『君と酒と偽りと 3』






 あの夜。
 龍麻は酔っていたわけではなかった。
 というより、龍麻は実は“酒豪”なのである。
 たまに一緒に飲んでいる京一も、さすがにそんな限界まで共に飲みふけったことは
今まで1度もなかったので、そのことは全く知らない。
 知っているのは本人だけなのだ。
 酔ってもいなかった龍麻が、京一を拒まなかった理由など1つしかなくて・・・。
 でもここで龍麻は、ただ1つ大きな勘違いをしてしまう。
 それは・・・京一が比良坂のことで悩んでいる自分に同情して、慰めたくて、それで
自分を抱いたのだろうと思い込んでしまったことである。
 普通それだけの理由で男が男を抱けるわけがないと考えるところだが、龍麻はそ
れすらも酒に酔っていたせいだと曲解してしまった。
 自分は京一を愛しているが、京一はただ自分を慰めたくて抱いただけ。そう思った
ら悲しくて、ただもうなかったことにするしかないと思った。そうすれば、今まで通りの
相棒できっといられるから・・・。
 そう判断したのは、実は翌朝、京一が目を覚ます前のこと。京一より先に目を覚ま
していた龍麻は、そう考えをめぐらせ、静かに寝たふりをして、京一が起きるのを待
っていたのであった・・・。


 京一を学校に追いやったあと、龍麻は静かに京一の家から出て行った。むろん、1
人暮らしの自分のアパートに帰るためである。
 京一に「ここにいろ!」と言われたときから、すでにそんなつもりは毛頭なかった。
一時とはいえ、甘い時間を過ごした場所。そんなところにずっといたら・・・自分は狂っ
てしまうかもしれない。
 そう思った。
 酒が入っていたおかげで、初めてにしてはそれほど腰にダメージもなく、なんとか歩
ける程度に回復していたことは、龍麻にとって幸いであった・・・というのは余談である
が。



 それから数日――はたから見るかぎり、2人は今までと変わらぬ友人関係を続けて
いた。
 さらにそれから3週間――はたから見るかぎりは以下同文だが、龍麻の心はせつな
さを増し、京一にいたっては、もう感情が爆発寸前の状態となっていた。
 そして・・・ついにあの夜から1ヶ月と3日目の放課後。龍麻をほぼ拉致する勢いで、
自分の家へと連れて行く京一の姿があった・・・。



「イッ、イタイ・・・京一っ。離してってば。」
 龍麻が必死に抵抗を試みる。
「ダメだ。離したら・・・ひーちゃん、帰っちまうだろ?」
「・・・・・。」
 龍麻は諦めたように、フゥと小さくため息を吐いた。
 京一の家に着くと、龍麻はおとなしく上がり込んだ。
 お互い床に腰かけると・・・しばらく無言で見つめ合う。
 先に口を開いたのは、龍麻だった。
「で?何か用?京一。」
「用?じゃねぇだろっ。龍麻・・・おまえ本当にあの夜のことなかったことにしちま
う気か?」
 凄味のある京一の声。
「あの夜のこと?」
「とぼけんなっ。俺と寝たことだよ。それとも何かっ?ひーちゃんにとってあのこと
は単なる遊びにすぎなかったってことなのか?」
 悲しそうに声を張り上げる京一。
 龍麻の瞳が揺れる。
「遊び?そんな・・・。それより京一の方こそ、俺がかわいそうだから抱いたんじゃ
ないのかよ!?」
 一瞬、京一がポカンと間抜けな顔をする。
 龍麻の言葉をゆっくりと頭で反芻して・・・
「なっ・・・かわいそう?何言ってんだ。んなもん龍麻のこと愛してるから抱いたに
決まってんじゃねーかっ!」
 告白・・・にしては、ずいぶんケンカ腰だが、間違いなくこれは、京一から龍麻へ
の愛の告白であった。
「えっ?」
 龍麻の時が一瞬止まる。
「うそっ!?」
 龍麻は口許にあてた手を震わせながら・・・京一を呆然と見つめた。
「ほ、本当に?本当に俺のこと・・・?」
「ああ。好きだ。誰よりもひーちゃんのことを愛してる・・・。」
 真剣な京一の瞳。
 龍麻の瞳から、ポロポロと銀色の雫が流れ落ちた。
「京一。俺も・・・俺も好き。京一のこと・・・愛してる。」
「龍麻・・・。」
 京一の表情がパアッと輝いて・・・ふいに少し翳る。
「でっ、でも・・・じゃあ何であんとき“忘れて?”なんて言ったんだよ!?」
「だっ、だって・・・京一が俺に同情して抱いてくれたのかと思って・・・。それに
京一酔ってたし。だから、一夜の夢だと思って忘れてしまった方がいいんだって
・・・。」
「バカだな。俺は酔ってなんかいなかったぜ。」
 優しく微笑みながら京一が言う。
 えっ?そうなの?と驚きに目を丸くして・・・
「実は・・・俺も全然酔ってなかった。」
 龍麻も言う。可愛くちょっぴり舌を覗かせながら・・・。


「ひーちゃん。」
 京一が龍麻をゆっくりと引き寄せる。
「京一。」
 龍麻もそのまま京一にぎゅっとしがみつく。
「今度こそ・・・忘れたなんて言わせないからなっ。」
「うん。忘れられないくらい・・・めちゃくちゃにして?」
 不敵に光る艶っぽい瞳に見つめられて。
 京一の理性が瞬時に砕け散る。
「ああ。その言葉・・・後悔すんなよ?」
 もつれあって、2人ベッドに倒れ込む。
 甘い吐息が重なり合って・・・


 これからが、2人の本当の始まり―――





END






うわ〜っ、古っ、なつかしー(コラコラ)。いやもう・・・コメント不可ってかんじで(汗)。
私、魔人では断然「主受(龍麻受)」派なんです!(今でもラブvv)で、好きなのはも
ちろん(?)京一vv愛してるよー、京一っ!!(叫)ゲームまだしたことのない方は、
ぜひ1度プレイしてみて下さいませ(っつーか、したことない人はこのページを開いて
ないと思う・・・/爆)。
女の子キャラも可愛いですけど、とにかく京一をオトして下さい(笑)。クリスマスにラ
ーメンデートは外せません(何語ってるんだか・・・)。朧の京一エンディングは感動で
泣けますよ!(だから何を語って・・・)。あっ、話逸れまくりましたが、このSS(3部作)
は、過去に某ステキ魔人サイトの管理人N様に捧げたものの焼き増しとなっておりま
す(ので、持ち出しは禁止とさせて頂きます←誰もしないって)。まあもう時効と言えば
時効なんですけどねぇ(古すぎるから)。
しっかし、この頃からシリアス書こうとして失敗してるの何でだろう〜?(このエセシリア
ス書きめ)



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