024.ガムテープ

サブタイトル 『終わらない夜―ガムテープの使い道―』 by紅月しなの

                                       ワイルドライフ : 陵鉄


「ねぇ、鉄生クン。」
 思えば、名前を呼ぶその声音がすでに怪しかった。
「なっ、なんだよ?」
 ちょっと引き気味の鉄生に、陵刀はにっこりと微笑みかけた。
 ―――こ、怖っ!
「ガムテープって、どんなことに使えると思う?」
「・・・は?」
 目が点状態で固まる鉄生を含み笑いで見つめる陵刀。
 この瞬間、2人の戦いの火ぶたは切って落とされたのであった・・・。





 ここは陵刀の自宅―高級マンションの一室―である。
 その時点で、すでに鉄生はピンチだった。
 ハッと我に返った鉄生は、そろりそろりと床を後退していく。
 やっとリビングのドアの前に辿り着いた鉄生は、ガバッと起き上がりざま「犬っ、帰る
ぞ!」と叫んだ。
「ワウ!」
 犬がターッと隣りに駆けて来て―――
 さあ部屋を出ようとした瞬間。
「どこに行くのかな?」
 ガシッと腕を掴まれた。
「どっ、どこって・・・帰るに決まってんじゃねぇか!」
 ちょっとどもりながら言う鉄生は、明らかに押され気味だ。
「ふぅーん。帰れると思ってるんだ?」
 ―――ゾッ。
 鉄生の背筋にうすら寒いモノが走る。
「ワゥゥー。」
 犬も主人の気持ちに同調するように、心細げに鳴いた。
「さっきの質問にまだ答えてもらってないよね?」
「さっきの質問?」
「うん、ガムテープの使い道についてvv」
「ハ・・・ハハハ・・・・」
 気付けば、鉄生はまたリビングのソファまで引きずり戻されていた。
 犬は?と探すと、リビングの外に締め出しを喰らっている。
 どんどん絶望的な状況に陥っていく鉄生。
 まあたとえ犬がこの場にいたとしても、陵刀の恐ろしい一言でひれ伏すことは目に見
えていたのだが。
「答えがわからないなら、ヒントをあげようか?もちろん実践込みでvv」
「けけ結構です!」
 慌てて後ろに飛び退いたのは、いつの間にか陵刀の顔が至近距離に迫っていたか
ら。
「ガッ・・・ガムテープっつったら、貼るに決まって・・・・・。」
 陵刀の気迫(?)に押されて、鉄生はとりあえず回答を述べた。
「フフ・・・それから?」
「そっ、それからって・・・ガムテープの使い道に貼る以外何かあるのかよ?」
 秘技質問返し。
 のはずが、逆にこれが鉄生の敗北を決定づけた。
「知りたいんだー?」
「い、いや・・・」
「じゃあ教えてあげる♪」
「いや、だから・・・・」
「ガムテープは―――」
(だからいらねぇっつってんだろーーっ!!)
 もはや鉄生は心の中で叫ぶだけ。
 続けて陵刀が発した言葉に、鉄生が絶句するのは、それから3秒後のことだった。


『ガムテープは、縛るっていう使い道もあるんだよ♪――鉄生クン、試してみる?』



 その夜、鉄生は帰してもらえなかったらしい・・・。





                                              【おしまい】








「100のお題」では、初のワイルドライフです!やはりまずは基本の(?)陵鉄から。
ガムテープというお題を見た瞬間、なぜか陵刀先生しか思い浮かびませんでした(爆)
陵鉄というCPは、デキてない方が書きやすい気がします。追う陵刀センセと追われる
鉄生クンvvそんな2人がとても好きです(笑)。相変わらずのギャグでしたが、実は書
いてて結構楽しかったです♪(犬ちゃんも書けたし<そこか!)




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