008.パチンコ
サブタイトル 『恋と賭け事』 by紅月しなの
ノンジャンル : オリジナル
「なあ、さくらー。」 「うん、何?」 「デートしようぜ!」 「えっ?べ、別にいいけど・・・。」 「ヘヘッ、やりー。じゃあどこ行きたい?」 「俺の行きたいとこでいいの?」 「ああ、もちろん。」 「えっとー、じゃあ・・・じゃあ・・・・俺、パチンコに行きたい。」 「・・・へ?」 町谷の間抜けな声が、驚きの深さを物語っていた・・・。 町谷(まちや)と沙倉(さくら)は、恋人同士だ。 とは言ってもまだ日は浅く、両思いになってからようやく半年ほどが経過したところ である。 町谷は明るくスポーツ万能な人気者。 沙倉は美しく繊細な容姿を持つ(注.男である)。 ずっと相棒として傍にいた2人だが・・・半年前、進展があった。 お互いがお互いを欲し、『相棒』という名に、晴れて『恋人』という名前が加わった のだ。 そのときに交わしたキスは、2人が永遠に共にあるという誓いであり、愛の証でも あった。 のだが―――その後2人は、一度もキスはおろか手を握ることさえしていない。初 々しすぎる関係が続いているのだ。 あっ、それから1つ補足しておくと、この2人―町谷と沙倉―は、高校2年生という 学生の身分である。(注.パチンコは18才を過ぎてからです!) ―――というわけで(?)。 さくらのたっての希望により、2人のデートは『パチンコ』と決まった。 さくら曰く、「だって町谷がよく行ってるパチンコって、一体どんなものなのか、この 目で一度見てみたいんだもの・・・vv」だそうだ。 こんな可愛いことを言われてしまったら、町谷とて連れて行かないわけにはいくま い。 いや、それより問題は、17才という年齢で既にパチンコに『よく行っている』という 事実なのだが・・・今の2人にはそんなことを言っても無駄だろう。 とにもかくにも、2人のデートは、次の月曜日(創立記念日のため休日)とめでたく 決まったのであった・・・。 「町谷っ!」 「おっす。わりー、待ったか?」 「えっ?全然。だってまだ待ち合わせの10時まで時間があるじゃない。町谷が謝る ことないよ。」 「そうか・・・。」 見ると、町谷のデジタル時計は、9時55分の文字を写していた。 「じゃあ、行くか?」 「うん。」 パチンコ店に到着し、一歩中に足を踏み入れたさくらの第一声は、「うわぁー、賑 やかだねぇ。」というものだった。 確かに、パチンコ店の中は大音量だ。 一般人(パチンコ店に初めて足を踏み入れる者)は、だいたいがその煩さに耐え かねて、思わず回れ右をしたくなることだろう。 しかし、さくらは強者(つわもの)だった。 「で、どこに座ればいーの?」 しかもやる気満々である。 町谷は苦笑いしながら、「まずはやりたい機種を探さねーとな。」と言う。 「機種って・・・この台の種類のことだよね?」 「ああ。」 「うーんと、あっ、あれがいいな♪」 さくらが指差したのは、某U●Jの人気アトラクションでもある、某キャラクター『E ○』。 「ああ、確かにあれはさくら向きだな(可愛いし・・・)。」 「じゃっ、早く行こっ!!」 「ああ。」 何故か逆に引っ張られている町谷である。 E○の台がある列は、全体的に閑散としていた。 これなら初心者のさくらも打ちやすいだろう。 町谷はホッとして、隣りのさくらを見た。 ―――と。 さくらは既に台を1台1台吟味していた。 恐るべし!初心者。 そして、「俺、これにするね。」とさっさと台の前に座ってしまう・・・。 町谷は積極的なさくらを呆然と見つめながら、 (ほんとに連れて来て良かったのだろうか・・・?) そんな不安を覚えるのだった・・・。 「わーい、大漁大漁っ♪」 帰り道、さくらは浮かれていた。 その隣りでは、町谷がゲソッと疲れた表情をしている。 結局、町谷は隣りのさくらが気になって台に集中できず、結果としてボロ負け。 さくらは逆にビギナーズラックとでもいうべきか、大儲けしたのであった。 手に大事そうに抱えた袋の中身は、大量のお菓子類。 しかしそんなものは序の口で、さくらが換金したのは、相当な額であった。 「ねぇ、町谷。これでステーキでも食べて帰らない?」 「へいへい、どこへなりとお供しますよ?今日の俺は一文無しだからな・・・。」 パタパタと空っぽになった財布を振りながら、町谷は深い深いため息を吐くのだっ た。 さて、果たしてさくらの勝利は、ビギナーズラックにすぎなかったのか? それは―――後日明らかになる・・・のかもしれない。 【END】 ほんとはこのお題、ヒムアリで書く予定でした・・・(爆)。でも、アリっさんとひーさん のパチンコ姿を書くのに抵抗があり(色んな意味で/笑)、結果、オリジになってしま いました・・・。ところで、こんな話を書きましたが、実は紅月はパチンコをしたことが ありません。ほんとですヨ!ただ、うちの両親がくわしいので(苦笑)、それでこのお 題にチャレンジしてみました。ちなみにE○のパチンコ台は、本当にありました(笑) 注).この話はフィクションです(当たり前)。皆様、パチンコは18才を過ぎてからで す!町谷と沙倉の真似は絶対にしないで下さいね?(誰もしないって) |