009.かみなり
サブタイトル 『邪魔をするな!』 by紅月しなの
ノンジャンル : オリジナル
「空、真っ暗だね。」 「ああ、この分じゃ一雨くるな。」 「うん、急いで帰らないと。」 「・・・・・・・」 「町谷?」 「ん?ああ。・・・・・沙倉、俺ん家来るか?」 「えっ!?・・・・・・・う、うん////」 あれから2年が経った。 2人は大学生になっていた。 清い関係のまま。 今まで、幾度かチャンスはあった。 しかしそのたびに必ず『何か』に邪魔をされ、2人はまだ一線を越えられずにいた。 今日の町谷の言葉、『俺ん家来るか?』は、そんな意味を込めた誘い文句。 (今日は、今日こそは・・・・・) 2人の胸には、同じ想いがあった―――。 大学に入ってから、町谷は1人暮らしをしていた。 そう、何かと都合の良い(?)1人暮らしである。 しかも、防音完璧(!?)のマンションであった。 町谷宅に到着した2人は、とりあえず一息つこうと、リビングのイスに向かい合わ せに腰掛けた。 町谷が2人分のオレンジジュースを入れ、2人静かに飲み始める。 ―――静かだった。本当に。 掛け時計のカチコチという秒針音がはっきりと聞こえるくらいに、部屋は静まり返 っていた。 2人の人間がそこにいるというのに。 そしてただ静かなだけではなく、そこには妙な緊張感が生まれていた。 これから起こるであろうことを期待して・・・? 沙倉は少し震えていた。 しかしそれは、不安からではなかった。 もちろん不安がないと言えば嘘になる。 だが、それ以上に沙倉は嬉しかったのだ。やっと町谷と1つになれることが。 今までチャンスはあったのに、いつも『何か』に阻まれ上手くいかなかった。 (でも今日はきっと大丈夫vv) 沙倉は内心、そっと微笑むのだった・・・・・。 町谷もまた、少し震えていた。 ただこちらは、緊張のためである。 「初めて」ってすごく痛いって聞くし・・・沙倉に相当な負担をかけるんじゃないだろう か? それ以前に男相手は初めてという自分自身にもまた自信はなく・・・自分のせいで 沙倉に苦しい思いをさせたとしたら、一体どうすれば・・・・・? 町谷の不安は募っていくばかり。 この2年というもの、町谷は本やインターネットを通じて、調べられるだけのことを 調べてきた。もちろん男同士の『なにそれ』について。 だから本当はもっと自信を持ってもいいはずだ。いいはずなのだが―――それで も不安なのは、やはり沙倉への愛の深さゆえであった・・・・・。 『時』はきた―――。 2人は寝室に移動し、薄暗い部屋の中、無言で見つめ合っていた。 そして――― 町谷が沙倉を抱きしめようとした瞬間、窓の外がチカリと光った。 沙倉がそれに合わせてビクリと肩を震わせる。 「・・・沙倉?」 町谷が心配そうに呼びかけたとき、今度はドーンッという轟音があたりに響き渡っ た。 どうやら近くの建物に雷が落ちたらしい。 その音に、「ヒャッ」という悲鳴が重なった。 かと思ったら、沙倉がそのまま町谷に抱き付いてくる。 いや、もはやしがみ付くと言った方が正しいだろう。 再び聞こえる轟音。 チカチカと連続する光。 沙倉の悲鳴。 もはや甘い空気はどこかに吹き飛んでしまっていた。 町谷は苦笑して、自分に取り縋る沙倉を優しく抱きしめ、頭を撫でてやる。 雷を怖がる子供みたいな沙倉が、よりいっそう愛しく思える。 今日入った『邪魔』は、いつもよりちょっとだけ許せそうな気がする町谷であった。 2人の春は、まだ遠い―――――。 【END】 「100のお題」オリジ第2弾でした・・・。ちなみに第1弾はお題No.008「パチンコ」 ですので、出来ればそちらを先にお読み下さい(って、ここで言っても遅い/爆)。し っかしまたなんか気の毒なオチ方をしてしまったような気がします・・・(遠い目)。2 年間も清い関係かぁとか、今時雷の怖い大学生(♂)がいるのか?とか・・・相変わ らずツッコミどころ満載でお送りしました(←オイ)。 しかし1番のツッコミどころは、町 谷の家ってマンションに1人暮らしできるほど金持ちだったんだ!?というところでし ょうか・・・(っつーか、私も今回初めて知りました←コラコラ)。果たして町谷&沙倉 が一線を越えられる日は来るのか!?ということで、次回にご期待下さい(←嘘で す)。 |