『キスの意味』
合宿半ばのある昼休み。
昼食を終えた坂本轍平(てっぺい)は、木陰で居眠りをしていた。
そこへひょっこりと五代晃がやって来た。
人の気配にふと目を開いたてっぺいは、ぎょっとなってそのまま固まってしまう。
目の前―わずか10センチ足らずの距離―に、五代の顔があったからだ。
「おっ、起きてた。」
顔を近づけた状態のまま、五代がのん気な声を出す。
「ほえ?」
てっぺいは相変わらず固まったまま、意味不明な言葉を発した。
「いやー寝てるのかなー?と思って。」
ようするに寝てるかどうか確かめるために顔を覗き込んでみた・・・と五代は言いたいらしい。
てっぺいは至近距離で見つめられるこの状態に耐え切れず、わざとぷぅっと拗ねた顔をしてみせた。
「寝とったら、五代が来たから目が覚めたとよ。」
「そりゃー悪かった。」
全く悪びれた様子もなく、五代が言う。
“そ、それにしてもなしてこんなに近づきよると?”
だんだん恥ずかしくなってきたてっぺいは、自分から離れることを試みる。
が、あっさり五代に両肩を木に押し付けられて、動くことを封じられてしまった。
「な、なん・・・?」
うろたえるてっぺいの耳元で、五代が囁く。
「坂本って・・・キスしたことある?」
「はにゃ?」
またまた変な声を出すてっぺい。
頭の中では、ただひたすら『?』マークが踊っている。
五代は予想通りのてっぺいの反応に、くすくすと楽しげな笑いを漏らした。
そして――
五代の顔が見えなくなったと思ったら・・・唇に何かが押し付けられて。
てっぺいは何が起こってるのかわからず、呆然と目を見開いた。
すぐに顔を離した五代は、そんなてっぺいの様子に“ファーストキス”であったことを悟り、満足
そうに微笑んだ。
幸せ気分で立ち上がった五代に向かって、やっと我に返ったてっぺいの悲鳴が炸裂する。
「ご、五代ーっ。いきなり何しよると!?」
「何って・・・キス。」
「だだだっ・・・だからなしてそっ、そっ・・・・・」
口をパクパクさせてあとの言葉が続かないてっぺいに、
「何でって・・・おしえない。」
にやりと笑って、意地悪く返す五代であった・・・。
“俺だけが『好き』なんてのはズルいからな。坂本にももっといっぱい悩んで俺のことを考えてもら
おう。”
そんな五代の心の声を、純粋培養のてっぺい少年が知る日は、果たしてくるのだろうか・・・?
【END】
すみません。勢いにまかせてやってしまいました・・・(爆)。
ちなみに私は関西人ですので、てっちゃんの台詞は全て適当です(←オイ)。変なところがあっても
見逃してやって下さい(←もしくは優しく教えてやって下さい)。
あと“ファンタジスタ”では、五代×てっぺい一押しのてっぺい総受けってかんじの私です(←んな
ことどーでもいい)。
↑ というのが、書いた当時の後書きでした(笑)。ちなみにこれ書いたの2001年の7月ですよー(古)。
もうずーっとイタリア編が続いてて、五代の出番もなくなりましたよね。今はてっぺいちゃん日本に帰
って来てますが、森川と沖田は出てるけど、五代は・・・(泣)。ま、まあそんなこんなで懐かしい気持ち
で焼き増ししてみました(逃)。