いつも賑やかな鉄生クンが、ふと静かになることがあって。 そんなときは決まって遠くを見ている。 君は一体、何を――誰を――想っているの・・・・? 君の横顔 お昼休み、陵刀は鉄生を探していた。 「あっ、瀬能さん。鉄生クン見なかった?」 「いえー、見てませんけど。」 「そう、ありがとう。」 ・ ・ ・ 「あっ、鞍智君。鉄生クンどこ行ったか知らない?」 「岩城ですか?いやー見てないですね。あっ、そう言えば・・・休憩時間にな ると同時に、犬を連れて外に出てったみたいでしたけど・・・。」 「そうなんだ。ありがと、鞍智君。」 「いえいえ。」 ―――外・・・鉄生クンが外に出たとすれば、考えられる場所はただ1つ。 ―――あっ、いたいた。 陵刀の予想どおり、鉄生は中庭にいた。 ベンチに腰かけ、ボーッと空を見ている。 近付いて、「鉄生クッ・・・・・」声をかけようとした陵刀は、途中で言葉を飲み 込んだ。いや、無意識に言葉を失ってしまっていた。 鉄生の表情を見てしまったから。 寂しいような、切ないような、悲しいような―――いつもとは正反対の負の 感情が溢れる表情・・・。 空を映すその瞳は、確かに目に見えぬ誰かを映し出していた。 彼の心の中に住む―――誰かを。 そんな鉄生をこれ以上見ていたくなくて、陵刀は無理矢理違うことを考えよ うとする。 (そう言えば、犬クンは・・・?) 見ると、『犬』は鉄生の膝の上に蹲っていた。眠っているわけではないのに、 ピクリとも動かず、鳴こうともしない。 『彼』には鉄生の気持ちがわかっているのかもしれない。 鉄生が想う『誰か』を、犬も知っているのだとしたら―――? 自分だけが知らない鉄生の過去。 そのことが陵刀の胸を知らず締め付ける。 (鉄生クン・・・) 次の瞬間、陵刀はクルリと向きを変え、もと来た道を戻っていた。 ただただこれ以上鉄生が、他の誰かを想う姿を見ていたくない・・・理由は それだけだった。 しばらくして、ふと立ち止まると、口の中に苦い味が広がった。 手で唇に触れると、唇が切れていた。 自分が唇を噛み切っていたことにも気付かないほど動揺していたのかと思う と、陵刀はあまりの情けなさに―――笑った。 「アハハハッ・・・」 笑って―――笑って―――自己嫌悪して。 明日からはもう一度、新しい自分になって。 ―――鉄生クンにアタックしよう。 負けられない・・・見知らぬ『誰か』なんかには。 明日からはもう一度、強い自分になって―――――。 【END】 [後書き] あうぅ・・・すみませぬ。本領発揮(違)のエセシリアスになってしまいました (滝汗)。陵刀先生、暗いー。そして可哀相(苦笑)。陵刀先生スキーの皆様、 本っ当にごめんなさいっ!!どうか今見たことは忘れて下さい(笑) 実は今回は、タイトルから先に決めました。で、書き始めたら・・・タイトルと 繋がらない話になってしまいました(←じゃあタイトル変えろよ?)。 ほんとは鉄生クンと陵刀先生の会話メインにしようと思ってたのに、どこをど う間違ってしまったのでしょう?パロって不思議(←殴)。 鉄生クンが想っている『誰か』とは、もちろんあの方です(笑)。見知らぬ相手 に嫉妬ゴーゴーの陵刀先生に愛!!というわけで(?)、陵×鉄というより、 むしろ陵→鉄SSでした・・・(逃) |