。」 「タカオとのこと?」 「ああ。レイ、君は誤解しているんじゃないだろうか?タカオと俺の関係について。」 「誤解!?誤解だって言うんですか?あなたとタカオが・・・その・・・ただならぬ関係 だということが。」 「ああ、誤解だ。ただ、タカオは昔から俺によく懐いてくれていて、俺もそんなタカオが 可愛くて仕方なかった。それでついつい甘やかしてしまって・・・まあその、今に至ると いうわけだ。」 「どういうわけですか!?」 仁の要領を得ない話に、思わずレイがツッコむ。 (ノロケるために俺を呼び出したのか?この男は・・・。) 怒り心頭のレイを尻目に、仁はあっさりとこう続けた。 「つまり俺たち兄弟は、昔からスキンシップがかなり激しくてな。キスなんかも挨拶代わ りにしてるというわけだ。」 「へーーえ・・・・そうです・・・かっ!?って、ええぇっっ!?なっ・・なっ・・・」 驚きのあまり、口をパクパクさせてもはや言葉が続かないレイに、仁はにっこりと笑い かけて、 「どうやら誤解は解けたようだね。まあそういうわけだから・・・それじゃ!」 そう言い残すと、さわやかにその場を後にするのであった・・・。 翌日――― タカオは、カイ・レイ・マックスの3人に囲まれて、談笑していた。 時折、ベイバトルを交えながらの楽しい時間―――。 約3ヶ月ぶりのその自然な仲間との交流に、タカオの口元には絶えず幸せそうな笑 みが浮かんでいた。 その様子を物陰からそっと見つめる兄―仁。 その口元にも、やはり優しく慈愛に満ちた笑みが浮かんでいた・・・。 こうして何もかもが元どおりに上手くいった―――はずだったのだが。 それからもタカオと仁のスキンシップは変わらず、結局、カイ・レイ・マックスの焦燥 と不安の日々は、これからも続くのであった。 そう。兄弟の『絆』は、何よりも強いものなのだから―――――。 【END】 [後書き] 『絆』―パートU―でした!!これでほんとの【END】ですvvいやー楽しかったです♪ 兄弟愛<そこか(笑) 仁兄ちゃんってば、自分で原因作って自分で修復して・・・大 活躍!?(違)それもこれもタカオへの愛ゆえなのね〜ということで、わかってあげて 下さい(笑)。最後はやっぱり仁兄ちゃんの勝利で!!だってこのSSは、『仁&タカオ ←カイ・レイ・マックス』ですから(この構図ってほんと変ですよね、変/爆)。 次にベイSS書くときは、どのCPにしよう?もし何か書いて欲しいっていうCPがあっ たら教えて下さいvv(あっ、もちろんタカオちゃん受で)ある意味、本気で『仁×タカ』 もオッケイですよー(←それ自分が書きたいだけだろ!?)。 最後になりましたが、前作の『絆』を読んで続きを読みたいと言って下さった美穂様 (お名前出しちゃってすみません)、本当にありがとうございましたーvvこのSSを書け たのは美穂様のおかげです!こんなんですけど、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいで す(>_<) |